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赤い着物の女

作者: マロ
掲載日:2026/09/29

 俺は伊藤拓真25歳サラリーマン。彼女は工藤咲OLで俺と同い年だ。


 俺と咲は高校で出会いそのまま今まで付き合っていた。


 俺達は休日を合わせて泊まりに行くことにして、旅館を調べてとある旅館を見つけた。

 割と有名な旅館のようで俺達はワクワクして、二人で休日を合わせてその旅館に一泊予約をとった。


 そして、当日俺はレンタカーを借りて咲の家まで迎えに行く。リュックを背負った咲が俺の運転する車に乗り込んだ。

 

「タクマ、運転ありがとう!楽しみだね!」

 咲は俺の運転する車の助手席に座り俺に笑顔を向けた。


「旅行なんて久しぶりだしね!」

 そう、俺達は社会人になってから忙しくて旅行なんて行けなかった。だから、久しぶりの旅行だった。


 道中は何事もなく旅館へと到着した。着いたのは大体16時くらいだった。


 旅館は歴史を感じる日本の建物で、中はとても綺麗だった。だけど、ところどころに置いてある日本人形や骨董品が少し不気味に感じた。


 俺達は旅館の人に連れられて部屋に案内される。

 長い廊下を渡って行き、俺達の部屋は本館から離れた別棟の建物の2階の端の部屋だった。

 廊下は薄暗く、廊下は歩くとギシギシと音が鳴る。俺は別に怖くは無かったけれど、咲は少し怖がっているように見える。


「この部屋です。どうぞゆっくりとお寛ぎください」

 着物を着た旅館の人は部屋を案内すると鍵を俺に渡して去っていく。


 俺は鍵を使って部屋を開ける。部屋は広々としていて、目の前にも窓がある。その窓からは森が見える。

 

「広い部屋だね!」

 俺は荷物を適当に置くと咲にそう言った。


「うん、いい部屋!温泉もあるみたいだから今すぐ行きたい!」

 咲も久しぶりの旅行を満喫したい様子だった。


 俺達は早速この旅館自慢の温泉へと向かった。


 咲と男湯と女湯で別れて温泉には一人で入る。

 広い露天風呂があり、何人か入っていた。


 俺はゆっくりと湯に浸かる。温泉特有のとろとろの湯に疲れが溶けていくようだ。


 ゆっくり入っていると露天風呂の端に植えてある大きな石の後ろから赤い着物を着た長い髪の女性が現れてこちらに手招きしている。

 あれ?旅館の人か?なんで呼んでるんだろう。俺は立ち上がってそちらに向かう。


「バカ!にいちゃん、行っちゃいかん!」

 俺の隣にいたお爺さんが俺の肩を掴んだ。


「えっ?なんでですか?だって、旅館の人が呼んで…あれ?」

 お爺さんの顔を見た後、俺はすぐにもう一度さっきの赤い着物を着ている人を見るとそこにはもうその女性はいなかった。


「ここは男湯だぞ。女性がいるわけないだろう、目をつけられとる。もう上がれ」

 お爺さんはそう言って俺の手を引いて脱衣所へ向かった。

 あれ、俺女性だったなんて言ったっけ?


「いいか、これを離さずに持っておけ」

 おじいちゃんは普通の石を一個俺に渡して離れて行った。


「石?」

 なんの変哲もない小石だ。一体なんだったんだろう?


 俺はそのまま上がって着替えをして部屋に向かった。部屋に着くともう咲は上がっていた。

 思っていたより温泉に浸かっていたようだ。

 その後、美味しいご飯が運ばれてきて俺達はその美味しい料理に舌鼓を打ち、布団に入る。


 一応、貰った小石を枕元に置いて眠りにつく。咲が不思議そうにその小石をチラッと見たが、眠気に負けてそのまま寝てしまった。俺も眠りについた。

 

 

「あれ、ここは?」

 俺は気づくと俺達の部屋に続く長い廊下にいた。そして、隣には咲がいる。

 後ろを見ると温泉の時の赤い着物を着た女性がいる。


 俺はなんだかすごい恐怖を感じて咲の手を引いて走った。

 廊下をギシギシと鳴らしながら走った。そして、なんとか追いつかれずに部屋に入る。

 扉を閉めて鍵を閉める。


 ドンドンドンドンドンドン!!!!!

 扉を叩くすごい音が部屋に響く。


 俺は覚悟を決める。俺は筋トレもしていて前にはボクシングジムにも通っていた。入ってきたら倒そう。

 女性なら負けることはないだろう。そう思っていた。


 ドンドンドンドンというと音から、ガッガッガッという何かで扉を刺す音に変わった。


 俺は血の気が引いた。


 刃物を持っている。


 何も持っていなかったら女性になら問題なく勝てるだろう。だけど、刃物をもっていたら?それは話が違う。


 ガチャン!

 なぜか扉の鍵が開いた。


 ギィーと音を立てて扉が開いていく。


 俺は絶対に守らなければいけない、咲を見る。


 隣にいる咲を見ると俺を見つめてなぜか不気味な笑みを浮かべていた。

 その笑みを見ると凄まじい恐怖が俺を襲った。

 

 その時、小石が俺の頭に飛んできた。


「はぁ、はぁ、はぁ!」

 俺は飛び起きた。枕元を見ると小石があった。頭に痛みが走り、触るとたんこぶができている。


 よかった、夢だったようだ。


 俺達は朝ごはんを食べた後、チェックアウトして帰路に着く。


「なぁ、今日の夢の話聞いてくれよ」

 俺は帰り道運転しながら、となりの助手席に座る咲に話しかける。


「…私も同じ夢を見たの」


 俺は咲のその言葉を聞いて驚き、運転しながらチラッと咲の顔見る。

 

 夢の中で不気味に笑みを浮かべていた咲と同じ笑みを浮かべていた。

 

 


 

 

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