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第5話 教会遺跡の探索(9/8 改稿)

2度目の教会遺跡に挑む。チョークで書かれたメッセージの意味は。。。

 教会の石の階段の前に、俺、京子、リカの3人が立っている。


 前回と違って、それほどの恐怖はなかった。チョークで書かれた警告も、2度驚くことではない。


 建物は風穴だらけで、今にも崩れてきそうだ。


 礼拝堂と思われる場所に椅子や机はなく、ガランとしている。中央奥には、御神体と思われる裸の男性像と、その横に衣服を纏った女性の像がある。


 男性像の後ろにはボロボロのステンドグラスがあり、吹き抜けから差し込む月光(つきあかり)でキラキラと輝いていた。


 部屋の四隅には、人間大の翼を持つ蛙のような化物の石像があり、こちらを睨んでいる。


挿絵(By みてみん)


「へぇ。ここが教会という場所か。宗教の儀式を行なっていた場所だろ?」


「そんな禍々しいものじゃないよ。日常的に人が集まって、祈りを捧げていたんだ」


「何を祈ってたんだ?」


「さぁ、わからない。太古では人が殺し合いをしていたので、それをやめて欲しかったんじゃない?」


「それって、祈ると解決するのか? この像にはそんな秘められた力があるのか!? うーむ、確かにとてつもないパワーを感じる」



 中央の少し段になっている場所の奥に、あまり傷んでいない大きな箱のようなものを見つけた。


 京子がその箱をガチャガッチャと弄り始め、開けようとしている。


「おい、やたらなものに触らないほうがいいよ。それより、この建物の年代測定をしよう」


「じゃ、お願い」


 京子は自分の手を止めようとはしない。リカは後ろの方で両手を合わせ、まるで祈りを捧げているかのようだった。


 年代測定をすると、この教会は建てられてから300年ほどだった。1000年前のものではない。建物の崩れ具合から、だいたいそんなものだろう。やはり、歴史は改竄されていたのだ。



「開いたよ!」


 京子が嬉しそうに叫んだ。中には、古びたブレスレットが数個置いてあり、AIコンピューターにアクセスするための端末のような装置があった。


 京子は、躊躇することなく端末の電源を入れようとしているが、どうしても電源が入らないようだ。


「うーん、なんでだろう? なにか、キーとなるものが必要なのかも」


 俺も、端末をのぞき込んで画面を見てみた。すると、端末から僅かな光が発せられ、俺の顔を明るく照らした。


『認証完了。リブートします』


 すると、不思議な事に端末の電源が自動的に入り、再起動された。


 京子が怪訝(けげん)な顔で言う。


「あんたの顔にビックリして電源が入ったみたいね。いったいどんな顔したのよ?」


 いや、俺は普通の顔なのだが... なぜか俺の顔を認識してこの端末は起動したようだ。


 その時、後ろの方でリカの悲鳴が聞こえた。


「きゃー!」


 四隅にいた化物の石像が動き出したのだ。なんというお約束な展開。。。。



「あれは、ガーゴイルと言って、おそらくここを守っているロボットよ」


 さすが博識な京子。あんな化物の名前まで知っているとは。


 ガーゴイルは俺たちに容赦なく襲いかかる。必死で応戦するが、俺の魔法では全く歯が立たない。


 ふと横を見ると、京子が3匹のガーゴイルと対峙している。奴らは誰が一番強いのかよくわかっているようだ。


挿絵(By みてみん)


 俺は1匹のガーゴイルを相手にするのに手一杯で、とても京子の助けに入ることはできない。


 リカは? 


 辺りを見回すと、両手で耳を塞いで目を閉じたまま、失神している。ガーゴイルも攻撃対象と認識していないようだ。


(そうか、死んだフリという手があったのか)


 感心している場合ではない。石でできているガーゴイルにはまったく魔法が通じない。


(リカは大丈夫だが、京子があぶない)


 京子のガードをかいくぐり、ガーゴイルが京子に襲い掛かる!


 俺は咄嗟に京子に飛び掛かり、京子に覆い被さった。ガーゴイルは俺の背中に噛みつこうとしている。


「やめてー!」


 京子が大声で叫んだ、次の瞬間。4体のガーゴイルは全てカチコチに凍り、地面に落ちて砕け散った。


(あの時と同じだ)


 女教師に殺されそうになったときと同じことが起こった。


 いや、あの時よりも遥かに強力な氷結魔法(フリーザス)だった。女教師は凍って砕け散ったりはしていない。



 俺は、京子に覆い被さっていたから、氷結魔法(フリーザス)を撃ったのは京子ではないことはわかる。もちろん俺は何もしていない。


 リカは?


 リカは気を失って、両手で耳を塞いだままの姿勢で倒れていた。


 なぜ、俺は命の危険に晒されると強烈な魔法で助けられるのか。不思議というより怖くなってきた。


 京子も同じ思いだろう。普段は怖いもの知らずの京子の顔が、恐怖に包まれていた。


◇◇◇


 リカを叩き起こし、再び端末が収められていた箱の前まで行った。


 端末はまだ再起動中のようで、画面に変化はない。


「これ、魔道器だ。おじいちゃんにもらったのと同じ」


 ブレスレットのようなものは、旧式の魔導器だという。なぜここに置いてあるのだろう? 魔導器は原則的に死ぬまで身に着けておくものだ。外すことは法律で禁止されている。持ち主が死なない限り、複数の魔導器が単体で置いてあるのは、明らかに異常なことだ。


「ねぇ、もう帰ろうよ。ここは危ないと思うの」


 リカが恐怖に引き攣った顔で俺たちに懇願した。


「そうね。今日はこれくらいにして帰ろっか」


 京子もガーゴイルとの格闘で疲れているようだ。


 教会の内部まで探索できたことだし、今夜はこれくらいにして引き返すことにした。


 この時、部屋の隅にあった女性の石像が動き出していた事に、誰も気がついていなかった。


挿絵(By みてみん)


--- 第5話 END ---

次回、重大な事を忘れていた二人は...

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