『サポートキャラ?致しませんわ。』
※一部表現を修正しました。
感想でいただいたご意見をきっかけに、記号で表していた感情表現などを見直し、文章として整えました。
物語の内容に大きな変更はありませんが、以前より読みやすくなっていれば嬉しいです。
『あなた、サポートキャラのキーラね!役に立ちそうだから、仲良くしてあげるわ!!』
これは、初めて私がエイミー・カワードと出会ったときに、彼女から言われた台詞だ。
子供は幼くして亡くなることも多いので、貴族家でも無事の成長を祝う5歳のお披露目をしてから、少しずつ外部との交流を始める。
この日は、私ことキーラ・ウィンストンの5歳のお披露目会だった。
近隣の領地の貴族家や、親類縁者、両親の親しい友人らが集まってお祝いをしてくれて居た。
ウィンストン伯爵家は、この国の物流の5割を取り仕切る大商会を運営する家だ。
表向きは…。
その裏では、取引のために国中、さらには他国にも支店を持ち、他家にも多く出入りしているため、様々な情報が集まってくる事を利用して、情報屋の様な事をしている。
これは、我が家から信用を得られた、限られた貴族家しか知らないことである。
だが、数少ない知っている者達から我が家の情報が漏れることはほとんどない。
(全く無いとは言い切れないのが難しいところだけど…)
情報を先に得ることの優位性というのは、上位貴族になればなるほど理解している。
だからこそ、自分の優位性を保つために、情報源となる我が家の事はかえって秘匿扱いとなる。
流行にせよ、他家の動向にせよ、他国の情勢にせよ…。
先に言ったもの、やったもの勝ちの世の中ですものね。
そして、冒頭の台詞を言った彼女は、今回「近隣の領地の貴族家」枠での参加者だった。
僅かに領地が接しているという以外のご縁は全くない、カワード子爵家の一人娘らしい。
商会として取引はあるかもしれないが、規模も大きくないし、我が家からみれば居ても居なくても変わらない家というのが、偽らざる本音だろう。
まあ、とにかく「特に親しくもないが、ご近所さんなので義理で招待しました」という家なのだ。
そんな親しくも無い家の、しかも子爵家の娘が伯爵家の娘に向かって放った一言に、周囲の空気が一瞬で凍り付いたのが分かった。
「初めまして。本日はようこそ、おいでくださいました。キーラ・ウィンストンですわ。あなたのお名前はなんておっしゃるの?」
「なによ、へんなしゃべりかたして!エイミーよ!エイミー・カワード、なんで知らないのよ。ちゃんと覚えておきなさいよね。そんなことじゃサポートキャラとして役に立てないわよ!」
この方は何でこんなに偉そうなのかしら?
子爵家の令嬢なのよね?
お父様とお母様からは、身分について教えて貰ったけど、間違えて覚えてしまっていたのかしら?
それにしても、サポートキャラって何???
この時のキーラは、自分の持っている知識では、エイミーのことを理解することが出来ず、混乱しきっていた。
そこで、とりあえずサポートキャラというのは何なのかを尋ねようと口を開きかけたところ…。
「エイミー!!!!側を離れるなとあれほど言っただろう!ウィンストン嬢に失礼な事を言うのは止めなさい!!」
小柄でずんぐりとした体型の中年男性が、慌ててこちらにやってきてエイミーを叱りつけた。
「ウィンストン嬢。お初にお目に掛かります。カワード子爵と申します。娘のエイミーが大変失礼を致しました。まだ礼儀作法が身についておらず、恥ずかしい限りです…。どうしてもこのお披露目に来たい、お友達が欲しいと駄々をこねまして。悩んだものの、他家の同年代の子の模範となる様子を見れば、もう少し行儀が良くなるかもしれないと期待を掛けてしまった私の失態です。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。これ以上のご迷惑とならぬように、本日はこれにて失礼させて頂きます。」
あら、カワード子爵はちゃんとした方なのね。
後でお父様にもフォローをお願いした方が良さそうね。
「カワード子爵様、お目に掛かれて光栄です。ビックリはしましたが、気にしておりませんよ。お土産を用意しておりますので、ぜひお持ちになってください。」
そう言って、近くに待機していた執事に目配せをして、お土産の準備とお帰りの見送りを頼む。
執事が「カワード子爵様。どうぞ、こちらへ。」と会場の外へ誘導するのを見送った。
ちなみにエイミー嬢は、みんなの前で叱られた事が不満なのか、父親が謝っている横で不機嫌そうな表情を隠さず、反省の様子がないまま、父親に引きずられるようにして帰って行った。
カワード子爵親子が離れていくと、周囲からはホッとしたような空気が流れた。
その後は特に何事もなくお披露目会は終わったのだった。
◇
それがエイミー・カワードと、私の初めての出会いだった。
お披露目会の後、カワード子爵からは正式に謝罪とお詫びの品が届いた。
まあ、お披露目会という大事な場所での出来事とはいえ、子供のしたことでしたし、子爵の対応が早かったこともあり、お父様もこれ以上の言及はしないと伝えて、事態は収束した。
……はず、だったのだけど……。
なんと、お披露目会の数日後から、エイミー嬢が我が家に突撃してくるようになったのだ…。
話の内容はいつも決まっている。
「ここは私が前世で嵌まった乙女ゲームの世界なの!私はヒロインでみんなに愛される存在なの。」
「でも、家族には恵まれてなくて、虐げられているの。」
「それでも健気に頑張っている私をみんなが救い出してくれるのよ!!きゃぁ、素敵!」
「あなたは攻略対象の情報や好感度を教えてくれるサポートキャラだから、頼むわよ!」
「私の推しは、第三王子なんだ~。すっごく綺麗な顔してるし、めちゃくちゃ優しいの~。思い出すだけでうっとりしちゃうわ。」
「でも騎士団長の息子も背が高くて、格好いいのよね~。ああ、迷っちゃうわ!」
などなど…。
エイミー嬢は両手を頬に添え、夢見るように身をよじっているのだけど。
……まだ会ったこともないはずよね?…流石にちょっと怖いわ…。
給仕のメイド達の表情も強張っているから、後で何か差し入れでもしておきましょう…。
彼女が来ているときは、ほとんど彼女が一方的に話して、私は紅茶を飲みながら静かに聞いているだけ。
私が一言も話さないことは、彼女にはまったく気にならないらしい。
言いたいことを言って、出されたお菓子を全部平らげて帰るのが、もはやルーティンとなっている。
◇
そんなことが、もう10年続いており、彼女の中では私たちは『親しい幼馴染み』らしい。
どこかに一緒に出掛けたこともない。
いつもエイミー嬢が我が家に突然押しかけてくる。(こちらから招待したわけでは無い)
いつも一方的に話して帰るので、私の事を何も知らない。
誕生日プレゼントは要求してくるけど、自分は用意しない。
これで、『親しい幼馴染み』だと言うのだから、不思議よね。
それでも、彼女の話を聞くのを何故止めないのかと言えば、単純に情報として面白いからだ。
5歳で最初に彼女の話を聞いた時、彼女の話があまりにも理解出来なくて、お父様に相談したの。
そしたら、どうやら「転生者」と呼ばれる人がたまに居て、この世界ではあり得ない知識や技術を知っていたりするらしい。
ただ、それらの情報は取扱が難しく、うまく使って成功した者も居れば、失敗して破滅する者も居るらしい、と聞いて彼女が持つ情報に俄然興味が出てしまった。
(誰も知らない情報が聞けると思うとワクワクしてしまうのは、我が家の生業のせいかしらね)
そんなことを思って、声には出さずにそっと笑った。
本当は、彼女がずっと喚くように話しているのが煩わしくて、もう来ないようにお父様から子爵に頼んでもらおうと思っていたのだが…。
転生者の話を聞いて、もう少し様子を見ることにした。
子爵にも、こちらは問題ないから、来たいと言ったら来させて構わないと、改めて伝えてもらった。
そうしたら、ほぼ毎日のように突撃してくるようになったのだが…。
お勉強はいつしているのかしらね?
5歳の時から、あまり礼儀作法が身についているとは思えないんだけど…。
もうすぐ学園に入学するのに、大丈夫なのかしら。
そう、エイミー嬢が言う乙女ゲームの舞台となるのが、王都にある王立学園らしい。
この国の全ての貴族家の子女は、全員16歳~18歳まで学園に通う義務がある。
逆に、王立学園を卒業できない者は、貴族として認められないのだ。
それでも毎年、「自分だけは許される」と勘違いして退学になる者がいるのだから不思議よね。
……エイミー嬢からも、同じ匂いがすると感じるのは、気のせいだと思いたいわ。
乙女ゲームは、王立学園に入学する事でスタートするのだそうだ。
入学式に始まり、学園祭や学園主催のパーティー、などの行事ごとによって発生するイベント。
日常の会話や行動で変わる好感度。
と、様々なことを教えてもらった(一方的に話していたとも言うけど…)わね。
ただ、乙女ゲームとやらの話はついでで、私が聞いていたのはその他の情報だ。
エイミー嬢の話の中には、たまにとんでもない情報が紛れていることがあるのだ。
私が9歳の時に、やっぱり突撃してきたエイミー嬢が、思い出したように話しだしたことが切っ掛けだった。
「そういえば、来年くらい?に第三王子のお母さんの実家で、虫?だったかな?の大量発生で農作物が被害を受けて、没落しちゃうんだよね~。後ろ盾を無くして王城でも肩身が狭いし、学園でも王子なのに相手にされないんだよね~。かわいそ~。」
え?第三王子の母君といえば、国王陛下からの寵愛が篤い側妃様よね?
そのご実家といえば、我が国の食料庫とも呼ばれる広大な穀倉地帯を抱える侯爵家。
その侯爵家が没落するほどの虫害が発生するですって!?
お父様に相談するにしても、もう少し情報が欲しいわね…。
それまでは、聞き役に徹していた私。
この時ばかりは、詳細を確認するために口を挟みました。
「それは、いつ頃のお話ですの?」
「んー、たしか第三王子ルートの前日譚だから、入学の六年前?あれ、五年前だったかな?」
「虫、というのは?」
「知らないわよ。ゲームの背景説明だもん。とにかく畑が全部ダメになって、第三王子がかわいそうになるの!」
いつも黙って聞いていた私が聞き返したことに少し驚いた様子をみせたエイミー嬢。
しかし、すぐに調子を取り戻したのかいつもの様子で話し始めたが、有益な情報はそれ以上は得られなかった。
早くお父様に相談したかったけど、エイミー嬢が満足して帰るまでは我慢した。
彼女が帰った後、急いでお父様にお知らせした。
「お父様。エイミー嬢のお話は、ただの夢物語ではないかもしれません。」
「……何を聞いた?」
「第三王子殿下の母君のご実家が、虫害で没落すると…。」
「キーラ。その話は、他の誰にもしてはいけない。」
お父様が情報網を駆使して独自に調べた結果。
高確率で数年内に虫害が起こり得ると判断し、王家にも情報を共有した。
そのため、王家でも専門家を集めるなど、迅速な対応を取ることが出来たので、虫害は発生したものの、想定内の被害に抑えることができた。
もちろん、侯爵家は没落していない。
これにより、エイミー嬢の情報の貴重さが分かったが、なにぶん本人がその重要性を理解していない。
そのため、ペラペラと簡単に話してしまう懸念があり、その点についてお父様は国王陛下に相談なさったらしい。
その結果、情報を垂れ流すのなら、場所を絞ってしまえばいい!
ということで、エイミー嬢から情報を聞き出す役割は私がすることになったのだ。
その後も、
『宰相様の奥様と娘さんが、馬車の事故で亡くなる』
『騎士団長様が遠征中に刺客に襲われて、二度と剣を握れなくなる』
『商家を営む子爵家が、美術品詐欺にあって多額の賠償金に苦しむ。』
などなど、攻略対象に絡むことや、その他の細かいものを合わせるとかなりの数になった。
本人はゲームのストーリーだとしか思っておらず、その先にいる人の苦しみや悲しみはみていない。
一度、エイミー嬢に聞いてみたことがある。
「攻略対象の方々の家が大変な目に遭うことが分かっているのなら、どうして助けて差し上げないのですか?」
「え?だって助けたらストーリーが変わっちゃうじゃない!それに過去に翳があるからこそ、キャラクターとして魅力的なんだもの!」
と、エイミー嬢は満面の笑みで答えた。
そのエイミー嬢の答えに『あぁ…彼女は現実を生きていないのね』と理解した。
周囲の人をゲームのキャラクターとしか認識しておらず、そこに痛みや苦しみ、悲しみがあるのは、キャラクターとして必要なことだから仕方ない、そう考えているのだろう。
なんという傲慢な考えか…。
もちろん、その運命を変えることで国や世界が滅ぶというのなら、変えないことも必要なのかもしれない。
でも、宰相様の奥様と娘さんが馬車の事故に遭う出来事を止めることは違うでしょう?
宰相様は大変な愛妻家で、ご家族をとても大事にされていると聞くわ。
そんな方が奥様と娘さんを一度に亡くしてしまうことが、どれほどの悲しみとなるか…。
それがご子息にも深い影響を与えることなど、考えなくても分かること。
それを、『過去に翳があった方がキャラクターとして魅力的だから』、という個人的な趣味嗜好の為だけに無視しようと言うのなら、私が壊して差し上げますわ。
◇
私はウィンストン家の娘。
情報を扱うことに長けた一族の娘ですもの。
この情報を最大限に活用して、エイミー嬢が求める乙女ゲーム世界を破壊し尽くしますわ。
それからは、お父様にもご協力いただきながら、大小様々なトラブルを未然に防いだり、別な方向に逸らしたり…。
なかなか、忙しくも充実した毎日を送らせていただきました。
こうした活動を続ける中で、表だった活動では無かったにも関わらず、分かる家には分かってしまうもので…。
我が家の名声が想像以上に高まってしまい、あちこちから婚約の打診をいただく事態となってしまったのは誤算でした。
我が家よりも上位の貴族からの申し出も多く、段々とお断りするのも難しくなってきたため、両親とも相談して、内々に第三王子殿下と婚約をすることになった。
婚約式なども内々で行い、表向きは明かしていないものの、知るべき家にはすでに伝えられているそうだ。
これも、王家と相談して決まったことで、エイミー嬢が言う乙女ゲームの舞台が王立学園である以上、在学中は第三王子殿下の婚約者であることを伏せた方が良いだろうとの結論になったからだ。
第三王子殿下は、もともと学園卒業後に王家を離れ、臣下として独立される予定だった。
それが私との婚約により、ウィンストン伯爵家へ婿入りする形に変わっただけ。
側妃様の熱烈なお勧めがあったことは、否定しませんけれど…。
その様子を思い出して、少しだけ遠い目になってしまったわ。
さて、エイミー嬢が言う攻略対象の方々の過去の翳とやらは全部無くなったけど、彼女はどうするのかしらね?
変化を受け入れて、ゲームの世界とは違うと受け入れるならそれも良し。
もしも、それでも現実を見ないようなら、もう退場して頂いてもいいんじゃないかしら。
◇
こうして始まった学園生活。
特に何も起こっておりません。
それはそうよね。だって、前提が全く違うんですもの。
そう考えて、思わず口元を緩めてしまった。
攻略対象達に、エイミー嬢が言うような過去の翳はないし、王家や貴族家も安定している。
第一王子殿下はすでに立太子しており、結婚して王子殿下がお2人いらっしゃる状況で、次期国王としての資質も問題無い。
第二王子殿下は、甥っ子である殿下方を支える王弟公爵家を興す予定であり、王位を巡る不穏な派閥など生まれようもない。
第三王子殿下は、我が家に婿入りなさる予定ですし…ね。
他の攻略対象とされている方々も、次代を担うに相応しい貴族令息になっていると、各所から評判を聞きますわ。
貴方がおっしゃっていた『辛い過去を一緒に乗り越えることで芽生える愛情』とやらは、彼らには必要の無いものみたいですわね。
ちなみに、入学式の前にエイミー嬢が騒いでいた話からすると、
「ねえ、第三王子はどこにいるの? このあと私とぶつかるはずなのよ!」
「殿下でしたら、先ほどご友人方と講堂へ向かわれましたわよ。」
「なんで!?ここで私のハンカチを拾うイベントなのに!」
(なるほど…。手に持っているハンカチを、わざと落とす予定でしたのね)
というイベントだったみたい。
その後も、様々な場所に積極的に赴いては、「なんで?場所が違う?時間が違う?」と1人で大騒ぎしておりました。
そして、とうとうやってしまったのです。
第三王子殿下は護衛のガードが固くて近づけなかったのか、次に身分の高い宰相子息に狙いを定めたらしい。
ある日、同じクラスのメンバーが集まって交流しているテーブルに、エイミー嬢が無遠慮に近づいてきた。
そして、宰相子息にいきなり話しかけたのだ。
まるで、ゲームでキャラクターを攻略するように…。
「あなた、お母様を亡くして寂しいんでしょう?」
「…何のことでしょうか?」
「隠さなくてもいいのよ。お母様を亡くして寂しい気持ちは、恥ずかしいものじゃない。他の人が笑ったって、私は笑ったりしないわ!」
いやいやいや、初対面の相手にいきなりその会話って、あり得ないでしょう。
思わず、頭を抱えたくなりましたわ。
彼女から聞いた話では、ゲームの中でだって出会いイベント(ぶつかるとか、落とし物を拾うとからしい)をこなして、面識が出来てから、少しずつ話をして…って流れだったはずよ。
明らかに、色々とすっ飛ばしている…。
彼女のこれまでの思考的に、少しくらいイベントを飛ばしても、重要な会話シーンさえこなせば大丈夫!とか思ってそうね。
それにしても、下手なお芝居を見ている様な気恥ずかしさを感じるわね…。
心がこもってないし、自分の言葉ですら無いから、薄っぺらく感じて仕方ない。
まだ学生とは言え、このクラスは上位貴族が集まるクラスよ。
貴族として、相手の裏を読んだりすることは必須の技能なのだから、当然彼女の薄っぺらさには全員が気付いている。
一見にこやかにされているみなさんの目が、とても冷え冷えとしているのに気付かないなんて、ある意味大物だわ。
「母は今朝も、父と仲良くしておりましたが?」
「……はぁ!?」
まあ、やっぱりあの噂は本当だったのね!
奥様溺愛話が生で聞けて嬉しいわ、と、思わず声を弾ませてしまった。
「まあ、宰相様が奥様を溺愛してらっしゃるというのは本当でしたのね!いつまでも仲良しなのはうらやましいですわ。」
「ええ。子供達の前でも平気でイチャイチャしますよ。仲が良いことは悪いことではありませんが、年頃の息子としてはもう少し遠慮して欲しいものです。」
そう言って、宰相子息は呆れた様子で肩をすくめた。
呆れた様子をみせながらも、両親の仲が良いこと自体は嬉しいのだろうか、表情は柔らかかった。
クラスメイトも微笑ましいという様子で見ていたが、またもや彼女が爆弾発言をする。
「そんな訳ないじゃない!馬車の事故でお母さんと妹さんが死んじゃったんだから!!」
この発言には、流石に皆さん不快な気持ちを隠さず、エイミー嬢に向けています。
当然ですよね。
仲良しで羨ましいって話をしている時に「その人死んでるじゃない!」って言われたら、嫌な気持ちになるし、それが家族なら許せません。
「いいえ。そんな事実は一切ございませんよ。母も妹も元気です。貴方はどれだけ我が家を愚弄すれば気が済むのか。カワード子爵家には厳重に抗議をさせて貰います。」
他のクラスメイト達からも一斉に冷たい視線を向けられて、流石に自分の旗色が悪いことが分かったのか、慌てて去って行った。
その後、一時は大人しくなったかに見えたエイミー嬢でしたが、少し経つと都合良く忘れてしまうのか、別な攻略対象に突撃するようになった。
でも結局は、彼女の思惑とは異なり、
宰相子息は母と妹を失っておらず、家族仲が良い。
騎士団長子息は父を尊敬していて、騎士団長も健在。
商家を営む子爵家の子息は詐欺被害を回避し、むしろ商才を伸ばしている。
第三王子は後ろ盾を失っておらず、側妃実家も健在。
これらの事実を順に確認しただけだった。
その間にも、生徒からの苦情を受けた学園側から、何度か注意を受けていたようですが、彼女が態度を改めることはありませんでした。
終いには、私の所に突撃してきて、
「キーラ!おかしいの!イベントが全然起きないのよ!」
「そうですか。」
「そうですかじゃないわよ!あなたサポートキャラでしょ!?攻略対象の好感度くらい教えなさいよ!」
「私がですか?」
「早く!第三王子の好感度は?騎士団長子息は?宰相子息は?」
「存じませんわ。」
「ちゃんとしなさいよ!あんたサポートキャラなんだから!!」
「エイミー嬢。私はウィンストン伯爵家の娘です。」
それ以上でも、それ以下でもない。
「サポートキャラ? 致しませんわ。」
結局、突撃された攻略対象の家からカワード子爵家に抗議が入ると共に、学園にも抗議が入ったことが決め手となり、エイミー嬢は学園を退学となった。
この国では、『学園を卒業できない者は貴族として認められない』ので、彼女と顔を合わせることはもう無いのだろうと思う。
こうして、乙女ゲームは始まる前に終わった。
もっとも…。
私にとっては、最初からただの現実だったのだけれど。
※カワード子爵家について少し補足です。
カワード子爵は、エイミーの言動をただ放置していたわけではありません。
当初は何とか矯正しようとしていましたが、彼女の語る内容が実際の出来事と結びつき始めたことで、王家・ウィンストン家・カワード子爵家の間で内々に話し合いが行われています。
その結果、彼女の知識によって救える命や防げる被害がある以上、あえて情報の流れをキーラの元に集める形となりました。
カワード子爵家にとっても、可愛い一人娘でしたので苦渋の判断です。
しかし、エイミーの「助けたらストーリーが変わっちゃうじゃない」などの発言に、自分たちの娘だからこそ失望も深かった事と思います。
エイミー自身は自業自得ではありますが、カワード子爵家については事情を汲んだ対応が取られる予定です。
思ったより、感想でカワード子爵家を気に掛けて下さった方が多くてびっくりしました。
敢えて深くは触れなかった部分でしたので、少しだけ補足させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




