2.若き騎士と美少女と
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「おい!そんなとこで何寝ている!」
1人の兵士に荒々しく起こされる。
何が起きているか分からず、アツシは恐る恐る目を開ける。
前には、銀色の鎧を着た兵士がギラギラと鎧を輝かせ立っている。
「うわぁっ!!」
見たことない姿の兵士に、ビックリして後退りしてしまう。
「なにを腑抜けた声を出している!それに見た事ない格好!まさか隣国の手のものか!!」
緊張感が走る。
“ジャキンッ“
いきなり剣を引き抜きアツシに構える兵士。
「ま、まま、待ってください!俺は何が何だか分かってないんですよぉ!!」
「ふざけた事を抜かすな!皆の者!剣を構えぇ!!」
強めの口調で荒々しく言ってくる兵士。
「こちらが丁寧な対応で下手に出れば、くだらん刺客を送ってきおって!やはりあの国は信用ならん!サイウス様の身に何かあれば…」
「ちょっと待ってくれって!隣国やら何やら、訳がわからないんだ!!」
必死に弁明をする。
「待て!!ルドガー!!」
その後ろから爽やかな声で話しながら近づいてくる男が一人現れる。
「剣を下げろ皆の者。」
男がそう声掛けすると
“ガキンッ“
鞘にしまう音が広がる。
「そんなに声を荒げて話すなと何回いえばわかる《ルドガー》。 そんなにいきなり言ったところで敵でないものも敵と思ってしまうではないか、相手を理解することから始めるよう父からも言われているだろう。」
現れた男は高身長の、赤と白の混色のギラギラ光る鎧を着た、長い大剣を腰に据えた俺と同い年ぐらいのイイ男が歩いて来た。
「突然の部下の無礼、代わりに詫びさせてくれ。」
そう頭を下げる男。
「私の名前は《サイウス ヘクトール4世》この地を統治しているヘクトール家の末裔であり、今は国を守るこの部隊 聖光の刃を騎士長として率いている。」
「俺の方こそすいません。本当に今の状況が僕自身わかってなくて…」
「謝ることはない。こんなに世は荒れ果ててるんだ。無理もない。」
サイウスは優しく話してくれる。
「君の名前を教えてくれないか?」
続けて話す。
「俺の名前はアツシ。こんな感じじゃない世界でトラックに跳ねられ死んだら、少女に手を引かれ、『影』?みたいな奴らに襲われてるのを必死に少女と逃げてきたらここにいたんだ。」
「影!?アツシは今影と言ったかい?」
アツシの発言に驚きを隠せない。
「サイネリアは俺にそう言っていた。黒いモヤみたいなのが付いた人間みたいな奴らだ。」
「サイネリア?それはその少女の名前かい?」
「そう彼女は言っていた。」
サイウスはアツシの言葉を聞いて、重苦しい顔で考えている。
「何が何だかわからないんだ。どこなんだここはサイウス。」
「貴様!さっきから聞いておれば、もう少し口の利き方があるだろう!」
アツシがサイウスに聞いてる途中にルドガーが割って入ってくる。
かなり怒っているが、サイウスの前だから怒りを無理矢理我慢して、手をプルプルと今にも手が出そうな勢いで振るわせている。
「良いと言ってるだろ。ルドガー!」
二度目のお叱りに、一生懸命堪えている。
困ってるアツシを見て、サイウスが心配そうに口を開く。
「名前を教えてくれてありがとう。アツシの話理解には苦しむが、すごく興味が湧いたよ。」
辺りを見回しながら話すサイウス。
「それにそのサイネリアと言う少女は、何処にいるんだい?」
大事な事に気づく。
“そう言えばサイネリアは何処だ?“
その時遠くから声が聞こえてくる。
「おぉーーい!!アツシーー!!」
先ほど聞いた高く可愛らしいこの声は…サイネリアだ。
一生懸命走ってくる。
改めてサイネリアの顔を見た。
“天使だ“
こんな状況でもサイネリアを見て少しホッとして、改めてサイネリアの美貌に、うつつを抜かす。
「サイネリアちゃんが迎えに来たくれたのかな?」
そう“ホッ“とした表情で話すサイウス。
「兄の無礼を代わりに謝らせてください、騎士長様。私の兄がご迷惑をおかけしました。少し前に影達に襲われてしまい、恐怖の為記憶を失っているが故の無礼であります。どうかお許し下さい。」
慌てて言いながら俺の頭を無理矢理押さえて二人で頭を下げる。
「襲われたと言えど、全く変わった兄弟だね君たちは。」
意味深な顔で目を合わせてくるサイウス。
「顔も似てないし身なりも全く違うのだし、何か言えない事があるのだね。こんな事で何もしてない君達を処刑するほど僕は野蛮ではないから安心してくれ。」
「ありがとうございます。」
声を合わせて二人で返事をする。
「そうゆう事なら良かった。不思議な気持ちでいっぱいだがアツシ、君の話している事は興味深い。この一件が終えて帰って来た時まだ君がいたらまた話を聞かせて欲しい物だね。」
そう言ってサイウスは帰り支度をしている。
「取り敢えず困っているなら、この道を降りて行きニヴヘルムの街に行くといい。」
「ありがとうございます。」
アツシが感謝を伝える。
「そんなに二人とも固くならなくて良いんだよ。『僕は鬼ではないんだ』」
アツシとサイネリアは肩の力が抜ける。
勝手に友達気取りになって、感謝を伝える。
「ならありがとうサイウス!」
アツシの態度に、優しく笑うサイウス。
アツシのタメ口で横にいるルドガーは沸騰したまま放置して爆発寸前のヤカンのような顔でアツシを睨みつけている。
「アツシとサイネリアちゃんと又話せる事を楽しみにしているよ。じゃ、私は仕事に戻らせてもらう事にするよ。」
サイネリアはなぜ私の名前を知ってるのだ?と不思議そうな顔をしている。
沢山の兵士に腰の大剣を振り翳し
「では向かうぞ皆の者!」
号令を掛けて歩き出す、《サイウスとホーリーブレード》一行。
サイウスの言葉で一気に打ち解けたアツシ。
「また話そうなぁ!!」
早速馴れ馴れしい挨拶をする。
「口の利き方を直せクソガキィ!!」
遠くのルドガーが大きな声で怒った声が聞こえてくるのを見守る。
久々の会話にどこか嬉しそうに笑うアツシ。
そんなアツシを見て横にいるサイネリアが
「アツシ。中々すごい根性をしてるな、国が違えば、王が違えば、即刻処刑されていたかもしれんぞ...」
クスクス笑いながら言ってくるサイネリア。
「なんでだ?」
腑抜けた顔で返すアツシに、アホか!と言わんばかりに笑っている。
サイネリアと出会って数時間で訳がわからない状況だが、既にアツシの心は少しずつ解け始めていた。
サイウスに勧めてもらった、ニヴヘルムは丘から見下ろしてもすぐ近くにあるのがわかる。
サイネリアに何が起きているかを聞きながら、ニヴヘルムに向かいだした二人。