出発
「よしっ! それじゃあ、出発しようか!!」
機械少女エルフィラは、精霊イオとともにパーツプリンター、パロをしたがえて、意気揚々と廃墟を後にする。パロの四本の足にタイヤ、頭部には座席が取り付けられている。パロが自分で部品を出力し、取り付けた物だ。エルフィラはイオを抱いて座席に乗り込むと、勢いよく進み始めた。
眼前に広がるのは死の荒野、しかしよく考えてみれば、仲間には生物が一人も居ないのだ。たとえ死の荒野であったとしても、水も食料も必要ない我々には、なんの問題もない。レールガンには解説データがあり、パロがそれを読み出して紙の説明書を作ってくれた。
それによると、
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名称: レールガン
エネルギーをチャージすることにより、金属の物体を発射する
金属は大きいほど威力が増すが、質量に比例して反動も大きくなる
エネルギー充填率の最大値は120%、充填率に比例して反動も大きくなる
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何も考えずに近くにあった巨大な金属のガラクタを最大出力で発射するとどうなるかは既に体験済みだ。小さめの金属はあちこちに転がっていたので、できるだけ集めて肩にかけた袋に詰めておいた。
これで何かに襲われても大丈夫だろう。もしも深刻なダメージを追ったとしても、パロがいれば新品同然になれるのだ。
「ねぇイオ、神殿にはどのくらいで到着できると思う?」
●「そうですねぇ~ この勢いだと、 だいたい~10年ほどで到着しますよっ! 」
「ストップー!!!!」 キキキキッ!! スザー!
エルフィラの声でパロが立ち止まる。
「なっ……何か、計算間違ってない?」
●「えっ? どういうことですか?」
「えっとそうそう、この世界の一日が、1分ぐらいで終わるとか、そういうの」
●「あぁ~ なるほど~ ゲームの一日って早く終わりますよねぇ~」
●「随分昔に、他の接続者様からお聞きしたことがあります」
●「色とりどりの野菜たちと一緒に宇宙船のパーツを探すゲームでは、一日があっという間だったそうです」
●「きっと面白いんだろうなぁ~」
「いやいや!そうじゃなくて」
●「あっ! ちなみにネオ・ファンタジアの時間設定や単位も現実世界と同じですっ!」
「…………」
天を仰ぐと、どこまでも無限に続きかねない仮想空間が広がっている。
イオの話によると、私の記憶を取り戻すには神殿に行くのが良いらしい。そこには接続者全員の人生経験や記憶のコピーをアーカイブ保存したものが存在し、いつでも閲覧できるそうだ。接続者は脳だけとなって生きており、適切にメンテナンスすれば永遠に生き続けることも可能だという。
接続者は時々現実世界での人生を閲覧し、自分自身が失われていない事を確認しているらしい。自分自身をすべて忘れてしまったら、それはもう別の誰かと言うことになる。仮に何かのトラブルが原因で、苦しみが無限に続く事になったとしたら。
「無限は困るなぁ……」
●「いえいえ、無限ではないですよ、空間の大きさには限界がありますので、いつかは反対側にたどり着きます」
●「お急ぎなようでしたら、こちらの方向だと3日で到着です!!」
「!!!!」
急いでイオに視線を戻し、イオの向いている方向を確認すると、もと来た方向であった。
「どういうこと?」
思わずイオを鷲掴みにして理由を問いただす。
●「ふみゅっ!! こちらはまだ未開発空間になっておりますが、進むことは可能です」
●「一旦マップのの反対側に抜けてこのように」
イオは空間にマップの映像を映し出し、思いっきり縮小表示しながら解説をしていた。
「これからは、事前に最短距離のルートを教えてね?」
引きつった笑いを浮かべながら、イオを顔の前に近づける。
●「はいっ!! わかりました!! とっても素敵な笑顔ですねっ!!」
ピカピカと点滅しながら、イオは最短ルートの先導を始めた。
空に輝く星々の中に、ひときわ明るく輝く流れ星のように見えるイオであった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
この世界のマップは無駄に広く作ってしまったようです。
できるだけ無駄なく読みやすく出来たらいいな。
次のお話は結構頑張ったので読んでみてください。