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SIDE:02

※メリル視点→モニカ視点と区切りで視点が変わってます。


「ねえ、メリル。あたしは一体どこからツッコめばいいのかしら?」


「で、出来るだけ穏便にお願いします」


学院が完全に施錠された後、結局合流出来なかったモニカは、私より遅く寮に戻ってきた。

情報収集の相手とつい話しこんでしまったらしい。夕食時もやたら謝る彼女に、気にしなくていいと話していたはずだったのだけど……


何がどうなったのか、放課後のことを洗いざらい話すはめになっていた。



「たった三日で何がどうしてそうなるのよ」


「私も訳わかんない。モテる人の頭って、モテない人の数倍の速さで進展してるのよきっと」


「いや、それは何か違う気もするけど」


寮の食堂からお風呂まで、移動中もずっと話しを続けて、ようやく部屋に戻って落ち着けた感じだ。

途中途中に先輩の顔を思い出しては唸る私を、心優しい相方は生暖かーい目で眺めてくれた。

あれは不可抗力って言うか、あんな顔して変なこと言う先輩が悪いと思う、うん。


「しかし、全くもって本末転倒ね。彼は一体何がしたいのかしら」


「何って、クラルヴァイン家のために私の体質が欲しいんでしょ?」


「そうなんだけど…どうなのかしらね」


ネグリジェの裾でメガネを拭きながら、モニカが深い深い溜め息をつく。

表情は呆れと言うより困惑気味だ。


「モニカ? 何か気になるの?」


「いやね、あの人がメリルを幸せにしてくれるって言うなら、応援もするけどさーと思って」


「しなくていいから!!」


呟くような声量でとんでもないことを言ってるよ。

冗談じゃない、全力で否定だ。私とて、お姫様やお嬢様に憧れる年齢なんてとうに越えている。

あの人自身はともかく、貴族なんて聞くだけでも面倒そうな世界は、絶対断固お断り!



「………」



今、何を考えた私?

“あの人自身はともかく”だって?



「ないわ…無意識にソレとか、疲れ過ぎでしょ私……」


「メリル? ちょっと、大丈夫?」


「大丈夫じゃないから、そっとしておいて」


話の途中で突っ伏した私の背を、モニカが心配そうに撫でてくれる。

ああもう、頭の中では否定の言葉だけを繰り返しているのに。

目が、耳が、放課後の彼をどんどん呼び起こしてくる。



「…メリル、顔真っ赤。恋する乙女みたいになってる」


「冗談じゃないわ、詐欺師に騙されただけよ」


「だといいわね」


ぽんぽん、と子供をあやすような優しい仕草。

そう言えば、彼もそうしてくれたと……思い出さなくていいのに、さっきから墓穴掘ってばかりだ。

あー本ッ当にもう!! 寝不足になったら慰謝料請求してやるんだから!


(……先輩なんて)







*  *  *



(…重症っぽいなあ)


二年目になる相方が初めて見せる姿を眺めつつ、モニカはもう一度息を吐く。

せっかく仕入れて来た情報だけど、残念ながら明日に持ち越しのようだ。


(ま、ある意味聞かせない方がいいのかもしれないけどね)


内容はもちろん、彼女の今日の頼まれごと。つまり『ギルベルト・クラルヴァインの好み』について。

今回はなんと、総合成績第二位にして彼の友人デューク・キンバリー本人から仕入れた話だ。おそらく信憑性は高い。


(むしろ、しばらく黙っておいた方が良さそうね)


転がったかと思えば何故か枕を叩き始めたメリルは、まだ耳まで真っ赤だ。

全く、あたしの可愛い相方に何てことをするのよ、ギルベルト・クラルヴァインめ。



……ちなみに、肝心の情報だが


・自分がキツめの顔なので優しい顔立ちの方が好き

(※メリルはぱっちりお目々で可愛い系・優しい系の顔立ち)


・太りすぎ、痩せすぎなどの不健康な体型は苦手

(※メリルはちょっと痩せ気味だけど、健康的な分類。むしろ、肌とかもちもちしてる)


・実は即体の関係を持つよりも手を繋いだり抱きしめたりと言った『恋人のいちゃいちゃ』が好きらしい(憧れ?)そう言う行為を受け入れてくれる子がいい。


三つ目はどうかと思ったけど、処女のメリルが即性行為に結びつく訳もなく。

あまつさえ、今日の話を聞く限りでは受け入れていたようだ。

彼が憧れている、恋人同士らしい行動を。


他にも『大き過ぎる胸が苦手』とか(何があったんだろう)細々(こまごま)とあるが、嫌いな要素は一つも当てはまっていないのに、好きな要素はほとんど当てはまると言う合致ぶりだった。


…聞けば聞くほど、メリルが先輩の好みのド真ん中っぽいのは、気のせいじゃないだろう。

知り合ってしまったことだし、体質云々を彼が流しているのも本気なのかもしれない。

まあ、家を捨てたら本末転倒には変わりないけど。



あたしの可愛い相方は、今度は枕をかぶって身悶えている。

それを横目に眺めつつ、日に日に終わりが遠くなっていく事態にただ溜め息をつく。


ああ、今夜も長くなりそうだわ。

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