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幽霊屋敷(2)

「いや〜中々話できる奴いなかったから嬉しいわ〜。また話そうぜ!」


 急に元気になったのは、昨夜深夜帯のアニメ見てた先輩。星野というらしい。

 まあ、二次元なら色々と精通してるらしく、色々勧められた。元が持ってるのなら借りようかね。俺のはした金じゃ買うにも高い買い物だしな。

 まあ、話がこの様に打ち止めになったのは、到着したからだ。

 結構な山の中を走ってきていて、確かにこれでは地図に載ってないのも頷けるという話だ。

 本当に金銀財宝でも埋まってんじゃねえの?


「では、アリサちゃん。音頭を頼む」


「え?私がやるんですか?」


「まあ、いわばここを貸してくれたオーナーみたいなものだ。使用上の注意ぐらいを言ってもらえればそれで構わないよ」


「そうですか。え〜みなさん、注目してください!ここの貸し別荘ですが、さすがに一人一部屋は泊まるスペースがないので、二人一組、ないしは三人一組でお願いします!食材はこちらで保管してるものがあるので、ご飯がなくて困ることはないのでご安心ください!えーっと、あとは……」


「言うことがあるんじゃないか?」


「え?言っちゃうんですか?」


「ここまで来てしまったんだ。出発前に言うと駄々をこねて行かないとかいう輩も出るかもしれないが、ここでは下手に行こうとすれば遭難もしかねない。結果論、ここに泊まるという選択肢しかないのだ」


「……コホン。えー、みなさん。この別荘ですね、一見普通のコテージですが、出るそうです」


「で、出るって……?」


 天文部の子は何も知らされてなかったのか、恐る恐る質問している。

 まあ、出ると言ったら連想できるものは一つしかないだろうけど。


「変質者ですかね。すでに、男子の方々がいますのでお気をつけください」


「人を変質者扱いすんな」


「痛いです。まあ、変質者は何を隠そうこの人ですが、まあ、今に始まった事ではないので……痛いです。頬をつねらないでください。私が悪かったです」


「ったく……」


「出るのは変質者ではないです。いわゆる幽霊です。ゴーストです」


「ええ……」


 少し不安がる声が上がった。

 まあ、普通の女子はこうだろう。

 おい、そこの妹。目を輝かしてんな。

 みんな美沙輝に寄ってるが、そいつは事前に聞いていたから動揺してないだけで、怖がりだぞ。言わないでおくけど。


「えー、そこでですね。佐原先輩、いいですか?」


「ああ。あー、女子のみんな。心配することない。除霊師を呼んできた」


「除霊師?」


「千種」


 千種を呼んで前に来てもらう。女子がかなりいるためか、少し落ち着かない様子だが。


「寺の息子で、実は見える体質らしい。まあ、本当に除霊できるかは知らん」


「まあ……やったことないけど、とりあえずやってみるだけやってみるんで……はい」


「この通り、面は強面だが、中身小心者だ。高1だから、みんなフランクに接してやれ。色々可哀想だから」


「なんでそこまで心配されてんすか⁉︎」


 きっと、こいつから女子に話しかけることなんて不可能に近いと思ったからだ。


「俺より弱いが、まあ見た目相応の力はあると思うから、雑用なり何なり頼めばいいと思う」


「ちょっ、扱い!」


「というわけで、まず見てきてくれ」


「わかりましたよ……」


「ここからは見えないのか?」


「別にオーラとか察知できるわけではないんで。いたらいた、って程度です。まあ、全く見えない人よりは役に立てるかと」


「じゃあ、レッツゴー」


「行けばいいんでしょ、行けば……」


 そのでかい図体ながら、トボトボと足取りだけは浮かないようだった。

 一応、さすがに一人で行かせても仕方ないので、その後ろからぞろぞろと行くことにした。

 別荘であるので、お迎えがあることもない。なんか、悲しい。期待してたのと違う。

 そのオーラを感じ取ったのか、アリサちゃんが申し訳なさそうに声をかけてきた。


「……あの、期待はずれでした?」


 直接そう言うこともできない。


「えっと……この近くに海があるんだよな?」


「ええ。ここは3階建てですので、3階なら海が一望出来ますよ。残念ながら、男性は2階です。女子の部屋へは呼ばれた場合以外は禁制です。女子の部屋は3階です」


「……3階に霊が漂ってる可能性は?」


「まあ、その可能性を鑑みて、あの千種くん、でしたっけ?の参加を許可したんでしょう。今、調べてもらってるので終わってから荷物は運び込むことにしましょう」


「その間は?」


「ちょっと、キッチン確認してきますね。ガスコンロですから使えないことはないと思います。水もちゃんと通ってますよ」


 そこまで心配はしてない。なんだ?俺たちは無人島にでも投げ出された設定なのか?

 というか、案内した本人が1番信用してないようにも見える。


「千種くーん。いますかー?」


 その聞き方もどうかと思う。

 この子は怖いものなしか。千種しかり、霊しかり。


「アリサちゃん。君には怖いものはないのか?」


「私だって、女の子ですよ?怖いものの一つや二つあります」


「例えば?」


「佐原先輩ですかね」


「なんでだよ⁉︎何カ月一緒にいるんだよ!後輩がいがないな!」


「まあ、でもいい感じにツッコミを入れてくれることは評価します。恵ちゃんはボケだし、香夜ちゃんは勢いが足りないので」


「先輩をなんだと思ってんだ?」


「都合のいい手駒」


「なんてこと言うんだ!」


「とか、誰かなら言うでしょうけど、さすがに敬意の一つ払えないような花菱家の長女ではないのですよ」


「君は本当にお嬢様なの?」


「むう。ここに来てそれを言いますか。追い出しますよ」


「あの〜いいっすか」


 他の方々は車に揺られて疲れたのか、リビングに設置されたソファにもたれかかっていた。

 まだ昼前だが、山の中とあり、幾分か涼しく、木々のおかげで差す日は木漏れ日となっているので、直射であたることはない。


「思ったけど、こんな真昼間から霊なんかいんのか?」


「ごもっともな意見ですね。千種くん、その辺りどうですか?」


「うえっ?」


「千種。金髪碧眼美少女だからって臆することはないぞ。この子は見た目よりアホだ」


「なんですか⁉︎私はクラス1の学力を有してるんですよ!」


「ほら、学力を自慢してくるあたりアホの子っぽいだろ」


「いやあ、俺も古文と日本史ぐらいしか得意じゃないからすごいと思うっすけど……」


「ほら!普通は褒めてくれるんですよ!難癖つけてくるのは佐原先輩ぐらいです!」


「学力なら負けん」


「ああ言えばこう言う先輩ですねぇ」


「喧嘩はしないほうが……」


「やかましいわ!三下!」


「誰が三下だ⁉︎」


「ああ、もうこの先輩はほっときましょう。そういえば香夜ちゃんが私か天王洲先輩しか論破出来ないって言ってましたし。そういえば、自己紹介まだでしたね。私は花菱アリサです」


「あ、俺、千種空っす」


「同い年みたいだし、かしこまらくていいよ。じゃ、案内するからもう少し見てもらえるかな?」


「お、おう」


 ああしていればお嬢様っぽいのにな。そういや、キッチンは大丈夫だったのか?

 材料はあるみたいだし、山岸引っ張りだして手伝わせるか。

 呼びに行く前に、キッチンらしき場所を覗いておくか。


「ん?なんだこれ」


 妙に出てくるの遅いと思ったら、何箇所かにこれは呪符だろうか。それとも護符だろうか。

 俺にはよくわからんが、それが貼られていた。

 え?大丈夫なのか?ここ。俺に見えてないだけでいるの?

 まあ、昼間っから精力的に活動する霊もいないだろう。もしくは、いなかったが念のために貼っておいたとか。

 うん、きっとそうだ。

 勝手に完結しておいて、二泊三日あるので、とりあえずは材料の計算から始めるとした。

 ……これ、14人分もあんのか?

 最初から不安しかないが、合宿が始まった。



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