13話:女子が揃えば大抵修羅場に発展しかねない
元々、俺の家には女子が二人いた。
妹とその友達だ。
これだけなら特に何の問題もない。なぜなら、家族と一人の女の子であるからだ。
さて、ここに起爆剤として俺の友人である女子を入れてみましょう。
なんと、あら不思議。ギスギスした雰囲気が生まれたよ。やったね。
……なにもやってねえよ。なんだ?この状況。人の家で人の胃をキリキリさせるような展開をしないでもらいたい。
「それで?ほぼ毎日のようにここに来てると?」
「ええ。頼まれてますので。それにめぐちゃんの友人としてきているので、特にそれ以上の他意はないのですけど」
「その割には育也の部屋に入り浸ってるって聞いてるんだけど〜」
「それは、めぐちゃんが自分の部屋だと落ち着かないからお兄ちゃんや部屋に行くというから……」
「あなたも行くのが満更ではないのでしょ?」
「それは認めましょう」
「認めおった⁉︎」
「先輩のことは嫌いじゃないですし、信用してるので」
「ふ〜ん。信用……ね」
「なんです?」
「べっつに〜」
美沙輝よ。お前も年上なんだからヘソ曲げてるような子供みたいな対応するんじゃない。ここで大人の対応を見せるのが年上であるお前の役割ではないのか。
なんで、こんなことになってるのかというと、香夜ちゃんが俺の部屋にいて、ちょっと引っ掛けて組んず解れつな状態になったところにタイミング悪く、というかあからさまに謀ったようなタイミングで美沙輝が来たのである。
とっさに体制を整えようがそんなことは御構い無しである。今、何をしていたのか。美沙輝がその目で見たことがすべてなのである。それから、俺を放置して二人でなんか始めてしまったのである。
ちなみに今は朝10時。恵は日曜なので呑気に寝ている。隣のお兄ちゃんの部屋が修羅場を迎えているのとも知らずに。
そして、俺は抜け出せない。無言の圧力をかけられてあるからだ。さながら、蛇に睨まれたカエルだな。大蛇とアマガエルぐらい力の差がありそうだけど。
「それで?その嫌いじゃない先輩と何をしようとしていたのかしらね?」
「先輩が机に足引っ掛けて私の方に倒れた結果ああなっただけです。別にそれ以外のことはないです。別に胸を触られたとか気にしてないです」
「思いっきり気にしてんじゃないの……少し関係が進んだようね?育也」
「だから……事故だと……」
「もっとはっきり言いなさい!そうしないとあんたがその気があったってことに……」
「……そりゃ……ね?」
無言で今日使うのであろうジャガイモを顔面に投げつけられた。痛いです。しかし、俺がよけたら避けたで、窓ガラスが割れます。器物破損しないでください。
それに、可愛い女子が俺の部屋にいてくれるのだから多少なりとも期待してもよろしいのではないのでしょうか?
「ダメに決まってるでしょ!」
「なんでダメなんです?美沙輝さんが困ることがあるんですか?」
「わ、私の目がある前でそんなことさせないわよ!」
「初心ですね。美沙輝さん」
「香夜ちゃんに言われたかないと思うけどな……」
この子もこの子であまり挑発しないでもらいたい。
「では聞きますけど、美沙輝さんは先輩のことが好きなんですか?」
「……特にこれといってそういう感情はないわね」
ホワッツ?予想外すぎるだろ。反応が冷静すぎやしませんか?我が部長よ。多少なりとも興味を持たれてるのではないかと勘ぐった俺はとても恥ずかしいです。
「私は好きですよ。どういう意味かは置いておいて」
本当にどういう意味で何でしょうね?扱いやすい手駒とか思ってませんか?後輩からそんな扱いを受ける先輩はなかなかいないだろう。
ただ、若干ながら香夜ちゃんの方が攻勢に出たようにも見える。
かといって、美沙輝の方も防御態勢に入る気はないようだけど。
だから、俺の部屋で静かに火花を散らすのやめてください。
そうだ。
「そ、そろそろ恵起こさないとな。ちょっと行ってくる!」
「おはや〜お兄ちゃん」
パジャマ姿でのこのこ俺の部屋に入ってきおった。なんというバッドタイミングで起きて俺の部屋に入って来るんだマイシスター。今日ばかりは可愛い可愛いと愛でてる暇はないぞ。
「さて?先輩は何がしたかったんですか?」
「何でもございません」
「……なんで、お兄ちゃんの部屋に香夜ちゃんと美沙輝さんがいるの?」
「なりゆき」
「その割には空気が重いよ……主にお兄ちゃんの周り」
妹よ。君にはオーラを感じるシックスセンスでもあるのか。合ってるけどそんなところを当てないでもらいたい。テストの問題だけ当ててればいいんだよ?
ほら、二人が俺を見てくるじゃないか。いやあ、女子に見られてるなんて嬉しい限りだね……とは、平和的には言えない。
とにかくここから逃げたい。
「秘技!みがわり!」
説明しよう!みがわりは俺がその時いた場所に誰かを置いて、俺は逃亡する技だ!某ゲームのようにぬいぐるみを前に置いて、自分は後ろからタコ殴りとか卑怯な技じゃないよ。
これは俺の正当なる選択だ。そもそも、この家に俺がいる必要はない。
そうだよ。恵のためにいるんだから、俺は必要ないな。
よし、元の家に行こう。誰かわからん場合は第3話『偵察』を読んでくれ。
「ちょっと先輩!」
香夜ちゃんに呼び止められたが、俺がこのままあそこに居てもどうしようもない。
俺の部屋が占領されてしまったかのような形だが、色々知られているらしいので今更隠すようなこともないだろう。
それに俺がいなければ、俺の部屋にわざわざいる必要もない。
我ながら、完璧だと思いつつも、女子から逃げ出した、という事実に少し情けなく思う自分がそこにいた。
「なにやってんだが、俺は」
携帯と財布のみ持ち歩くことにした。
もっと楽しくできるのかと思えば、一触即発の事態だ。
ほとぼりが冷めるまで少し出歩くか。俺は、携帯を取り出し電話をかける。
「もしもし?元。暇か?暇だよな?暇だと言え。今からお前の家に突撃する」
一方的に連絡し、一方的に電話を切った。折り返して電話が来ているが、断らせなどしない。
俺は、友人の家を目指す。