15.死に際の契約
今日、初めてコメントを頂けました!
凄く優しい方で、嬉しい事が書いてあり、感謝ばかりです!
他に読んでくれた方も、凄く心の励みになりますので是非書いていってください!
“俺は死んだ“
渾身の一発をぶつけたが、鎧を破るのに精一杯だった。
“サイネリア、紗雪ごめん“
ようやく人生が変えれると思って全力を出したが、歯が立たなかった事に、もうダメなんだと分かっている絶望に、何よりあの二人を残して死んだ事に、悔しくて涙が溢れてくる。
それに強く生まれたあの騎士への憎悪と恨みの思い。
何故ようやく来た人生の転換点で、突然現れた騎士に終わらせてしまったのか、そして自分の非力さに対しての苛立ちの気持ちが溢れてくる。
ふと思う。
“ここが本当の死後の世界なのか?前来た所とは大違いだ“
先ほど、騎士と戦っていた聖堂とは違い、辺りはジリジリと強い炎で包まれ、古い建物が崩れ腐敗した世界が広がる、〈地獄〉の様な場所だった。
「来たな。腑抜けが。」
後ろから、声が聞こえ振り向くと、無数の千切れた天使の羽を持つ、かなりの長身の天使のような格好をした男が立っていた。
その男のオーラに呆然と立ち尽くす事しかできないアツシ。
「アホな顔をしているな。」
続けて話す。
「此処はお前の心の中だ。私の名は《快楽神ピナスだ。お前が先日、死後の世界に行った時に、お前に細工をして、今こうしてお前の心の中で話している。」
ポカーンとした顔のアツシ。
「全くもって意味がわからないが、サイネリアと出会った時には、お前はもう俺の中にいたのか?」
「私に対してお前とは、いい度胸だ。質問の内容だが、半分正解だ。それ以上は答える気はない。」
「何だか冷たいやつだな…」
「神だからな。」
淡々と話してくる、ピナス。
「よく分からないと言った顔をしているが、特にお前に説明する気などはない。ただ今、お前に死なれては困る。私にはやらなければいけない事がまだ残っている…。」
「そうは言っても心の中に居て、見れてないかもしれないが、俺は騎士に腹を貫かれて死んだはずなんだ。だから今もこうして心の中で話しているんだよ。ピナスさんよ。」
「そんなことわかっておる。心の中からでもお前同様の視点で見れておる。お前は死んでなどない。お前の心臓は貫かれたが、その傷口に私の力で支えを置いてある。だからまだ死んだわけではないが、私の力を取ればお前は正真正銘死ぬ。ただお前をここで現実世界に返せば、あの少女の能力で治す事ができ、また生きていく事ができる。」
その言葉を聞いて、『まだ終わってない事』に気づき、元気を少し取り戻すアツシ。
「あちらの世界の時間は今は止まっている。そんなお前に話がある。」
ピナスは嬉しそうに悪魔のような笑顔で話し出す。
「何だよ一体。」
『契約をしよう。』
「お前が旅を共にしている、あの少女が見ている最終的目標と、私の最終的目標は同じとこにある。だからお前に俺は“力を貸そう“お前がこの先に当たる、数多くの強敵を倒せるような力をな。」
ピナスはアツシに取引を始める。
「その力はさっきの騎士でも倒せるのか?」
アツシの質問にケラケラと笑いながらピナスは答える。
「当たり前だ。あんな雑魚、ひと殴りで吹き飛ばせるぞ!!それはまさに圧倒的強者故の快楽だぁ!!」
「そんなにお前は強いのか…。でも契約って事はお前にも何か理があるんだろ。」
ご都合的な展開に流石に怪しさを覚えるアツシ。
「その通りだ。言う気はないが、お前はただ力を使い倒せば良い。あの少女と共にな。」
まだケラケラと笑いながらヘラヘラしている。
聞いても教えてくれない事は、初見でも分かったアツシ。
ただ考えるまでもない。今はあの二人を助けるためなら、何でもする。
「覚悟は決まった顔をしているな。」
俺の顔を見て、察したように聞くピナス。
「あぁ!」
『契約成立だ。』
そう言って、右手を握手のように差し出すピナス。
「何だかよく分からないが、よろしくな!」
強く手を握り返す。
「生意気だが、そのアホさ加減と勢いの良さ、そして憎悪と醜悪な心気に入ったぞ!お前を選んで正解だった様だ!」
ピナスは悪魔の様に大きく笑顔を作り、目はどこかに飛んだ顔で嬉しそうにしている。
握手をしているお互いの手に、光と闇の矢のようなものがクロスするように刺さり、消えていく。
「ならもう返してくれるのか?」
契約が終わった途端、早々に聞く。
「あぁ!!もちろんさぁぁ!!」
ピナスが答えると、アツシは光に包まれ始める。
「この契約の内容として、〈私の存在は決して誰にも言わない事〉、〈心の世界がある事を決して誰にも言わない事〉の二つだ。破ればお前の心臓を止める。この私の力の呪いはあの少女でもどうにもできんから忘れるなよ。」
「…分かった!」
とんでもない後出しだが今はそれどころではないアツシ。
「交渉をしたまでだ。俺様はよぉ!」
「何だかわからねぇが、一様礼を言うよ。ありがとう…ピナス!これからよろしくな。俺の事も名前で呼んでくれよ!」
そんな俺を見てまだ笑い続けているピナス。
そうしてアツシはサイネリアと紗雪が待つ現実に戻る。
アツシの右手の紋章は黒い光を放っていた。
今回も読んで頂きありがとうございます!
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