✒ 学校の怪談
──*──*──*── バス停
「 わぁ…………晴れてたのに降ってきやがったな…… 」
「 唯の通り雨だろ。
直ぐ止むさ 」
「 “ 狐の嫁入り ” って言うんだろ? 」
「 おぃおぃ、動物園で見世物になってる狐が降らせる──なんて言うなよ? 」
「 言わないって 」
「 本当に狐が嫁入りしてたのかしらね? 」
「 えぇ~~。
それってぇ~~、山の在るド田舎の話でしょう~~ 」
「 雨って言えばさ、水に纏わる七不思議が有ったよね 」
「 おっ、懐かしいヤツだな 」
「 他の小学校には無いんだっけな 」
「 そうそう──。
うちの学校だけの七不思議の怪談なんだよねぇ~~ 」
「 槌鳳霙さんは、途中から転校して来たから知らないかな? 」
「 聞いた事は有るよ。
“ 傘を差す少女 ” でしょ? 」
「 はっずれぇ~~。
正解は “ てるてる少女 ” よ 」
「 “ てるてる坊主 ” じゃなくて? 」
「 女の子だよ。
晴れた日にね、校庭の真ん中にひょっこり現れるて、佇んでるの 」
「 そうそう!
真っ昼間から真っ黒い傘を差してね! 」
「 それも決まって授業中にね!
校庭に日傘を差してる生徒が居るって事で、担任教師に伝えても大人の先生達には見えないみたいでさ── 」
「 確か──、その黒傘っ子を見た生徒達── 認識したっての? ──の机の中にさ、てるてる坊主が入れられてるんだよな! 」
「 そうそう、決まって翌日にな!
登校して、[ 教室 ]に入って椅子を引くとさ、コロン──って落ちるんだ 」
「 翌日って決まって雨が降ってるんだよね 」
「 そうなの!
あっ、その “ てるてる坊主 ” ってのは普通の “ てるてる坊主 ” 何だけど、首に黒いリボンが結ばれててね──、白い筈の “ てるてる坊主 ” に血が付いてるの! 」
「 そんなのがよ、机の中から出て来たら、気味悪いよなぁ~~ 」
「 担任教師は “ 誰かの悪質な悪戯だ ” って事で、てるてる坊主を回収してさ、ゴミと一緒に焼却炉で燃やした──って話さ 」
「 でもね──、てるてる坊主が机から出て来た生徒達が、1週間以内に事故に遭って大怪我するんだよねぇ 」
「 うんうん。
流石に死んだ生徒は居なかったけど、入院した生徒は居たみたいよね 」
「 皆、水に関する事故に遭ってて── 」
「 ふぅん…………怖いね。
そんな事が起こる様な学校だったんだ? 」
「 まぁね?
5年生か6年生の頃に流行ってたよね~~ 」
「 そうそう。
槌鳳霙さんが転校して来る前だったかな? 」
「 あれは……6年の夏休み前だろ。
5月とか6月の時期でさ──、梅雨じゃなかったかな? 」
「 あぁ……それなら私が転校して来た後かも。
私は5月の中旬に転校して来たから── 」
「 そっかぁ~~。
じゃあ、5年前だね 」
「 今でも晴れてる日の校庭に出てんのかな~~。
“ てるてる少女 ” はさ── 」
「 子供だけに見える怪談みたいだから、高校生になったアタシ等にはさ、もう見えないかもね! 」
「 そうだよね!
うち等、大人だもんね! 」
「 あっ、バスが来た。
皆、乗るよぉ~~ 」
バス停に停車したバスに乗車する。
──*──*──*── バスの中
私の隣には、映画館で隣同士だった男子が座った。
そっか──、“ てるてる少女 ” って言われてたんだ……。
“ 黒傘っ子 ” の方がピンと来るかも──。
実は、その怪談を作ったのは誰でもない怨君なんだよね。
転校したての私はクラスに馴染めず、女子のリーダー的な子から嫌がらせを受ける事になった。
理由は単純で──、クラスで人気者だった男子に何かと声を掛けられていたから。
相手の男子は班長だったから、班員になった私に親切で声を掛けてくれていたんだと思う。
副班長だった女子も何かと親切にしてくれてたからね。
班が違う女子のリーダー的な子は、私に親切にしてくれていた男子の事が好きだったみたいで──、気に入らなかったんだろうね。
色んな嫌がらせをされたけど、私には怨君が憑てくれたから平気だった。
というか、毎回怨君を宥める方が大変だったもんだから、完全にリーダー的な女子の存在を無視する形になっていたんだよね。
それが悪かったのか──、相手の子は懲りずに私に悪質な嫌がらせはエスカレートした。
大人しく傍観してれば良かったのに、止めに入った副班長が、私の代わりに怪我をして入院する事態になってしまった。
これには流石の私も頭に来ちゃったんだよね。
だから、怨君に「 皆が大好きな学校の怪談を利用して懲らしめて! 」って頼んだ。
そしたら、7人が話して聞かせてくれた様な感じになって、私に嫌がらせをして楽しんでいたクラスメイト達を一掃する事が出来た。
傘を差す少女を晴れてる校庭に仕込んだのも、てるてる坊主を作って机の中に仕込んだのも、1週間以内に水難事故に遭わせて懲らしめたのも、全部怨君がプロディースしてくれた。
私に嫌がらせをした子だけが狙われたんじゃ、私が首謀犯って疑われても困るから、私の机の中にも “ てるてる坊主 ” を入れたし、関係無いクラスメイトや他の教室の生徒の机の中にも “ てるてる坊主 ” を仕込んでもらったんだよね。
てるてる坊主を受け取った生徒達には1週間以内に水難に遭ってもらったけど、怪我をしない程度のモノに抑えて、本命の子達にだけ怪我をする水難に遭わせて入院させた。
これが真相で、1回こっきりしか起こしていない怪談だったりする。
バスに揺られている間に小雨は止んだみたい。
「 次のバス停で降りるよ。
準備して! 」
バス停の前で停車したバスから降車する。
バスが発車した後、井夫間さんの案内で目的地の《 カラオケ店 》へ向かった。