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第6話 リカの変貌(1/2改稿)

2度の教会遺跡探索で、すっかり忘れていた事は?

 翌日、教室で1人考えていた。


(教会の入り口の階段にチョークで書かれた警告は、ガーゴイルのことだったのか。確かに死ぬかも知れないと思った)


(あの女教師も、ガーゴイルと対峙したのだろうか? 急に性格が変わったのは教会を訪れた事と関係があるのかな?)


(京子やリカの性格が悪くなったら嫌だな)


 

 そんな事を考えているとき、クラスメイトから俺と京子に声をかけられた。


「お前たち、教頭先生が呼んでいるぞ。今すぐ来いって」


「!!!」


 やばい。博物館に忍び込んだ事がバレたのか?


 俺と京子は急いで教頭先生の部屋へ向かった。


◇◇◇


 この学校の校長はアンドロイド(AI)だ。そのため、人間で最高の地位は教頭先生となる。アンドロイド(AI)に執務室は不要のため、教頭室がこの学校で最も贅沢な部屋となる。


 ドアをノックし、教頭室に入った時、机の上に置いてあるものに目が留まった。


「君たち、これが何か判るな?」


 教頭先生が言った。それは、音と光がでる箱で、京子がリカを驚かすために博物館に仕掛けておいたものだ。遺跡の発見で気が動転して、博物館から回収するのをすっかり忘れていた。


「し、知りません。初めて見る物です」


 京子が白々しく言う。もちろん、京子のことだから、装置をしらべても足が付くようなことはない筈だ。


「お前らがどれだけ優秀でも、隠し事はできないんだよ。なぜなら、この装置を見た瞬間、お前らの顔には、『マ・ズ・イ』とはっきり書いてあったからな」


挿絵(By みてみん)



 思わず、俺たちはお互いの顔を見合ってしまった。その仕草こそ、自分たちが犯人だと自白しているようなものだ。


「教頭先生、嘘をついてすいませんでした」


 京子が観念して謝罪した。


「この装置を調べたところ、だいたいの使い道は判った。誰かを驚かすつもりだったのだろう。都市伝説の噂は耳にしたことがあるからな」


 教頭先生はすべてお見通しである。


「こういったイタズラは、騙すほうは面白半分だが、騙されるほうは思いのほか傷つくものだ」


「これで騙した相手に、いますぐ謝罪しなさい。心から謝って、許してもらう事だ」


 この装置を使うことは無かったのだが、遺跡探索の事は隠しておきたかったので、俺たちは黙って教頭先生の言う事を聞いていた。


「教頭先生のおっしゃる通りです。俺たちが騙した相手に、直ぐに謝罪します」


「学校の施設に勝手に忍び込んで、申し訳ございませんでした」


 京子が深々と頭を下げて、教頭先生に謝罪した。


「では、向こう3か月間、お前らは博物館の掃除係をやれ。もう、誰かを脅かしたりするんじゃないぞ」


 そう言われ、俺たちは教頭室を後にした。


◇◇◇


「軽い罰で済んで良かったね」


 京子はほっとした表情で言う。


 でも、俺たちは重大な事に気が付いた。それは、リカを騙して連れて行ったことだ。


 装置は使わなかったが、結果的にリカに嘘をついて連れて行ったのだから。そして、その嘘について、未だに本当の事を話していなかった。


「そうか、二度目の探検の時、リカが付いて行くと言ったのは、恋の魔法のことをまだ信じていたんだ。だから、恐怖を押し切って俺たちに付いて来たのか」


「マズイわね。これは、本当に心から謝らないといけないね」


 俺たちは、急いでリカを探したのだが、姿が見当たらない。



 教室に戻ると、いつもリカに付きまとっていた男子たちが床に倒れていた。


「お前たち、どうしたんだ?」


 駆け寄って彼らを起こす。


「いや、何でもないんだ。気にしないでくれ」


 見るからに酷い目に逢った男子達だが、まるで加害者を庇うような返答だった。


「...リカよ。リカの仕業よ。まったく、ひどいわね」


 近くにいた女子が、小声で教えてくれた。


 あのオットリとしたリカが人に暴力を振るうなんて、考えられない。


 俺は、酷い目に逢っていた男子達を問いただした。すると、渋々経緯を語ってくれた。


◇◇◇


 リカが教室に戻ると、いつものように数人の男子が近寄ってきてリカに話しかけた。


「リカさん、今日も綺麗ですね。俺たちに何か出来ることがあれば、何でも言ってください」


 すると、リカは


「おまえたち、いつもうっとおしいのよ。ブチのめされたいの」


 いつもリカの発言とは思えない乱暴な口調に、男子たちはリカが悪ふざけをしていると思ったらしい。そこで男子たちは、


「はい、リカさんが望むなら、ブチノメシテクダサイ!」


 男子たちがそう言うと、リカは遠慮なく男子たちを魔法で完膚なきまでに叩きのめしたらしい。


◇◇◇


 まったく、お前たちは情けない男だな。それにしても、リカの行動は信じられない。そんな悪ふざけをする子ではないし、明らかに度が過ぎている。


 すると、リカが教室に戻ってきたので、俺は、リカに問いただす。


「リカ、これはやりすぎだろう? なんでこんな事したんだ?」


「あいつら、苛められて喜んでいるヘンタイなんだ。だから望み通りにしてやっただけだ。何が悪い?」


 京子が、リカの腕を掴んで問いかける。


「このブレスレットは何? 旧式魔導器じゃないの?」


 リカは、京子の手を振り払う。


「それがどうしたの? 私に触らないで!」


 その時、バチっと電撃のような魔法が発動し、京子が後ろに吹き飛んだ。


 魔法の詠唱速度が速すぎて、京子でも防ぐことができなかったようだ。


「おい、何をするんだ!」


 俺がリカに詰め寄ろうとしたが、リカは教室から出て行ってしまった。


◇◇◇


 それから間もなくして、クラスメイトが血相を変えて走ってきた。


「大変だ! 教頭先生が…」


 なんと、リカが教頭室で暴れているらしい。俺たちは急いで教頭室に駆けつけた。



「このヘイタイクソジジイ! 私に説教なんて、100ギガ年早いんだよ!」


「リカ君、暴力はやめたまえ。君のやっていることは校則に反するし、人としても道を踏み外しているぞ」


「私の下僕たちを可愛がって何が悪い! それを苛めだとか虐待だとか、言いがかりつけやがって。本当の虐待がどんなものが、これから教えてやろう!」


 リカが拘束魔法で教頭先生を縛り上げて、足で踏みつけようとしている。



「リカ! やめて。なんでこんなことするの?」


 京子が教頭室に飛び込んで、リカを止めようとするが、リカはすかさず攻撃魔法を放つ。


「あぶない!」


 俺は咄嗟に京子を突き飛ばし、リカの魔法を受けとめた。体中に電撃が走る! しばらくは身動きが取れそうにない。


「許さないわよ!」


 京子が珍しく怒りを露わにして、リカに強力な拘束魔法を浴びせる。


挿絵(By みてみん)


 一般的な拘束魔法はバリアと同じ原理で、攻撃対象の回りをバリアで囲み、身動きをとれなくするものだ。ただ、京子の卓越した能力で放たれる拘束魔法は、ドラゴンでさえ押さえつけることができるほど強力なものだという。※この世界にドラゴンは居ません


 ところが、リカは京子の強力な拘束魔法を簡単に解除してしまう。そして、その時の風圧で、俺たちは教頭室の外まで吹き飛ばされてしまった。


「このままだと怪我人が出るわね。教頭先生には気の毒だけど、ここは一旦退却しましょう」


 クレバーな京子は、事態を冷静に分析している。俺たちは教室に戻って、今後の作戦を考えることにした。


◇◇◇


「あの異常な力は、旧式魔導器のせいだと思うの。リカの腕には、ハッキリとブレスレットが見えたわ」


「だね。でも、京子が持っている旧式魔導器は、起動しなかったんだろ?」


「そうなの。でも、リカが手に付けているブレスレットは、きっとあの教会に置いてあったものだわ。こっそり持ち出したのよ」


「俺たちの目を盗んで? あ、そうか。恋の魔法だ。リカは、あのブレスレットに恋の魔法のプロンプトが隠されていると思ったのかもしれない。だから持ち出したんだ」


「まずいわね。あそこにあった端末の電源を入れたままじゃない? もしかしたら、それが関係して旧式魔導器(ブレスレッド)が起動してしまったのかも」


「なら、もういちど教会に行ってあの端末を調べてみないか? 何か手がかりが見つかるかもしれない」


「たしかに... 試してみる価値はありそうだね!」


 俺たちは、ふたたび教会遺跡へと向った。


--- 第6話 END ---

次回、教会には女神様が!?

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