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遅れたバースデー(2)

前話:育也のために女子陣が特に目的もない企画をしました。


今回:前回の続きです

 女子4人は電車の中で楽しく談笑してる中、俺は手すりにつかまってその座席にもたれかかっていた。日曜の中途半端な時間だから人も少ないのだが、俺だけ離れてるのも変な話なので、そんな中途半端な位置にいる。

 時折話しかけられては、適当に返答して、それでもみんなは楽しそうに笑っている。

 こうしてると、俺も女子だったらと少し思うことがある。会話の中に自然に入り込めないからな。

 逆に俺が男でよかったのもあるけど。俺だけハーレム形成してるからな。妹いるけど。妹は除外します。

 しかし、往復で2000円はさすがにかからなかった。要するにそこまで遠出でもないわけだ。まあ、県内だしな。乗り換えするならともかく、電車一本だけならそこまでだろう。

 ようやく目的の駅へとたどり着いて、電車から降り立つ。


「うっ。人が……人が多いです。人酔いします……」


「バルス!」


「それラ○ュタが壊れるだけだから。別に人を蹴散らすとかそんな効果ないから」


 律儀にこんなボケにも突っ込んでくれる優しい美沙輝さん。

 人が多いのは県内でも主要都市であるからだろう。電車にこそあまり人はいなかったが、降り立てば話は別。駅からすでに人が混雑している。


「ほら、みんなはぐれないように固まっていくわよ。特に恵ちゃん」


「わ、私ですか⁉︎」


「お前方向音痴だろ。お前が一度迷子になれば俺たちは迷子センターを使う羽目になる」


「ぐぬぬ……。一概に否定できないのが悔しい……」


 方向音痴って直るものだろうか。方向音痴だけは死ぬまで直らない気がする。ただ、こいつの場合直感で動いた結果当たってる時もあるので、一概にただの方向音痴とも言えない。


「で、どこに行くんだ?」


「なんとなく来てみたかっただけよ」


「目的もなく来るんじゃねえよ!」


「ま、まあまあ。そうだ、映画でも見に行きませんか?この辺りでしかやってなさそうなの」


「知らねえよ、映画にそこまで興味あるわけでもねえし……」


「ここから徒歩10分ぐらいの位置に大きめの映画館があるみたいですね。ゲームセンターも一緒にあるみたいです。ここでしかやってなさそうなのは……アニメ映画でしょうかね。あんまり見たことないタイトルばっかりです」


 スマホで調べるや否やすぐに発見した様子。女の子ってそういうのはデートとかで行きたいんじゃないの?普通はショッピングとかじゃね?デカイところ都市なんだから、物珍しいものもたくさんあるだろうに。まあ、俺がとやかく言うつもりはない。言ったところで俺のメリットには一切ならなさそうだし。


「でも今やってるってことは新作なんだろ。アニメ好きのやつなら見に来るんじゃないのか?」


「私見たい!」


 普通はアニメ映画っていうと声を大にして言うのは躊躇いそうなものだが、うちの妹は違います。たぶん、あまり興味とかもないだろうけど、適当に言ってます。でも、こいつが言うなら別にいいか、的な雰囲気に出来るのはすごいことだと思う。


「あんたは18禁の美少女ゲームやってるんだからこういうタイプの映画でも抵抗ないでしょ」


「むしろエロ要素がない分安心感があるよな」


「誰に同意を求めてるんだか……」


「でも、アニメ映画ってテレビでやってたものの続きだったりすることありませんか?」


「あ、オリジナルアニメーションって書いてある。劇場公開が初めてなら予備知識なくても大丈夫じゃないかな?」


 別に誰1人アニメに抵抗がある様子でもなく、とりあえずはその映画を見に行こうということになった。


「それより香夜ちゃん、微妙に詳しくないか?」


「ポ○モン然り、コ○ン然り、ドラ○もん然り、毎年やってるものはあるでしょう」


 多分、あれは原作にないオリジナルエピソードだから。いや、まあ映画でやるものなんて全部そうだと思うけど。あまり映画に詳しくない民です。そもそも原作があってないようなものも混じってるけど。


「ただ、私は少女マンガよりは少年マンガの方が好きなんです。ということは嗜好的には男の人よりとも言えます」


 暴論だと思うけど、それについては言わないことにする。


「ひたすら可愛い女の子が出てくるだけのものも好きです」


 この子の趣味嗜好は偏ってると思うんだ。だったら、周りの女の子から好かれてるのも本望かもしれない。百合展開はお兄ちゃん的にもウェルカムです。あ、レズ展開はやめといてください。そこまで濃厚なのは求めてないです。なんの話ししてんだ?俺。香夜ちゃんの嗜好は大多数の男よりさらに特殊な例に分類されるだろうけど、それについては触れないでおこう。


「まあ、最近のオリジナルアニメーションってそういうのが多いか。可愛い女の子で釣るような」


「その言い方は語弊しか生まないような……。ちゃんと脚本家だって演出家だって、監督だって、その他諸々の人も頑張ってやってるんですから、面白くなかったかどうかは見てから判断しましょうよ」


「最近は特典商法と言って週ごとに特典が変わってそれで来場回数を増やすというギリギリなことを……」


「先輩、逆に詳しくないですか?なんなんですか。映画に対する批判をしたいんですか」


「映画の楽しみって見る前に買うポップコーンだよな」


「人それぞれだと思いますけど……」


 適当に駄弁りながらも着実に映画館の方へと向かっていた。

 先導してるのは美沙輝とアリサちゃん。

 真ん中に恵を置いて後ろから俺と香夜ちゃんで挟んでいる。

 こうでもしないと勝手にどっか行ってそうで怖いからな。生徒会にも入ったのになんという体たらくだろうか。俺たちが過保護すぎるのかもしれないけど。

 しかし、毎回この5人で行こうとするとこの並びになってしまうのはなんだろうか。前2人は姉妹のように仲が良いし、恵は前に先導する人と後ろにどこかへ行かないか見てる人がいないとアレだし、俺と香夜ちゃんは言わずもがなだからな。

 そして、なぜか分からないが女子はやたらと歩くのが遅い。香夜ちゃんは例外で逆に早いのだが。小さいから足を早く動かさないと遅れるからなかな。もしくは、陸上をやってた名残で競歩でもしてるのだろうか。

 まあ、香夜ちゃんがどんなスピードで歩こうが構わないのだけど。ただ俺と香夜ちゃんでは30cmぐらい背の違いがあるので、当然ながらに俺に合わせようとしてるんだろうな。可愛い。じゃあ俺が遅くしろという話だな。でも、したらしたで香夜ちゃんが怒るので俺は普段通りのペースというわけだ。前が詰まってるから本当に本来のペースかと言われると疑問を抱かざるをえないけどな。ただ香夜ちゃんは普通の人よりは忙しなく足を動かしてるわけだ。疲れなてないように見えるのはきっと陸上部で鍛えたからなんだろうな。恵も見習ってください。誰も陸上部に入れとは言わんけど。

 10分ぐらいということもあり、映画館へはさして時間もかかってないように感じるほど、あっという間に到着した。


「あとは上映時間か……」


「うわ、結構埋まってるわね。結構先のやつしかないわよ」


 残ってる三つの上映時間のうち先の二つはすでに満席となっていた。


「5人で座れるかしら……取りあえず席取ってくるわ。お金は後でちょうだい」


 まあ、5人がぞろぞろ並んで行くのも邪魔だしな。美沙輝に任せるか。なぜかアリサちゃんも付いて行ったけど。本当に美沙輝のこと好きだなあの子。


「パンフでも買うか?」


「ネタバレになりませんか?そういうのは見た後に買ったほうがいいと思います」


「世の中にはネタバレをすることが生き甲斐の人種がいてな……」


「先輩のことですか?」


「俺がいつネタバレをした⁉︎」


「週刊マンガを先にコンビニで立ち読みして、先輩記憶力いいですから、適当にオチだけ言いふらしてるんでしょう」


「偏見も甚だしいな⁉︎」


「お兄ちゃんうるさいよ。映画館なんだから静かにしないと」


「ここは映画館であるがシアター内ではないからな?上映中はさすがに静かにしろよ?」


「誰に言ってるんですかね」


「暗いところでキャッキャ騒ぎそうなそこのキッズ」


「私を指差さないでよ!誰がキッズなの!」


 子供だろう。あながち間違いでもない。言うなれば全員キッズだけど。


「育也〜。18時上映のやつ取れた」


「大体2時間ぐらいの映画なのか?まあ、それはいいけど。ああ、金、先に渡しとくよ」


「あんたはいいわ。私がおごってあげる。その代わり恵ちゃんの分」


「結局俺から取るんじゃねえか……恵は財布を携帯しろ」


「私のお小遣いは自分で管理できるわけないだろ、とか言われて全て貯蓄に回されてるんだよ……。どうやって財布を携帯しろというのかな」


「うん、俺が悪かった。お前も高校生なんだしお金の使い方ぐらい自分で管理できるよな。これからは俺がお小遣いを月に一回やろう」


「本当⁉︎」


「月千円だな」


「中学生ですか。今時の中学生でももう少しもらいますよ。花の女子高生が月千円で生活できると思ってるんですか先輩は」


「むしろこいつ自身、自分で使える金がなくても生活してきたんだけどな」


「それは先輩の庇護の下でしょう。これからは先輩の目から離れて活動することも多いと思います」


「……そういや、何度かアリサちゃんの家に俺がいない時に行ってたよな。移動費とかどうしてたんだ?」


「うちのものを呼んだので気にしないでください。特に電車とか使ったわけでもないので」


 それはそれで気を使うんだが。あまり使わないとか言ってたくせに私用でガンガン使ってるじゃねえかお嬢さま。


「少し時間があるな。どうする?」


「下にゲームセンターあったじゃない。少しは時間を潰せると思うわ」


「何度も言うようだが、俺にそんなに持ち合わせはないぞ」


「貯金から下ろしなさい。まさかバイトしててほとんど私たちといるのに使ってありませんとか言わないわよね?」


 本当に今日俺が主役なの?俺の貯蓄はそのためにあるんじゃないんですが。

 いや、まあ自分磨きとかもあまり……どころかほとんどした試しもないので金が余ってるというのは確かにその通りなんだが。それよかは香夜ちゃんのために使おうと思ってあまり使わないでいるのだが。

 ……まあ、使ったところで5千円ぐらいだろう。バイトしてると言っても大して入っていない俺にとっては結構痛い出費だったりするが2日あれば稼げる値段でもある。渋ることもないか。

 しかし、アリサちゃんはともかく他はそんなに金があるのか?いや、恵は親からの無限財源があるけどな。俺には生活費用しかよこさないくせに。おかげでやりくり上手になりました。

 俺の金銭事情はともかく、まあ、香夜ちゃんは俺以上にバイトしてるから貯蓄はあると思うが、美沙輝はどこに財源があるんだ。前はM資金とかわけのわからんこと言ってたけど。

 人のお財布事情を気にすることはないか。女子というのは得てして親が甘やかしてくるのだ。うちの妹然りな。

 せっかく俺が主役なのに俺が楽しまないとそれは損だろう。それに金が必要だというのは世界は理不尽だと言いたい気分だが……。


「ほら、先輩。早くしないとみんなから遅れちゃいますよ」


 せっついてくる後輩の顔が少し緩んで楽しそうにも見えて少しの散財ぐらい誰にもバチは当たらないだろうと思って、俺は映画の上映までの時間を潰すことにした。

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