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遅れたバースデー

前回:何事もなく部に昇格した料理研究部。部に上がった中で役割を決める中で育也は自分の誕生日プレゼントをもらってなかったことに気づいた。女子陣が気を利かせて何か企画するというが、何をしようとしているのやら。


今回:企画日当日。妹の恵と共に集合場所へと訪れた育也だが、企画した女子陣はどうやらほぼ無計画な様子。どうなるのやら……

「お兄ちゃん、そわそわしてるとカッコつかないよ」


「いいだろそわそわしたって。一応、俺が主役なんだぞ」


「私はあげたじゃん。合宿終わってから」


 一応ね。妹はこんなお兄ちゃんでも誕生日を覚えててくれていたのでプレゼントをもらいました。それなのに浅ましいって?いいだろ、美少女からプレゼント貰えるなんてもうこれからないかもだぞ。チャンスがあるうちに貰っておくのだ。


「お兄ちゃんホワイトデー大変そうだね〜」


「むしろバレンタインをあげる側になってそうで怖い」


「でも、そういう習慣が最近出来つつあるみたいだよ?」


「ああ、あと一つ言っておく。感謝の印だとしても美沙輝にチョコは渡すな」


「なんで?」


「あいつ、バレンタインが誕生日なんだよ。表面上は……いや、まあお前が渡せば喜んでくれるだろうけど、チョコ自体には怒ってるから」


「そうなのかー。でも、バレンタインってチョコを渡す行事だよ?」


「……世の中にはな。チョコをもらえないやつはわんさかといるんだ」


「切なくなるねー」


「そんな中でも美沙輝は律儀に俺と山岸に作ってくれたけどな」


「さすが美沙輝さん。女子力が違うよ」


「でも、男子でもらえたのは俺たちだけだからな。義理チョコと言ってもその希少価値はめちゃくちゃ高い」


「そのチョコは?」


「お前に食われたんだよー!返せ!美沙輝のチョコ!」


「あーすいませんでした〜。てっきりお兄ちゃんが私に作ってくれたものだと思って。いやね?お兄ちゃんにしてはかなり凝ってるな〜とか思ったけど。はい、とても美味しかったです」


 こんな妹に食われたこと自体が俺は悔しい。ていうか、あの時も同じようなことをしていた気がする。俺、チョコとかもらったことなかったから、美沙輝からもらったのすげえ嬉しくて冷蔵庫にしまってたらこいつに食われていたのだ。

 なんでその時期に料理研にいるのかって?俺はすでに12月に退部していて、一応規則に則ってみたわけだが、特になんの規制もなかったのだ。まあ、ラスト3ヶ月でドーピングして受からせたのは前に言った話だ。1月の入部……入会?まあ、どちらでもいいのだが。


「はあ、真昼間からあんまり人の名前叫ばないでくれる?こっちが恥ずかしいわよ」


「ん?ああ来たのか」


 恵を適当に責めていたらいつの間にか3人とも来ていた。

 香夜ちゃんは昨日どこにいたのかってアリサちゃんのところに泊めてもらっていたらしいです。


「チョコならまたあげるから」


「バレンタインにもらうからいいものだと思うんだよ」


「そういうもの?」


「確かに美沙輝先輩から貰えるなら私尻尾振ってもらいに行きます」


「ちゃんとあげるわよ、あんたたちにも」


「やったです〜!」


「交換条件よ」


「で、ですよね」


「さすがにお菓子作りぐらい出来るようになってちょうだいよ。来年になったら新入部員も入るかもだし」


「私が先輩と呼ばれるんですか〜ちょっとワクワクです」


「後輩からもマスコットにされてそうだけどな」


「今もマスコットなんですか⁉︎」


 金髪碧眼の美少女だからな。目立つ。マスコットではないかもしれないが、看板印にはなりそう。


「そういや、アリサちゃんやっぱり目立つけど視線とか気にならないのか?」


「上に立つもの、人から常に見られてると思って振るまえ。というのが教えです。まあ、私は立つ気ないですけど。それでも物珍しさはあると思います。もっと東京とかでコスプレしてる人に紛れこめば目立たなくなると思います」


 それはどうなんだろうか。気を隠すなら森の中っていうけど、物珍しいものを隠すなら物珍しい中に隠せば目立たなくなるというのは無理があると思う。その中で目をつけられれば変わらない話だし。


「なんか色々巻き込まれそうな気がするから、アリサちゃんはここで遠巻きに物珍しく見られてるぐらいでいいよ。言って人なんて他人をそこまで気にしないって」


「こんなに女の子たくさんの中に1人浮いてる男の人がいれば嫌が応にも見られると思うんですが」


「……おとなしく家に帰って待ってます。みんなで楽しんできてね」


「だーもう!そういうことを言わない!育也もあんたに誕生日プレゼントあげるって話だから主役がいなくてどうすんのよ!私たちなら大丈夫だから、そんなにネガティヴにならない!」


「うん、だからお前はモテるんだろうな……」


「あーなんか分かります」


「なんの話よ?」


 だいたい公平な上に不利になりそうな方に肩を持つからな。それもあからさまではなく自然に。こいつは意外にもファンが多い。料理目当てなところはあるかもしれんけど。


「とりあえず、早く行きませんか?全員目星がついてるわけでもないですよね」


「……ねえ、私は前にあげたしよくない?」


「各々自分の金だったろ!」


 あの時の水族館のことを言ってるのだろうが、しかも入館代俺が出してるし。お揃いでキーホルダー買ったのは自分の金だったはずだ。なんでそこで折り合いをつけようとするのか。別に高くなくていいんだよ。さすがに駄菓子は勘弁だけどな。


「ま、それは置いといてちょっと遠出しましょうか。あんまり近場でも味気ないでしょ」


「遠出して何があるんだよ」


「何も何かを買ってあげるのだけがプレゼントじゃないわよ?」


「いや、そうだけどさ……こう、なんか形に残してくれてもいいんじゃない?」


「残してあげるわよ。ね、香夜ちゃん」


「はい」


 特に何か形に残るようなものを携帯してるようには見えなかったが、何故かつけられているポーチがそれなのかもしれない。


「今日見たことない服着てるな、香夜ちゃん」


「衣替えです。少し涼しくなってきましたし」


「私の服です」


「ああ、だからか」


 多少アリサちゃんの方が背が高いとはいえ背格好はそこまで差はないので借りても問題はないか。というか、制服のまま2日間いたことになるぞ。まあ、アリサちゃんの家から香夜ちゃんの家を往復するのは辛いだろうし、アリサちゃんも香夜ちゃんもそれで構わないというならそれでいいけど。


「で、どこに行くんだ?」


「育也、お金の持ち合わせある?」


「主役に払わせるのかよ⁉︎」


「さすがに移動賃まであんたの面倒見切れないわよ。往復2000円あればいいから」


「先に言ってくれ……恵の分も払うの俺なんだぞ……」


「じゃあ、恵ちゃんの分は私の方で精算しておくので。それじゃ行きましょう!」


 アリサちゃんが取り仕切っていたが、どこに行くのだろうか。遊園地とかだったらすでにお金が足りなさそうだけど。もっとこうお金を使わずとも遊べるところでお願いします。

 わざわざ遠くにしようとしたのは人の目の配慮だろうか。まあ、遠くに行った方がより近場の人の目は少なくなる。私立だから俺たちの行ける範囲の遠くとか言ってもそこに住んでるやつはいるんだろうけど。

 きっとそいつのことを俺は知らないのでどうでもいいです。

 みんな駅の方に行った後に最後に歩き出そうとしたところ、香夜ちゃんに服の裾を引っ張られた。


「どした?早く行かないと置いてかれるぜ?」


「いや、あの……忘れてて申し訳なかったと思いまして。先にここで謝っておこうかと」


「いいよ。こうして何かしてくれようとしてるんだし」


「まあ、先輩にとって損か得かは分かりませんが。私たちも一学生ですので大したものは買えないということは覚えておいてください」


「それこそ百均で買ったものでも手作りで何か作っていただいてもよろしいのよ?」


「私たちの中にそんな器用そうなことが出来る人がいると思いですか?」


「いないな。意外に山岸はできそうだけど」


「即答されるのも不服ですがそういうことです。私たちは既製品しか今のところは渡せません。形に残るものというなら料理では胃の中に収まればそれで終わりですからね。まあ、何をするかは着いてからのお楽しみということで。行きましょう」


 半ば強引に俺の手を引っ張って香夜ちゃんは進み始めた。

 せっかく企画してくれたんだ。俺は流れに身を任せて楽しむことにしよう。それが俺にとって楽しめるものかどうかはひとまず置いておくとして。

 まったく、何を企んでるんだ?


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