1話:ポンコツな妹とその兄
先に自己紹介をしておこうと思う。
俺は佐原 育也。とりあえず高校2年。俺の方は正直どうでもいいので、紹介しなくてはいけないやつがいる。
まあ、こいつがメインとなるわけだ。語り部は全て俺視点なのだけど。
俺が今頭を悩ましているのは妹である佐原 恵。俺の一個下で今年高校1年だ。今は4月なのでピカピカだ。小学校ではないが。なんで、小学生はピカピカの一年生ってコマーシャルやってんだろうな?中学生や高校生がピカピカじゃないみたいじゃん。
さて、そんなことはどうでもいいのだ。
何に頭を悩ましているのか。そこに焦点が当たってくると思う。
結論から言わせてもらえば、妹はとんでもなくポンコツなのだ。のび太君の方がマシだろというぐらいに。
本当はあまり言いたくないが駄妹と呼んでいる。主に誰かに紹介する際に。
幸いなことは妹は身内びいき目じゃなくともそこそこ見た目”だけ”はいいので、なんとか許容できている……かはともかく、存在を容認している。
かといって、妹は不良というわけではなく、何かと抜けているということだ。まあ、バカなわけですが。
その辺りは親がなんとかしろという話なのだが、俺が一人で色々できちゃう子供だったために、手のかかる妹が可愛いのか甘やかしてしまったために、ここまで来てしまったのだ。
それでも、親からも学校からもよく高校に受かったなと言われたレベルであるが、周りに知ってる子は誰もいないとのことだったので、妹の本性がバレないうちに改造……もとい、なんとかちょっと間抜けだな〜ってぐらいの子にまで改善させていこうというのが、目標だ。
「分かったか?恵」
「zzzz」
「寝るな‼︎」
「はえ?」
見事な鼻ちょうちんを膨らまして寝ていた妹を起こす。
もうお兄ちゃんは心が折れそうだよ。まったく、なんで俺がこんなことしなきゃならんのだ……。
「長かったからもう少し簡単にお願い」
「今のままじゃ学校から淘汰され、社会からも淘汰されてしまうから、今のうちからできる子になれということだ」
「とうた、ってなに?人の名前?」
「人の名前が今の話から出てきますかねぇ?淘汰っていうのは、いらない子は邪魔者にされて、いない子扱いされちゃうってことだ」
「最初からそう言ってくださいな。まどろっこしいよ」
「今の説明がまどろっこしいから、こうやって言葉が生まれてるんだけどな」
「って、私がいらない子扱いですか!お兄ちゃん!」
「むしろ、今まで良く大丈夫だったな……」
「周りみんな優しくて、私が何かやる前に全部終わってるの。私は座ってるだけでいいって」
もうすで始まっていたのではないのだろうか。
すでにポンコツ扱いされてたようだよ。そりゃそうだな。小学校ならともかく中学じゃ余計な作業を増やされるぐらいなら何もしてくれない方がマシだという結論に至る。
「お前は例えば文化祭とか体育祭とか置き物になって、気づいたら終わってた、とかになってていいのか?」
「よくないよ。私だってみんなと一緒に準備したり協力したりしたいもん」
「で、お前はなんで中学のときお前がやる前に全部終わってたか理由はわかるか?」
「さっぱり。みんな作業早いな〜って」
「これは根本的な考え方から変えていく必要があるか……」
我が妹の育成はまだ始まったばかり。