用意された舞台
前回:天文部と文化祭に向けての交渉と香夜ちゃんに火がついたようです
今回:体育祭当日です。みんなの結果は……?
「だりぃ……あづい……なんで10月も終盤でこんな暑いんだよ。運動日和だから体育祭行うんだろ?こんな状況下で行ったら熱中症患者出るぞ」
「いや、愚痴ってないで応援しろよ」
「うるせぇ……昨日ようやくテスト終わって、なんで翌日に体育祭なんだ?日程の組み方おかしいだろ」
全員を満身創痍にさせて体育祭行うとか、先方はいいかもしれんがこちらはそんな気分じゃねえよ。深夜テンションで乗り切るほど体が元気でありまってるわけじゃないんだよ。
お偉いさん方はきちんとテントの下に椅子を並べて座ってるが、学生の俺たちは炎天下にさらされている。まあ、夏場より幾分かマシになってはいるがもう秋も深まるというこの時期に対しては暑いということを言っておこう。
「もう俺はここで応援なんかしてられない。一年のところに行ってくる」
「また宮咲に怒られんぞ」
「…………」
「そこで大人しく座るあたりはまだ可愛げがあるよな」
後々に後悔することになるのだけはゴメンだからな。そういやあの子たちは結局なんの競技に出るのかしら。ちゃんと聞いてなかったや。
今何やってるのかって?
多分3年生の学年競技。次が1年の学年競技。だから俺たちはまだ待機中なのだ。
3年と言っても天王洲先輩と天文部部員のそのしもべたちしか知らないし、どう応援しろと?
「でも、学年競技たって、全員出場するわけじゃないしなあ」
「お前は出るだろう」
「多分、誰かによって謀略されたことだと思う」
「お前の普段の行いじゃね?」
「いいとは言わんけど、言うほど悪いことをしていた記憶もないぞ。こと2学期に関してはな」
「一学期の間はやってたのか……」
「一年にちょっかいかけてたら美沙輝に縛られてた。最近はやられてないから悪いことはしてないという証明になる」
「一々縛るのが面倒になったか、お前に構ってられないのどっちがじゃねえのか?」
このギャルゲーマーめ。女子の行動原理を地味に推理してきやがる。現実はゲームと違ってそんなに甘くないことを叩き込んでやりたい。
まあ、こいつに女っ気があったかなんて聞かれると皆無だな、と答えるしかないので叩き込んだところで無駄なことだと俺の中で自己完結した。
「なんで妙に愉悦に浸ってんだ貴様」
「お前に彼女なんて出来んのかなとか考えたら無理だろうなって結論に至ったから少しほくそ笑んでた」
「性格悪い上に失礼すぎるだろお前!チクショー!文化祭には作ってやるわ!」
「やめとけやめとけ。お互い一時のその場の雰囲気に流されたとかで一週間……いや、3日ぐらいで別れる羽目になんぞ」
「リアルなこと言わないで!」
「うるさいそこ!大人しく座ってることもできんのか!」
「「はい……」」
俺たちは賑やかしにもならないので黙ってろとのお達しです。応援するならまだしも俺たちは競技にも関係ないことをただ喋ってるだけだからな。そら怒られるわ。
「3年終わったみたいだな」
『2年生の学年競技に出る選手は入場門前に集合お願いします』
アナウンスもかかったところで移動を始める。
俺が出るリレーはいつだったか?
プログラムちゃんと見てないからイマイチ把握しきれてない。とりあえず、この学年競技終わってからは確か女子のなんかの競技だった気がする。
適当に消化しよう。総合優勝など俺自身の評価とはならないし。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あそこのクラスどこだ……?」
「ほぼ半周ぐらい差つけてたな……」
口々に感嘆の声が上がってる。
二、三年ともなれば足が速い人、運動ができる人のピックアップは出来るし、名前も知られてることはある。
ただ、このような反応を示すということは、対象は知らない、つまり一年ということになる。
リレーには男女ともに予選と決勝がある。予選で一位になったところがさらにそのタイムにより決勝に残れるか決まるのだ。
流石に俺も本気出さないとあれか。部活をしてないと言っても、最近は香夜ちゃんと走ってたんだ。運動不足のつもりはない。
あ?俺の話なんてどうでもいい?そうですね。
「1人金髪だったな」
「入学した時から有名な子だろ。親が有名な会社の社長って」
アリサちゃんは今こそ普通に俺たちの中で溶け込んでいるが、あまり見たことない奴らからしたら金髪の外国人少女だ。まあ、目立つ目立つ。しかもやたらと速かったからな。トップバッターですげえ差つけてたし。
「速いといえば、最後走ってたあの小さい子の方が凄かったろ」
「元々一位だったのにあそこでさらに引き離したよな」
「可愛い子だったな」
「無垢そうだし告ったオッケーしてくれるかな?」
あん?
「やめとけやめとけ。可愛い子には何かしらの情報が付いて回るもんだ」
「情報?」
「佐原って奴いるだろ?」
「生徒会の子か?」
「その子の兄貴だ。何やら生徒会長とも繋がりがあるらしくて、さっきの子が所属してる部活の先輩で付き合ってるとの噂だ」
「生徒会長のくだりはいるのか?」
「前回に引き続きあの人だぞ。繋がりがあるってことはそこに手を出したら俺たちもどうなるかわかったもんじゃねえ。あの生徒会長は医者の娘らしいからな。下手したら人体解剖されるぞ」
あの人の想像図がとんでもないことになってるな。つーか、んな猟奇的なことしたらご厄介になるわ。何をしでかすか分からないという点では合ってるのかもしれんが。
ただ、どこの界隈にも情報通というのはいるようた。ましてや、可愛い女子がいれば目をつけるような男子はいくらでもいる。
早い段階で俺たちが一緒にいたのは良かったのかもな。
ふと目の前を見ると香夜ちゃんが手を振っていた。俺を見つけてくれたんだろうか。俺も手を振り返しておく。
ちなみにさっきから喋ってた連中は次の男子1000メートルリレーの出場者。俺より前に座ってたやつだ。
「い、今の俺に振ってくれたんじゃね?」
「な、訳あるか」
「認識ないだろうが」
まあ、こうやって勘違いしてるようなバカが沢山いるのだが。その中で話題になってる子が自分に向けて手を振ってくれたということは少し優越感がある。
癒されたことだし、俺も頑張るか。香夜ちゃんより遅いけどな。
「元。トップバッターこけんじゃねえぞ」
「スタートダッシュが下手くそなやつがリードオフマン名乗れるかよ」
クラスの色鉢巻を縛り付けて、グラウンドへ入場する。まあ、いっぺんに入るが、グループ訳されてるからすぐに走るわけでもないけど。
しかし、これのギャンブル性の高いところは一位を取ったとしても必ずしも決勝に残れることじゃないんだよなあ。俺たちの中で一番速いのも陸上部のエースだ。エースが6秒台ってまたあれだな。5秒台出せよ。そう言ったら無茶な注文するなと返されたが。
まあ、俺自身も5秒台なんて出せそうもないから、言いっこなしなんだが。
俺たちは第2グループだ。男子ともなれば女子より速いのですぐ出番は回ってくる。
しかし、アンカーねえ。俺がこけるフラグが立ってるんじゃないの?そういうフラグは積極的に折っていきますわよ。
ただ、俺も他のクラスで知ってるやつって山岸とテニス部の一部だけだしなあ。特に見所があるかと言われればそんなもんはない。特に思い入れもなかったからテニス部からさっさと抜けられたわけだしな。
俺が今まで本気で打ち込んだことってなんだろうな。
それが先日香夜ちゃんが言った、存在理由を作り出せているんだろうか。
恵のために存在していると言われればそこまでかもしれないが、恵の面倒を見終わったら俺の存在意義がそこでなくなってしまう。
夢を見つける必要があるな。一時期の美沙輝じゃあるまいけど。
「佐原。行くぞ。ちゃんと走れよな」
「お前らがちゃんと走ってくれればな」
「口が減らんな。半分ぐらいにしてもバチは当たらんと思うぞ。お前は特にいらんことを言う傾向がありそうだ」
「俺から減らず口を取ったら取り柄がなくなるぞ」
「お前はそれでいいのか」
「なんだったら俺の取り柄をお前が一つでもあげてくれ」
「気が向いたらな」
すぐにそう発言するあたりはすぐには思い当たらないということの裏返しだろう。
取り立ててお互いを知ってから時間が経ってるわけでもないから仕方ない話だ。
俺の交友関係の薄さが垣間見れる。
いいんだけどな。その程度で。深く関わるとろくなことにならない。
それはいつだって、いつの時代だって、どんな時だって一緒だ。
それでも、俺は……
佐原せんぱーい!
どこから色んな声に混じりながらも、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
俺のことをそう呼んでくれて仲が良い子は1人だけである。
なんとかその声の先の方へ視線を送った。
アリサちゃんが香夜ちゃんを引っ張ってきて、手を振っている。
「佐原せんぱーい!頑張ってくださーい!」
「お前は良いな。応援してくれる可愛い後輩がいて」
「人徳のなせる業だな」
「お前に人徳とか言われると疑問しか抱かざるをえないんだが」
「なんで俺の周りは俺に対して評価があんまりなんだ⁉︎」
「過去の自分を振り返れよ……。と、そろそろだな。始まるぞ」
「おー、頑張ってくれや」
「そこのトップバッターに言ってくれ」
もう声は届かないだろうから、その姿を見守るばかりだ。毎日夜遅くまで部活してるような奴らとはそりゃかけ離れた存在であるかもしれない。
落ちた、と言われればそうかもしれない。
でも、今は今で楽しいのだ。それは否定されたくない。まあ、何が自分を作っているか分からないんだから、否定されようが肯定されようがそれは靄を掴んでるようなものかもしれないけども。
それでも、少しは貢献しようと微力ながらも準備してきたのだ。
かつては陸上で期待された子に手伝ってもらったんだ。少しは結果として出してやらなければ申し訳も立たない。
3番目、結城にバトンが渡される。見た感じ団子で二位か。あいつなら抜けそうだな。
そう思ってるうちに前を抜いて独走態勢に入る。だけど200程度ではそこまで差は出来ないようだ。4番目にバトンが渡る。決して遅いわけではないし、多少差が詰められようが逃げ切れるだろう。ということは問題は俺だな。
少しばかり手首と足首を軽くならしておく。
せんぱい!頑張れ!
声が終盤になって大きくなっていく中、その声だけは俺の耳に確かに届いた。
まったく。便利な耳だな。好きな子の声ならどれだけ紛れていても聞き取れる。あとで礼を言っとくか。
バトンはアンカーの俺に一位のまま渡された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お疲れ様です。先輩」
「私もいますよ!」
「二人もお疲れさん。女子で決勝でもトップとはな」
「先輩も予選はトップだったじゃないですか」
「タイムの関係上決勝に出れなかったけどな」
結局のところはこんなオチである。もうすでに体育祭はすべての行程を終了しており、各自解散となっていた。
まあ、仲のいい奴は打ち上げとかやってんだろうけど、あいにくそんな気にはなれないので俺は家庭科準備室にてくつろいでいた。優勝したところはどこだったっけ?とか言ってる有様だからな。
香夜ちゃん達のクラスはリレーと100メートル走こそはぶっちぎりの成績だったけども、あくまで入る点数は変わらんからな。他の競技で大したことなかったので彼女たちのクラスも優勝はしませんでした。
「でも総合三位ですよ!三位!一年でこれは立派なことなのです!」
「あーうん。頑張ったねー」
「もう少し労ってもらってもいいんじゃないですか?」
「珍しく全力で運動したから今は虚脱状態なんだよ」
「いつでも虚脱状態じゃないですか」
「超虚脱状態なんだよ」
「超とかスーパーとかつければいいってもんでもありません。美沙輝先輩はどうしたんですか?」
「あいつはクラス委員長だからまだやることが残ってるらしくてな。後で来るってよ」
「だったら手伝えばよかったじゃないですか」
「私手伝ってきますー」
「待ちなさいやお嬢さん。どこにいるかもわからんのにどこに何を手伝いに行くと言うんだ」
「それもそうですね。じゃあ、労いの意を込めてお菓子を振舞いましょう」
「「それはやめて(ください)」」
「うわーん!2人して酷いですー!」
「はあ……じゃあ、俺が作ってやっから。2人は座ってな。美沙輝が来たら打ち上げでもするか」
「じゃあ役立たずの私はジュースでも買ってくるのです……香夜ちゃん待っててね」
「私も行くからそんなしょげないで。じゃあ、先輩、ちょっと行ってきます」
「いってらっしゃい」
確か冷蔵庫に適当な材料がまだストックされていたはずだ。運動した後の適度な糖分摂取は体にもいい。どこかで聞いた。
未だアリサちゃんの料理の腕は向上しない。もうなんかが取り憑いてんじゃないだろうか。もしくは合宿の時に何か拾ってきたんじゃないでしょうか。
それでもいつかは上手くなると信じて俺たちは今日も彼女に料理を教えていくことにする。今日は俺が振る舞うだけだけど。
余った分は恵にプレゼントしてやるか。
「あ〜つかれた〜。育也。水分ちょうだい」
「ねえよ、この場に。自分で持ってきてるだろうがいつも」
「飲みきったのよ。この暑い中運動させられればなくなるもんよ」
普段とはまったく違ってだらけきっている美沙輝さん。着替えるのが面倒だったのか体操着のままである。
「お前着替えなくていいのか?」
「まあ、今日はこのまま帰っても文句言われないしいいわよ。あ、なに?目のやりどころに困る?」
「うちの体操服にそんな色気があるような構造がどこにあった?」
「ないわね」
「汗で下着が透けてるとかならまだしもな」
「えっ?うそ⁉︎透けてる⁉︎」
「ないから。しかもお前上にジャージ着ててどこに動揺する要素がある」
「焦ったじゃない」
「なら着替えりゃよかったんじゃないですかね」
「あんたはさっさと帰っちゃうし」
「基本的に人がいるところに居たくないんだよ」
「あの子たちは?」
「ジュース買いに行った。そして、俺はこれを作った」
「あんたって作るのは早いのよね」
「ボサッとしてたら時間は過ぎてくんだぞ。限られた時間を有効に使ってると言ってくれ」
「で、あの子たちはいつ頃出てったの?」
「かれこれ30分ぐらい経つか?」
「ここから一番近いとこって何分ぐらいだったかしら?」
「あるいて10分程度。一番下の玄関口の自販機が一番近かったんじゃねえかな」
「ちょっと遅いわね。あの子たち今日目立ってたし……」
「はあ……じゃあ、ちょっと行くか」
「手荒なことはしないでちょうだいよ?」
「大方勧誘だろ。足の速さだけとっても十分戦力となりうるからな」
バスケとかバレーとかは2人とも背が低いので使い物にならなさそうだけど。
顧問がいないのに勝手に調理してていいのかという話はあるかもしれんが、今回は火は使わないので顧問の許可など知ったことか。
そもそも、顧問も今日やってるとは思わんだろう。料理途中のものは冷蔵庫にしまって、鍵を閉めて出てきた。
「さて、まずは2人の経路を推理しないとな」
「香夜ちゃんがいるならあの子のことだし最短ルートで行こうとすると思うわよ」
「行く途中か帰る途中で捕まったってことだな」
「帰る途中ならジュース持ってるだろうし逆にここまで付いてくるんじゃない?」
「……いや、あえて発想を変えてみよう」
「どうやって?」
「未だ逃げ回ってるということだ」
「そういや、いつぞや2人で追いかけっこしてたわね」
「まあ、助けを求めるなら俺たちか、天王洲先輩だろうな。俺たちはここにいるし、じゃあ、生徒会室行くか」
「なんかとんでも推理になってるわね」
「部員引き抜きを天王洲先輩が許すはずないからな。あとあの人に口で勝てるやつなんてうちの学校にいないと思う」
「まあ、それは分かるけど……とりあえず行きましょうか」
美沙輝を連れ立って生徒会室へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「失礼しまーす」
「ノックもなしにそのまま入るのはあんたぐらいのもんよ、育也」
「傍若無人とは俺の二つ名だからな」
「ほう?それを私と張り合う気かい?少年」
「やっぱり返上します」
この人とは張り合えない。
「すいません、先輩。連絡しようと思ったんですが、2人とも携帯をそちらに忘れてて」
「大方、体育祭見た運動部が勧誘にでも来たんだろ」
「はい……その通りです」
「生徒会長さんに匿っててもらいました」
「私としては気軽にもっと遊びに来るような感覚で来てもらっても構わないんだけどね」
「業務が滞るんでほどほどにしてください会長。さっきだってそれで中断してたでしょう」
「君たちが1.5倍頑張ってくれたまえ」
「会長も働いてください!」
「やれやれ。ということだ。引き取り主が来たから君たちに渡しておくよ。しばらくは一緒に行動したほうがいいかもしれんな」
「そうですね」
「じゃ、2人とも行くわよ」
「もう外にいないですよね?」
「まあ、俺たちが来た段階ではいなかったし、そもそも生徒会室を前に陣取ろうとかいうバカはいないだろう」
「この学校の実質権限を生徒会が握ってるかのような物言いはどうなんですか……?」
「じゃあ仕方ないので少し餌を与えてみるか」
「餌ですか?」
「俺たちが後ろから歩いてるから2人はこの経路で行ってくれ」
「はあ……」
散々追い回されたあとだったのか、少しため息がちだったが、承諾をして歩き出した。
俺たちは少し離れて歩くだけ。まあ、大半は俺の名前こそ知れど、俺の容姿まで知ってるものなどはそうそういない。
ただ、俺だけであの2人の後ろを歩いていると別の意味で捕まりかねないので美沙輝と歩いている。こうすれば、まだ自然だろう。たまたま2人の後ろを歩いている男女2人だ。
ただ、まあそれでもどこから嗅ぎつけるのか魚が入れ食い状態である。ただね?君たちはもう少し注意力を持つべきである。
俺が提示した経路は職員室を通るところだ。
2人が万が一捕まっても俺たちが取り押さえるし、逃げれば職員室に駆け込めばいい。
これで3名ほど捕まえました。
三文芝居させて。
これで、強引な部員勧誘がなくなればいいけどな。まあ、大抵勧誘するところなんて男女で部活してるところなんだが。強引にしようとするのはそこの男子である。
一先ずはこれでいいだろう。
ようやく解放され、俺たちは打ち上げを始めることにした。
「はあ。正直体育祭より疲れたわ」
「後輩たちがこれから追い回されるかもしれんことを未然に防いだんだぞ。むしろ、こっちに労力を割くべきだ」
「はいはい。あんたの価値観はいいわよ」
「あ、美沙輝先輩。これどうぞ」
「ありがと香夜ちゃん。本当、このバカと違って気が効くわね」
「そんなお疲れのあなたに素敵なプレゼント」
「金券10万とか?」
「そんな夢もないものをプレゼントするやつがあるか」
なんだ?俺も言われたけど守銭奴ばかりか?
「菓子作ったって言ったろ。ヨーグルトプリンだ。数を作ったからそれで腹を満たせ」
「いや、まあ火を使えないから仕方ないか……うん、ありがと」
「ジャムもどうぞ」
「いつの間に」
「なんか冷蔵後にあった」
「私が入れておきました」
「……自分で作ったものとか言わないわよね?」
「酷いです〜!みんなして私をいじめるですか⁉︎市販のものです!」
それでも市販のものなのね。まあ、ジャムを作るのは難しそうだしね。もっと簡単なものから作れるようになろうね。
ささやかながも俺たちは打ち上げパーティーをした。
1人足りない?
まあ、あいつはクラスの方でやってるんだろう。そういうことにしておいて。
また一つ行事をこうして消化していくのだった。