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廃墟の中

 いくらかの時間が過ぎて、随分と落ち着いてきた。特に痛みがあるわけでもなく苦しくもない。現状で解決しなければならない問題は2つ思いつく。


1.なぜ私は何も覚えていないの? 何かが壊れたから? 直すことはできる?

2.それから、これからどうするの?一体何ができるの? 足、壊れてるし……


 そういえば…何故こんな状態まで壊れてるの? なにか危険な者が居る? ここに居てはいけないんじゃ?!! なんとかしてここから出ないと!


 這いずって移動しようと体を動かすが、思っていたよりも頭が重く、前に向かって激しく転んでしまった。ガシャン!!


 キュイィン

何かが起動する音がした。その直後、視界に図形と文字が表示され始める。周囲の地形、落下物、名称などが次々と表示されてゆく。


「なっ! 何?  レーダーっぽい何か? いやいやゲームじゃん! まるっきりゲームの探索センサー表示じゃん! ……私……異世界転生したっぽいの? ……あうっ!!」


 激しい頭痛と共にある光景がフラッシュバックする。

おぼろげに映し出されたのは食事の風景?そして女性の姿が見える、ほんの一瞬の出来事であった。しばらくして痛みは消え、それ以上は何も見えることはなかった。


「私の……記憶なの? あれは一体誰? !!そうだ!!! 私人間なんだ」

「食事があったし ゲームのことだって理解できる」

「なぁんだ……やっぱりゲーム……いや……転生?」

「転生だったら私はもう人間じゃない……どうしよう、こんなところで死ぬの?」

「死ぬんじゃなくて壊れるの? 動かなくなってゴミになっちゃうの?!!」

「いやだぁ!! こんなところで終わりたくない!! 誰か私を直してぇぇぇっ!!!」


 キュイイイイィィィン!!

再び起動音が響き渡る。そして遠くから何かの反応が返ってきた。


 グオオオオオン……

音が返ってくる、何やら低くて威圧感のある声とも破壊音とも取れる不気味な音。


「!!!うぐっ! 何なに? なんなの? どうしよう、襲われたらひとたまりも無いっ!」


 あわてて口を押さえるが時すでに遅く、不気味な音は周囲を破壊する音と共にこちらに迫ってくる。必死になって這いずりながら音と反対方向に逃れようとするが、周囲に有効な遮蔽物は無く、隠れることもできない。


「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!! そうだ! 壊れたフリを!」

壊れた機械の身体なので、ガラクタとなってやり過ごせば気が付かれずに済むかもしれない。


 もはやこれしか手段は無かった。音の迫る方向を見据え、ピクリとも動かず運命に身を任せる。幸い呼吸も瞬きも必要なかったので、一見しただけでは壊れた機械にしか見えないはず。


 何かが凄まじい騒音とともに周囲の瓦礫を粉砕し、土埃をあげながら近づいてくる。あんなものに巻き込まれたらひとたまりもないだろう。しかしもはや身動きすることは出来なかった。


 そしてついに音の主が視界の中へと現れた


 ズッシイィィィン!

目の前に走って来たその巨体は、黒い煙を吐きながら立ち止まった。黒い岩塊のような体からは無数の光が放たれている。光はホール内部の空間を舐め回すように照らした後、次第に1箇所に集まり、倒れている少女型の機体を照らし出した。


 ううっ、見つかった!……でもじっとしていれば…


 ガシッ!!

何かに(つか)まれ持ち上げられた。いや、噛みつかれたのかも。なにか恐ろしい生き物が私を捕食しようとしている! でも私の体は機械なのだから、食べられるはずがない。すぐに吐き出すはずだ。食べないで食べないで!


 思考は動いても、体は動かせないままだ。無数の光源が巨大な生物の体を見えにくくしている。まぶたで光を遮り、わずかに光に照らされている巨体の足元を確認する。


 するとそこには生物というよりも、巨大な重機のような金属とパイプ類が存在した。

それらから導き出される答えは……巨大生物ではない!! 何かの機械だ!!


 兵器なのか? それとも掘削機?破砕装置? いずれにしても捕食目的ではない!  じゃあ、何をしに来た? 私はもう既に壊れている。破壊ではないはず。


 だとすれば回収? 掃除? 捨てられるのか? 破砕機にかけられて粉砕されてしまう! あるいは溶かされて金属の塊に戻されてしまう!!


「嫌だ! 嫌だ! 嫌だ!  離してっ!! 死にたくないよぉ!!」

半ばパニックになり腕を振り回して叫んだ次の瞬間、地面に落とされ叩きつけられた。


「ぐはっ!! 嫌だ! 助けて!」

再びつかまれて、空中へと移動する。

「うううっ! 離して……」

再び地面に落とされ、叩きつけられた。痛みは感じないが、部品の多くが失われてゆくのを感じる。

「あうう…… やめて…… 助けて……」

容赦なく空中へと掴み上げられる。もはや打つ手はなかった。せめて苦しまずに終われることが救いであった。


 光の隙間から牙を持つ口のような扉が開き、赤いライトに照らされた巨大機械のハラワタがあらわになる。傷だらけになり、抵抗することも出来ない少女型の機体は、ゆっくりと飲み込まれ、やがて見えなくなった……


ダークな雰囲気で物語が始まりましたが、ここまで読んでいただいてありがとうございます。

ぜひ続きを読んで頂ければありがたいです。感想やご評価が頂ければ励みになります。よろしくお願いします。

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