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言霊の継承者  作者: freewifi
第一章
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プロローグ

「俺たち、別れよう」


 ──その一言で、世界が止まった気がした。


「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなり何の冗談?」


「冗談じゃない。本気だ」


 どうして?


 私、何かしたかな?


 胸の奥がざわつく。


「お前、急に何言ってんだよ。こいつがどれだけお前のこと想ってるのか、分かってんだろ!」


 隣にいる友達が声を荒げる。


 違う。それが聞きたいんじゃない。


 私はただ──。


「……俺の人格を勝手に変えて、嘘を重ねて」


 今までに聞いたことがないくらい低く、冷たい声だった。


「それで続けてきた"友達ごっこ"は楽しかったか?」


 ──ああ。


 ばれてる。


 全部、ばれてる。


「違うの!あの時は、そうしないとあなたが──」


 言葉が震える。


「死んでしまいそうだったから……!」


 沈黙。


 それが、何よりも怖かった。


「……なら、どうして言わなかった」


 静かすぎる声だった。


「どうして、ずっと黙ってた」


「それは……ただ、言うタイミングがなくて……」


 言い訳だって分かっている。


 でも、他の言葉が見つからない。


「……そうか」


 彼は、小さく息を吐く。


「俺はこの後やることがある。もう行く」


 彼は私たちに背を向けた。


 まだ歩き出していないのに、それだけで遠くにいるように見えた。


「待って……」


 声がうまく出ない。


「行かないで……!」


 やっと絞り出した声は、情けないほど弱かった。


 私の人生の生きがいの彼。


 彼がいなくなったら──


 私は、どうやった生きていけばいいの?


 その時、友達が彼の前に立ちふさがった。


「行かせるかよ!あいつの気持ち、考えたことあんのか!」


「どけ」


 感情のない声。


 まるで、知らない人みたいで。


「お前……!」


 パチン、と乾いた音が響く。


「どうしてこんなことするの。あの子が今どんな気持ちかわからないの?」


「何度も言わすな。どけ」


 空気が、わずかに歪んだ気がした。


「助けてもらった恩はあるから今なら手は出さない。気が変わる前に、どけ」


 嫌でも分かってしまう。


 彼は止まらない。


 私たちの知っている彼じゃない。


 次の瞬間、彼の姿が消えた。


 ──違う。気づいた時には、もう二人の後ろにいた。


「じゃあな」


 振り返らないまま、言う。


「もう二度と、俺たちが交わることはない」


 いやだ。


 いやだ、いやだ、いやだ──


「行かないで!!」


 叫ぶ。


 彼は一瞬だけ、ほんの一瞬だけこちらを見て。


 何かを言いかけて──やめた。


 そして、そのまま歩き去っていった。




 それからの記憶は、ほとんどない。


 泣いていた気がする。でも、それすら思い出せない。


 もし、やり直せるなら。


 私は、どうしたらよかったの。


 これからどう生きていったらいいのだろう。


 その日、私の心は――壊れた。

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