⭕ 不愉快なデート
俺は槌鳳霙逝虎──ユコちゃんに憑いている呪怨霊こと “ 怨君 ” だ。
ユコちゃんが使役していた2体の式神を喰らったお蔭で失っていた自我を取り戻し、生前の姿をも取り戻す事が出来た棚ぼたラッキーな呪怨霊だ。
ユコちゃんの式神は篦棒に美味かったぁぁぁぁぁぁあ~~~~♥️♥️♥️♥️
今迄にも色んな種類,属性の式神を喰らい、術師共を皆殺しにして来たけど──、ユコちゃんの式神に比べたら今迄に喰べた式神なんてカスも同然だった。
ユコちゃんの式神は明らかに他の術師共の式神より特別だった。
天に召されちまいそうな程に美味い式神を使役していたユコちゃんを殺すなんて、俺には出来なかった。
迂闊にも俺はユコちゃんに縛られてしまったからだ。
ユコちゃんの式神を喰っちまった所為で、俺はユコちゃんを殺れなくなったんだ。
俺には解けない絶対服従の縛り──。
ユコちゃんの式神は俺に溶け込んで、俺と一体化して俺の中で生き続けている。
ユコちゃんの式神の影響で、俺の姿はユコちゃんにしか見えないし、話しもユコちゃんとしか出来ない。
実体化も出来ないから、俺の声はユコちゃんにしか聞こえない。
ユコちゃんは俺に触れないけど、俺からはユコちゃんに触れるのは嬉しい誤算だ。
俺を祓えるのは、この世界で唯1人──ユコちゃんだけだ。
ユコちゃんの式神を喰べた俺に対して、ユコちゃんは “ 怨君 ” という名前を与えてくれた。
俺を祓えるのに──、俺を祓えば式神の仇を討てるのに──、ユコちゃんは俺に名前をくれて生かしてくれている。
俺を使役して、無茶振りな要求や命令をして、俺を散々苦しめて──、馬車馬の様にコキ使って、ボロ雑巾みたいに扱える権利も資格も持ってるのに、ユコちゃんは俺の存在を尊重してくれている。
友達の様に気軽に接してくれている。
人間ってのは分からない。
ユコちゃんが特別なのか──。
ユコちゃんは大事な式神を奪った俺が憎くないのか……。
何で俺に真名を与えてくれたんだ……。
唯、言える事は、ユコちゃんは俺のだって事だ。
ユコちゃんに仇なす輩は、俺が呪殺って殺るんだ。
ユコちゃんが寿命を全うしないで死んじまったら、俺も消滅してしまうからだ。
病気で命を落とすのは仕方無いが、事件や事故に遭って死ぬのは阻止しないといけない。
ユコちゃんの実家に因縁物を送り付けた不逞野郎の正体は既に掴んでいる。
どうしようもないアンポンタンな奴だが、ユコちゃんと俺を出逢わせてくれた恩人でもある。
よって死なない程度に慈悲を掛けてやっている。
俺の呪詛を全身に食らわせ、肉体をジワジワと蝕ませている。
毎晩、体内で激痛が走り、夜も眠れない程の苦しみを与えている。
ユコちゃんに出逢い、ユコちゃんの “ 怨君 ” になって、俺は劇的に優しくなったと自負している。
ユコちゃんが通っていた小学校を転校する事になった時なんかは、教育費と通学費のユコちゃんの両親の代わりに全額負担する様に呪詛を使って仕組んでやった。
苗字だけは立派だが、分家の末端に位置するユコちゃんの両親に、私立の学校に支払う金を用意するなんて事が出来ないからだ。
エスタレーター式の私立学校へ転校させるなんて、本家の奴等は腐っている。
弱い被害者の為に加害者が教育費と交通費を全額負担して支払うのは当然の責務だ。
これぐらいは大目に見てほしい。
当然の事、教育費と通学費の件に関しては、ユコちゃんに内緒だ。
バレたらユコちゃんに祓われちまうかも知れないからな!
──*──*──*── 映画館
それにしても、ユコちゃんの左隣を常にキープして、左の座席に座ってる男子生徒──、気に食わねぇ!!
スクリーンを観れば良いのに、チラチラとユコちゃんを見てやがるからだ。
ユコちゃんはスクリーンに映る映像に夢中だ。
俺のユコちゃんにタッチしやがったら、直ぐ様片腕を壊死させてやろうと思う。
空気中に遊在している清浄な霊気に穢れを混ぜ合わせ、邪気を作り出す。
邪気ってのは呪法,呪術,呪詛…等々を行う為に必要不可欠な力だ。
謂わば、自動車を動かす為に必要不可欠なガソリンと同じだ。
より強い邪気を生み出す為に、負を集め、熟成させて穢れへと変える。
清浄な霊気に穢れを混ぜ合わせ、丹念に根気良く丁寧に練り上げる事で、上質で強い邪気にする事が出来る。
生前陰陽師だった俺には、生み出した邪気を特殊な御札へ封じ、ストックさせておく事が出来る。
この邪気を封じた御札を怪異の中に入れる事で、怪異を邪悪で凶暴な存在に変貌させる事が出来、尚且つ、自在に操れる様になるんだ。
其処等辺でウロチョロしている弱っちいザコ怪異も、俺の御札を使えば忽ち、ビルを破壊させる程の力を持つ、化け物染みた脅威的な怪異に変貌させる事が出来る──って事だ。
人間の中に怪異を入れ、憑かせる事だって出来る。
怪異に身体を乗っ取られた人間はキチガイになったり、怪異に喰われて姿が化け物になったりする。
気に入らない野郎を化け物にして野放しにするのは楽しいから止められない。
ユコちゃんにバレない様に用心して事は慎重に進めている。
今回だって、何時もと同じさ★
映画を観ても面白いとは思えない内容だから、男子を見張りながら邪気を作り続ける。
片手間で上質な邪気を作れちまう俺ってば、マジ優秀過ぎて自分の才能が怖いぜ★
詰まらねぇ映画の上映が終わり、ユコちゃん一行が映画館を出る。
次は昼食をする為に《 飲食店 》へ向かうらしい。
ユコちゃんが移動する際には、姿を火の玉に変えてフードの中へinする。
フードの中で会話を盗み聞きしながら、邪気を作る。
どうやら目当ての《 飲食店 》に着いたみたいだ。
──*──*──*── 飲食店
どうやら此処は男女の若者が多く利用する《 飲食店 》らしい。
昼食は8人でするんじゃなくて、男女ペアに分かれて食べるらしい。
数合わせで参加したに過ぎないユコちゃんと一緒に昼食をする男子生徒は──、見た目が完全にチャラい金髪野郎だ。
パッキンで良いな。
店員はパッキンを見るや否や、窓側の席へ案内する。
窓側の席が嫌いなユコちゃんは、明らかに嫌そうな顔をして小さく舌打ちをした。
パッキンにの耳にはユコちゃんの舌打ちは聞こえてないみたいだ。
舌打ちをするユコちゃん──、ゾクゾクしちゃうぜぇ♥️
テーブルに置かれているメニューをパッキンが手に取る。
普通はレディーファーストってヤツで、先にユコちゃんにメニューを見せるもんじゃないのか?
パッキンは先にメニューを見ている。
ユコちゃんに思い遣りとか気遣いとか出来ねぇのか?
なんて野郎だ。
思い遣りとか気遣いも出来ねぇ分際で、ユコちゃんに馴れ馴れしく話し掛けるパッキン──。
呪殺っちゃ駄目なのか??
今時はタブレット端末機ってヤツで、メニューの注文を出来るらしい。
随分とハイテクになったと思う。
メニューの注文が終わり、うんざりする程詰まらねぇ話をパッキンが一方的にしてると、店員が料理を運んで来る。
食べてる間もパッキンは、ユコちゃんに会話を振る事もしないで、一方的に自分の自慢話を続けている。
コイツは付き合ったら駄目な野郎だ。
ユコちゃんには有害でしかない害虫野郎と認定した!!
帰宅途中、1人になったら怪異に襲わせてやろうと思う。
怪異に「 コイツは餌だ 」と判別が出来る様、首の後ろに目印になる呪紋を刻んでやった。
呪紋ってのは、人間には見えず、怪異にしか見えないモノだ。
だから、ユコちゃんにもバレないんだ。
昼食が終わり、レジで支払う為に列に並ぶが、パッキンの姿が無い。
まさか──、パッキンは自分の食べた分をユコちゃんに支払わせるつもりなのか!
付き合ってすらねぇのにふてぶてしい野郎だ!!
ユコちゃんが支払う番になった。
ユコちゃんは自分の分だけを支払い、パッキンの分はスルーした。
当然だ!
男が支払うなら兎も角、付き合ってすらねぇ女に支払わせるなんて、クズのやる事だ。
怪異の餌認定は正しかった!
3名の店員が7人とつるんで雑談してるパッキンに声を掛け、支払いを請求している。
パッキンは困った顔で店員に言い訳をしている。
ユコちゃんはパッキンの言葉に聞く耳を持たず、無関係を装い無視している。
流石、俺のユコちゃんだ。
結局、男子生徒の3人がパッキンが食べた分の金額を出し合う事になり、支払いを済ませた。
通報されて、お巡りに連行されても良かったのにな!
《 飲食店 》を出ると次に向かうのは《 カラオケ店 》だ。
今から向かう《 カラオケ店 》ってのは、どうやらクラスのスクールカースト制度1位を誇り、自称リーダーを名乗る女子生徒の知り合いが経営している《 カラオケ店 》らしい。
“ 知り合いが経営している ” ってのが、如何にも怪しくてヤバそう雰囲気を纏っている。
俺のユコちゃんに危害を加える怪しい素振りを見せたら、マイクとテレビ,机や椅子,コップや皿なんかに怪異を憑かせ、襲わせて殺ろうと思う。
おっと、“ 殺ろう ” は事件になるから御法度だった──。
邪気を封じた御札を使えば、捕まえてストックしている怪異を物体に憑かせて暴れさせる事も可能なんだゼ★
ポルターガイストやら怪奇現象なんて起こしたい放題って訳だ。
これもユコちゃんには内緒だ。
バレたら祓われちまうかも知れないからだ。
《 カラオケ店 》は離れた場所に在るらしく、バスに乗って向かうらしい。
ますます怪しいじゃないかよ!
《 バス停 》に並んでバスを待っていると小雨が降って来た。
◎ 訂正しました。
全身に食らませ、─→ 全身に食らわせ、
自分の才能が怖いぜぜ★ ─→ 自分の才能が怖いぜ★