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俺は戻され、そして運命的な出会い

 商店街がシャター街になるにはいろいろな要因がある。人流が変化するなど。

 それもあるが後継者不足で廃業というのが一番根底にあるように思うのですが、どう思いますか!

第四話


 彼女は母なのか?


まさか、そんな事……ありえない。 この状況彼女は現実、温もりも感じる。


 彼女はまた、不思議そうにしている。だが、それ以上何も聞かなかった。

(ふー)俺は息を吸った。 (よし、確かめてみよう) 俺たちは中ぶらくり丁からぶらくり大通りを歩き始めた。 俺は平静さを装い彼女に問いかけた。

「あらためてなんだけど、立花さんの名前って?」「どの辺に住んでるの?」 彼女はホッとした感じだった。 多分、普通によくある男性の質問だったからだろう。 彼女にとっては、俺の言葉の端々に不思議な感覚を抱いていたからだろう。 

「梓、木辺に幸って書いてあずさです」

「住んでるところは東紺屋町に両親と住んでいます。職業は先程も言いましたが保育士をしています」 すると、彼女も同じように質問をしてきた。 「大野さんの名前は?」

「住んでるとこと職業は、もしや年下?」

「大野 翔太、羊に羽、太陽の太もしくは太いって書いて翔太です」 住んでるところはここから近いんだけど畑屋敷町に住んでます」 「職業は……」 俺はためらった。

「け、県庁職員です。立花さんが言ってた地域課では無いが!」 とっさに嘘をついてしまった。 それも安直に! 彼女の夢や想いを壊すまいと思ってしまった。 彼女は嬉しそうに微笑んでいた。

よくある会話ではあるが、いろいろ分かってきた。 俺だけしか知らない事、気が付かなかった事が。 俺は彼女の質問以上に答えた。 確かめたいからだ。

やはり、旧姓立花 梓……東紺屋町には祖父母が今でも住んでいる。 正美って言う女性、同級のお隣の山田さん……篠田 正美か! 

 俺にはいろいろ分かってきた。 やはり、話すべきだと思い話を切り出した。

「私の母は、私が17歳になった3年前に交通事故で亡くなりました」 彼女は突然の話に少し驚いていた。「父と俺は、当然深い悲しみに落ちました、父の名は大野 豊、母は大野……」 「あずさ!」 彼女は(えっ)って言葉を小さく発した。 そして続けた 「私と同じ名前?」「……?」 彼女は言葉を飲み込んだ。 

その時ぶらくり大通りの街路樹が風で揺れ出し、俺たち2人に風が向かってきた。  

「3年前、いや正確に言うと今から19年後の12月2日けやき大通りの交差点で自転車に乗った母が、Uターンしてきた車に跳ねられて亡くなります」

 彼女は戸惑いながら俺の顔を見上げた。

「あなたは誰!」 「もしかして私の……事!」 その時またしても風が吹き出した。


 ザザザザザザザ…………!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………!


 竜巻のような強風が、大通りを吹き抜けて行く。何度も何度も音を立てて、吹き抜ける。

 俺は彼女の前に立ち、守ろうとしていた。

 俺は異変を感じた。 (時が、戻ろうとしている) (と、言うことはやはり……)

 俺は確信してしまった。 ここは、過去である。 そして……

 彼女は、俺の母だ! それも22年前の父と出会う前のお母さん! 

(これって!) (だけど……なぜ!) 

 風が少し止んだ。 俺は彼女いや、母さんを後ろからそっと、包み込むような感じで抱きしめた。 母はビックリした様だがそのままじっとしたままで、体の力が抜けて行くのが分かった。 「逢いたかった」 母を抱きしめ顔を手で導いた。 顔を正面にし、もう一度固く強く抱きしめた。 「ずっとずっと……伝えたかった」

「お母さん!……ありがとう……」


 その後の言葉は風音にかき消された。



(……さようなら――!)


 かなりの時間、母を抱きしめていた気がする。 そして母が俺を呼んでいる。 


「翔太、どこなの―」 深い眠りのような感覚だ。

 ハッと、目が覚め我に返った。「えっ!」「母さん……?」

 辺りを見回した、目の前が鮮明になってくる、それは、見覚えのある光景。 

(俺の家の玄関!) (戻った、いや戻された!) なにやら、足音がする。 「翔太くん!」 (あっ山田さん!)

「翔太くんだけ、お父さんは!」 「今ね、警察からあなた達を探してるって連絡が………」 俺は背筋が凍った! 


 俺は過去から戻された。しかし、戻された時期が、母が亡くなる3年前であった。

「残酷すぎるだろ! こんなこと」

12月2日その日母は事故に遭った。

そして……。 やはり未来は変わらなかった。 



 平成30年12月5日午後3時過ぎ―。

 私は、和歌山県庁に足早に向かっていた。



 私は立花 梓――。


 和歌山県庁は、和歌山城の西側にあり、重厚な石畳の建物である。 中は、かなり複雑な作りをしている。 正面が本館の建物で、東には東別館西には和歌山県警本部がある。

 北には北別館があり、そこには県議会が併設されている。 道路の向かいには、県民文化会館があり、その南側に南別館がある。

 そう、大野 翔太を探しに来たのだ。

 正面左手にある、案内所に向かい「立花といいます、何課は分かりませんが職員の方で大野 翔太さんをお願いします」 案内所の女性はすぐさま答えた。 「大野 翔太ですね。連絡し、お探し致しますのでしばらくお待ち下さい」女性は、内線電話を掛けて何かを確認しているようだ。内線電話の受話器を置くと、何か戸惑う様子を見せた。

「あの~、申し訳御座いませんが、職員で大野 翔太という者は在籍しておりません」

「えっ、在籍していない」 私は少し困惑してしまった。 「どこにも居ないのですか?」「はい、総務の方にも確認致しましたが……」「どこにも!」 受付の女性は申し訳なさそうに、頭を下げた。 

私は、どうしたらと少し考えながら、ふと先日彼との会話を思い出していた。 思い当たる事を一つ一つ潰していくしかなかった。 「それでは、地域振興課に大野さんって方はおられますか?」 受付の女性も戸惑った様子で「はい、お待ちください」先程と同じ手順で連絡をし、居るとの返答が返って来た。

その場所を聞き、小走りにその場所へ向かった!

 階段を上り4階まで上った。 廊下の向こうに地域振興課の表示が見えた。 どの課も同じような扉で地域振興課の扉は二か所あった。

 私は、手前の扉の前に立ち止まった。

 扉のガラス越しから、中の様子を伺った。 

恐る恐るドアを開けて中に入り、見回したが、大野 翔太の姿は無かった。

 部屋の中には10人程の職員が黙々とパソコンと向き合い仕事をしていた。 ごちゃごちゃとした机には書類が雑に置かれている。

 私が入っても無関心な感じだ。 まあ、よくある公務員の部屋らしい光景だ。

「立花さんでしょうか?」 不意に一人の男性に声をかけられた。 温厚な感じで体格がガッチリしている、私と同世代かなって。 「はい、立花です」 「先程案内所からの連絡で大野 翔太って方を訪ねて来られたとか!」 私は、もう一度訪ねてみた。「はい、おりますでしょうか?」

「誠に申し訳ありませんが、職員で大野 翔太と言う人物は在籍しておりません、他の部署、出向先の者も当たってみたのですが該当する人物がいませんでした」 やはり、同じ回答であった。 その男性は何か意を決した感じで私に話してきた。

「立花 梓さんって篠田 正美さんのお友達ですよね?」 私は、あっけにとられた。

「はい」「やっぱりそうでしたか、私は大野 豊と申します」 私は、はっとした! 

「先日、篠田 正美さんより紹介したい女性が居るので、12月2日午後2時30分北ぶらくり丁にある19番地という喫茶店に来てくださいと言われ……」 少しためらった様子だが大野 豊さんは続けた。 「その喫茶店で紹介されるはずだったのですが、何故か行き違いになったというか、そんな感じであなたとお会いで出来なかったって、そんな感じです」 大野 豊さんは、すこし照れながら頭を掻いた。

「あっあの――!」 私は、顔がみるみる真っ赤になった。 「あの時は申し訳ありませんでした」 あの日、喫茶店に正美が飛び込んできたときの事を思い出した。 深々と頭を下げた。 本当であれば、目の前にいる

大野さんとあの場所で出会って話をしていたはずだったから。 お互い緊張している。

「あの時の彼が大野 翔太さんですか?」

 大野 豊さんは続けた。 「たしか偶然彼が同じ時間に席に座っていたとか、篠田さんに後でお聞きしました」 私は少し動揺している。 「あの後突然居なくなった、居なくなったというより、突如消えてしまったのです!」 「彼の、手掛かりといえば住んでいる場所と県庁でお勤めしているという事だけで、連絡先も聞かなかったので……」 

 大野 豊さんはうなずきながら、黙って聞いてくれた。

「彼が言っていた住所の付近で訪ねてみましたが分からず、それでここに来ました」

「何がなんだか分からず、不安ばかりが増して、誰に聞いたらいいのか!」 それを言ったとたん涙が溢れた。「うわ~」と大声で泣いてしまった。 彼には申し訳無かったが話を聞いて貰えて緊張感が無くなってしまった。 部屋の雰囲気は一変した。 先程まで無関心だった職員も、手が止まり騒然となった。 私の方に視線をむけていた。 

 しかし、大野 豊さんは私を包むような穏やかな表情を向けていた。 だけど、涙は止まらなかった。 


 それが、彼と私の運命的な出会いであった!


              ……つづく





ありがとうございます。

クライマックスへ……!

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