⭕ 怪談、再び?
4名の男子生徒と槌鳳霙逝虎を《 カラオケ店 》に在る3階の[ カラオケルーム ]へ残し、《 カラオケ店 》を出た3名の女子生徒──。
井夫間智恵理,戸髙萠果,谷岡陽世美は、バス停を目指して歩いていた。
楽しそうに話しながら前を歩いている御機嫌な友人──井夫間智恵理,戸髙萠果の後ろを歩いている谷岡陽世美の身体は小刻みに震えていた。
[ カラオケルーム ]のドアから出る時、槌鳳霙逝虎に腕を掴まれたからだ。
槌鳳霙逝虎は “ 明らか ” に自分達が去った後で “ 何が起こるのか ” に対して “ 勘付いていた ” と思うと無償に身体が震えて仕方が無かった。
まるで自分が “ 悪い事をした ” みたいに罪悪感に襲われ、呑み込まれてしまいそうに感じてしまう。
自分は何も悪い事をしていないと言うのに──。
私だって被害者なのに──、まるで槌鳳霙逝虎に責められている様な気持ちになっていた。
どうすれば良かったのか──。
あの場で、槌鳳霙逝虎に対して何をしたら、正解だったのか──。
どのみち槌鳳霙逝虎の事は残して[ カラオケルーム ]から出て行かなければならなかったのだから──。
残して[ カラオケルーム ]から出るのは仕方無かったのっ!!!!
谷岡陽世美は頭を左右にブンブンと振り、脳裏に浮かぶ槌鳳霙逝虎の顔を振り払おうとした。
ふいに頭の上に “ 何か ” が当たり、足元に落ちて来た。
「 ──ひっ!? 」
てるてる坊主だ。
首に黒リボンを巻かれている “ てるてる坊主 ” だった。
てるてる坊主の白い体には赤い血──の様なモノが付いている。
「 ………………いやっ…………何で── 」
思わず空を見上げた谷岡陽世美の脳裏には、さっきまで浮かんでいた槌鳳霙逝虎の顔は消えていた。
今は上から落ちて来た血の付いた “ てるてる坊主 ” の事で頭の中は埋め尽くされていた。
地面に落ちてたままの “ てるてる坊主 ” を前にして止まっていると──、前を歩いていた井夫間智恵理,戸髙萠果も同様に短い悲鳴を上げていた。
井夫間智恵理,戸髙萠果へ目をやると、2人の足元にも同じ “ てるてる坊主 ” が落ちている。
何で “ てるてる坊主 ” が空から──??
それも3つだけ……。
バス停でバス待ちしている時に話していた怪談── “ てるてる少女 ” の中に出て来る “ てるてる坊主 ” と似ている──。
てるてる坊主を貰った相手は1週間以内に──。
「 い……いや…………何で…………何で…………私達…………大人なのに──っ!! 」
〔 関係無いよ。
未成年は子供だもん 〕
「 な……何で……声が── 」
「 いゃああああああっっっ!!!! 」
「 誰の悪戯っ!
こんな事して、許さないんだからねっ!! 」
気の強い井夫間智恵理は、地面に落ちている “ てるてる坊主 ” を踏み付ける。
踏み付けられた “ てるてる坊主 ” から血が流れ出て来た。
てるてる坊主の何処かに血糊でも仕込まれているかの様に大量の血が地面を赤く染める。
「 ひいっ──!!
い…いゃぁぁぁぁぁ~~~!! 」
血の気の引いた顔を恐怖で歪ませた戸髙萠果は叫びながら走り出した。
まるで時機を待っていたかの様に晴れていた筈の空からポツポツと雨の粒が落ちて来る。
雨が降り始めた為、井夫間智恵理,谷岡陽世美は雨宿りをする為、屋根の有るバス停へ走った。
──*──*──*── 火曜日
──*──*──*── 教室
8人で出掛けた日は、土曜日だった。
月曜日は祝日。
火曜日は普通に学校の登校日──。
あのまま《 カラオケ店 》に居たら、学校に登校が出来ていたかも怪しい。
「( 皆勤賞が取れなくなる所だった!
怨君が居てくれたお蔭で皆勤賞への道が絶たれなくて済んだよ。
有り難ね )」
〔 どう致しまして!
俺はユコちゃんの為にしか呪詛は使わないさ★ 〕
「( 7人が[ カラオケルーム ]から解放されるのは今週の金曜日だね。
3日も経ってるし、家族から捜索願いが出されるかも知れないね )」
〔 あぁ~~それなら大丈夫かな。
呪詛で《 カラオケ店 》の認識を出来ない様にしてるからさ、あの7人は見付からねぇよ 〕
「( そんな事まで出来ちゃうの?
それだったら── “ 神隠しに遭った ” 的な感じで発見させる事は出来る? )」
〔 出来るとも!
《 カラオケ店 》で発見される──ってのは止めて、県外の《 キャンプ場 》で見付かる様にしてみるか?
発見先が県外なら、ユコちゃんは無関係だって警察も判断するかもな 〕
「( それは有り難いかも。
“ 水も滴る ” じゃないけど、水難に遭った様に見せ掛けれる? )」
〔 楽勝さ!
7人の傍に “ てるてる坊主 ” を置いてやったぞ。
そうそう、ユコちゃんを置いて先に帰った3人の女子生徒は──始末しといたからな 〕
「( 始末って?
まさか、殺してないよね! )」
〔 殺っちゃったに決まってるだろ。
1人は団地の中庭に在る水場!
1人は河原の叢!
1人は小学校のプールサイド!
死体の口の中にも “ てるてる坊主 ” を入れといたから、学校の怪談が広がるかもな 〕
「( ………………何で今回は殺しちゃうかな…… )」
〔 俺のユコちゃんを騙したからに決まってるだろ。
それに、彼奴等は[ カラオケルーム ]に残したユコちゃんがどうなるのかを知ってたんだぞ!
知ってる上でユコちゃんを残して帰ったんだ。
確信犯は許せねぇだろ!
本当なら生きたまま怪異に喰わせてやりたかったんだ 〕
「( はぁ…………。
まぁ…殺っちゃったのは仕方無いけど……。
土曜日に一緒に行動してたから、警察に呼ばれて事情聴取されちゃうのは避けられないね…… )」
〔 ユコちゃんは7人と《 カラオケ店 》に入った後、先に1人で帰った事にすれば良いさ。
[ カラオケルーム ]に設置されてた隠しカメラは、再生をしても何も映って無いしな 〕
「( 隠しカメラにも呪詛で細工をしたの? )」
〔 怪異って存在は人間の目には見えないもんだからな。
虹や蜃気楼と違って、一般的なカメラには映り込まねぇもんなのさ 〕
「( そういうモノなの? )」
〔 オカルト番組を見てても、心霊番組を見てても、妖怪が写ってる写真なんて1度も出た事ないだろ。
妖怪が写ってる写真が有ったら、1000%作りモノさ 〕
「( 言われて見れば……UMAの写真や映像は時々出てるけど──、妖怪が写ってる写真や映像は見ないよね。
不思議だよね…… )」
〔 未知が有るから世の中ってのは面白いんだぜ。
仮に怪異が写真に写ったとしても、昔じゃないんだから珍しがられる事も無いって。
現代は何かとCGやら合成やら加工が簡単に出来て、素人にも手軽に作れちまえるんだからさ★
偽物呼ばわりされて笑われるのがオチだな 〕
「( そうかもね )」
私のクラスには空いてる席が4つ有る。
私を入れた5人は同じクラスのクラスメイトだったけど、残りの3人は他のクラスの男子だったみたい。
どうりで見た事の無い顔だと思った。
4人も揃って欠席をしているから、クラスメイトもザワついている。
スクールカースト1位の井夫間さん,取り巻きの戸髙さん,谷岡さんの3人が仲良く欠席してるんだから、当然かも知れない。
ご丁寧にも怨君ったら、3人の机の上に黒リボンで結んだ白キクに “ てるてる坊主 ” を付けて置いてるんだもん。
そりゃザワつきもするよね。
因みに細江君の机の上には何も置かれてなかったりする。
写メってるクラスメイトが何人も居るのには笑っちゃうかな──。
──*──*──*── 放課後
学校の校門を出るとスーツを着ている刑事らしき人がパトカーの前に立って居て “ 誰か ” を探していた。
誰か──は、私かな?
◎ 訂正しました。
腕を掴まれた。─→ 腕を掴まれたからだ。
立って ─→ 立って居て