⭕ 式神ゲット
獅聖幻夢さんに案内された場所は開放的な屋外だった。
学校の運動場くらい広い場所には、2体の “ 何か ” が立っている。
「 あの……獅聖幻夢さん…………アレは何ですか?? 」
「 私が用意した特級呪靈です。使役した光を式神にする為に使う依り代です。簡単に倒されてしまっては式神にした意味が無いでしょう? 私の方で丈夫で頑丈な依り代を用意しました 」
「 それは…態々有り難う御座います…… 」
「 先ずは逝虎さんの中へ入った光を取り出しましょう。呪怨霊さんの出番ですよ 」
「 怨君に出来るんですか? 」
「 彼にしか出来ない事ですから 」
「( 怨君…… )」
〔 やれば良いんだろ。任せろ 〕
怨君は私の身体の中に両手を入れると、両手を引く。
怨君の両手には光が握られている。
「 夢で見た光── 」
〔 これで良いんだろ 〕
「 逝虎さん、光を使役してみましょう 」
「 使役と言っても…やり方が分からないんですけど…… 」
「 簡単だと言いましたよ。お膳立ては私がしました。名前を付けてください。名を与える事で自我が芽生えます 」
「 名前?? えぇと…………私、ネーミングセンスが無いのに…… 」
〔 魂霙,憐霙で良いだろ 〕
「( 考えるの早っ! 魂霙,憐霙に意味とか有るの? )」
〔 有る訳ないだろ。ポチとタマでも良いんだぜ 〕
「( それは流石に無いでしょ…… )
霙麒と惠麟にしようかな 」
〔 俺が考えた名前は却下するのか? 〕
「( 私が考えて付けないと意味無いんでしょ? )」
「 名前は決まった様ですね。光に触れながら名前を呼んであげてください 」
「 分かりました 」
半信半疑感が拭えないけど、獅聖幻夢さんに教えてもらった通り、光に触れながら名前を呼んだ。
光の色が強くなった気がする。
2つの光は宙をふよふよと浮きながら獅聖幻夢さんが用意してくれた依り代に入った。
「 麼白、呪怨霊さんと仕上げを 」
「 分かった。呪怨霊、此方に来る 」
「( あの子にも怨君の姿が見えてるみたいね )」
〔 行って来る 〕
怨君は依り代の傍へ移動する。
私の位置からじゃ、怨君が何をしてるのか分からない。
だけど、興奮しているのは分かるかな。
“ 仕上げ ” ってのが終わると、依り代の姿が変わった。
見覚えの有る男の子と女の子の容姿で…………私より若くして亡くなった双子の弟妹の姿だ──。
でも髪の色と瞳の色が違う。
「 逝虎さん、貴女を主人として慕う式神です。今は人の姿をしていますけど、能力を解放すれば、本来の姿へ転身が出来ます 」
「 本来の姿…ですか? 」
「 生前2人が使役していた式神の姿です。相手を眠らせる能力を操る未と水を操りダメージを与える能力を持つ巳です 」
「 未と巳…ですか…… 」
「 頼りになる心強い助っ人です。普段は呪怨霊さんの≪ 異界 ≫で過ごしますよ 」
「 怨君の≪ 異界 ≫ですか? 分かりました… 」
「 さて、槌鳳霙逝虎さん。これで貴女も式神を得る事が出来ました。これを機に以前の学校へ戻る事が出来ますね。呪怨霊さんは相変わらず逝虎さんにしか見えず、声も聞こえないでしょう。然し、2体の式神は違います。逝虎さん以外にも見え、会話も出来ます。本家の槌鳳霙家は、式神を得た逝虎さんを見逃さないでしょう 」
「 確かに…そうですよね……。本家が狙っていた弟妹は亡くなってしまいましたけど、私は元気に生きていますし……。失った式神とは違う式神を2体も使役してるなんて事が本家に知れたら── 」
〔 ユコちゃん……本家の奴等を纏めて呪殺しても良いんだぜ! 時間は掛かるが、出来なくはねぇし── 〕
「( 怨君…… )」
「 平穏に過ごしたいなら、下剋上するしかないでしょうね。逝虎さんが本家を乗っ取り、槌鳳霙家の当主になれば良いのです 」
「 えっ!? 私が槌鳳霙家の当主!? そんなの無理ですよ! 私、高校生なのに…… 」
「 では、こうしましょう。高校を卒業する迄は普通の高校生として楽しく過ごすのです。高校を卒業した後は、本家から当主の座を奪うのです。本家は自分達の地位を脅かす存在となる可能性を秘めていた逝虎さんの弟妹を亡き者にしました。逝虎さんは本家に報復する資格と権利が有ります。大切な弟妹の命を身勝手な理由で奪った本家に対して敵討ちしましょう 」
「 敵討ち…… 」
「 私も微力ながら協力しましょう。私も彼等にはキツい御灸を据えなければならないと思っています。私が居れば千人力ですよ 」
〔 自分で言うのかよ…… 〕
「 私に協力してくれるんですか? 」
「 そうです。条件は槌鳳霙逝虎さん、貴女が槌鳳霙家本家の当主となる事です。悪い話ではないでしょう? 」
「 私が……。本家に喧嘩を売って、本家を潰して……分家の末端の小娘の私が……新しい当主…………なれるのかな? 」
〔 なれるって! 俺が憑いてるんだぜ★ それに霙麒と惠麟も居るからな! 〕
「( 頼もしいわ…… )」
「 連絡先の交換をしましょう。スマホを出してくれますか 」
「 あ…はい 」
鞄の中からスマホを取り出すと、獅聖幻夢さんと連絡先を交換した。
「 逝虎さんの安全を1番に考えましょう。先ずは実家を出てください。学校へは此処から通いましょう 」
「 此処から…ですか? 」
「 そうです。逝虎さんの行動は本家に監視されています。此処から学校へ通えば、監視を撒けます 」
「 で…でも、迷惑なんじゃ……。それに── 」
〔 良いんじゃねぇの? 本家ですら手を出さねぇ家だぜ。最高の避難場所じゃねぇか 〕
「( でも……越して来た一家が亡くなってる家だよ! )」
「 逝虎さん、念話で話さなくても大丈夫ですよ 」
「 あ…はい…… 」
〔 ユコちゃんには俺が憑いてるんだぜ。死んだりしねぇよ 〕
「 家に憑いている呪霊の心配をしているんですね。大丈夫ですよ。逝虎さんに憑いている呪怨霊さんの方が強いですからね。それに家には麼白も居ます。式神も居ますから、逝虎さんが呪霊に襲われる事は無いです 」
「 麼白の方が強い。麼白が居るから安心 」
〔 ユコちゃん、偶には冒険しようゼ! 〕
「 分かりました。暫くは此処で暮らす事にします! 」
「 では引っ越しの準備をしましょう。逝虎さん、家へ案内してください 」
「 あ…はい…… 」
何かとんでもない事になっちゃったかも知れない。
◎ 訂正しました。
意味が無いでしょう?私の方で ─→ 意味が無いでしょう? 私の方で