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第4話 教会の謎(7/22改稿)

教会の謎に迫るため、京子の才能が爆発する

 翌日、教室で京子に話しかけた


「昨日は凄いものを見つけてしまったな。これは、人に話しても信じてもらえないかも」


「だよね、真相がわかるまで私たちだけの秘密ね。それに、チョークの文字を見つけた時、リカが失神(フリーズ)してしまって大変だったよね」


「まったくだ。あれじゃ先に進みようがない」


 俺たちは、周りに聞かれないよう小声で話していた。



 そこにリカがやってきた。


「昨日はごめんなさい」


 失神した後、俺にオンブされて博物館を脱出したことを詫びているようだ。


「謝る事はないよ。それにしても、お前、見かけより重いんだな。おぶって階段登るのキツかったぞ」


 何やら殺気を感じて振り返ると、京子のパンチ(鉄拳制裁)が飛んできた。


「レディーに失礼なこと言うんじゃないよ!」


 大きな声を出したせいで、周りのクラスメイトたちがざわついた。



「リカをおんぶしたんだって? なんてウラヤマシイ、じゃなくてイヤラシイ奴だ、このすけべ野郎!」


「全く、俺たちのリカちゃんに何をしたんだ。許せん!」


 クラス中の男子からの羨望と嫉妬の集中砲火を浴びてしまった。


 リカは、恥ずかしそうにしている。ちょっと言い過ぎたかな。



「いや、リカは手足が細くて綺麗だから、軽そうに見えたんだよ。ごめんな」


「いいのよ。私見かけよりデブだから。デブはだめだよね」


「そんな事はないよ、リカは今のままが素敵だよ。だから、ダイエットなんてする必要はないよ」


 リカは顔が赤くなっているのを隠すために下を向いているが、少し嬉しそうでもある。


 そんな他愛のない会話の(かたわら)、クラス中の男子の目から冷凍ビームが俺に向かって発射されている様子を、京子は笑いながら眺めていた。


挿絵(By みてみん)

◇◇◇


「私、調べ物があるから先に帰るね」


 珍しく京子がそそくさと先に帰った。俺も、教室はハリノムシロだったので、早々に下校し、考え事をしながら街をブラブラしていた。


(リカも京子も、女性としてはとても魅力的だよな。でも、俺は誰かと付き合うとか、結婚とか今は考えられない)


「俺もあと2〜3年もしたら、相手を見つけて結婚するのかなぁ。どんな相手なんだろう?」


 とつぶやく。ふと京子の顔が浮かぶが、すぐに否定した。


(おれがあいつと夫婦なんて、考えられない。ムリ!)


 平均結婚年齢が20歳前後という今の時代、恋愛や結婚はさほど先送りにできないイベントなのである。


◇◇◇

挿絵(By みてみん)



 翌日、京子が話しかけてきた。


「遺跡のこと調べたんだけど、おかしいんだ」


 どんなことも簡単に調べられる今の時代に、1人で先に家に帰って調べ物なんて、珍しいことだ。


「一体どこで調べてたんだ?」


「歴史研究所の内部データベース」


「それって、非公開で一般の人はアクセスできないデータベースじゃないか、一体どうやって?」


「てへっ。そんなことより、おかしいのよ。あの遺跡のことは、全く記載がなく、博物館に展示してあった1000年前の教会のこと以外、何も出てこないんだ」


 なにが「てへ」だよ。それって簡単なことじゃないし、そもそも犯罪行為じゃないか。



「あの遺跡って、数百年前までは使われていたっぽいよね。少なくとも1000年ではない」


「それで、300年分のバックアップも調べたんだけど、何も見つからなかった」


 バックアップまで。。。


「でもね、バックアップに違和感があるんだ。きちんと差分だけ積み重なっていて、きれいに300年間分揃っている。300年もの間、何のトラブルもなくバックアップできてたのかなって。なんか、後からまとめて作ったバックアップに見えてきたんだ」


「ふーん、キチンとしているのが逆に怪しいと」


 俺がそう答えると、京子は頷きながら矢継ぎ早に話を続けた。



「それでね、家にあったおじいちゃんの形見の旧式魔導器を調べてみたんだ」


「なんでそんなものがあるんだよ!」


「ヒィおじいちゃんが使っていたんだって。再起動してみたんだけど、旧式のAIサーバーと繋がらないから起動しなかった」


「旧式の魔導器を起動するのは、違法行為だろ!」


「そんなことはどうでもいいのよ。ねぇ、この先が大事なの。聞いて!」



「起動はできなかったけど、ストレージにはアクセスできたの。それをデータ解析器(アナライザ)にかけて、当時のAIをスタンドアロンモードでエミュレーターから起動できたんだ」


 いったいこいつは何者なんだ。稀代のハッカーでもそんなことは簡単にできないぞ。



「でね、教会のこと調べてみたんだけど、あったのよ。確かに、100年前まではあの場所に教会が建っていた」


「え、でも今のデータベースには、1000年前に崩壊したって記録だよね。AIが嘘をついたということ?」


「そうなるね。(AI)も嘘をつくのよ」


 なにか、恐ろしいことに首を突っ込んでしまったような気がした。あの教会は現代のパンドラの箱か?


 背筋が凍るような恐怖が押し寄せてきた。



「だからね、もう一回確かめに行こ!」


「お前なぁ。こんな事実を知って、怖くないのか?」


「ぜんぜんっ!」


「俺たちは、開けてはならないパンドラの箱を開けてしまったのかもしれないんだぞ!」


「そんな箱は片っ端から開けるわよ! ここまできたら、謎を解き明かさないと。それが私たちの使命だと思うの」


 使命!? 京子の悪い癖が発動してしまった。こうなったら誰にも止められない。


「『たち』、じゃないだろう。なんで俺を巻き込む前提なんだ?」


「そんなの大前提だよ。だって、あんたは私の頼みを断らないでしょ?」


 確かに、これまで京子の頼みを断った事はない。なぜなら、断った後のことを考えると怖くて眠れなくなるからだ。でも、今回は違う。何かとてつもない闇がありそうで、本当に怖かった。



「俺だって断ることはあるんだぞ」


「じゃぁ、明日の夜ね。今度は色々準備していこう」


「おい、人の話聞けよ!」


 全くこいつには困ったもんだ。


 そう言いながら、結局京子の言うことを聞いてしまう俺が、我ながら情けない。

いや、京子を敵に回す恐怖からすれば、教会の闇の方がいくらかマシか。


挿絵(By みてみん)



「あのう、私も付いて行っていいでしょうか?」


 後ろからリカが話しかけてきた。あの怖がりのリカが??


「ぜんぜん構わないわよ。一人でも多い方が、何かあった時頼もしいからね」


 京子はすんなりOKしてしまう。


 そんな京子をみていると、俺も覚悟を決めざるを得なかった。


--- 第4話 END ---

次回、2度目の教会遺跡に挑む3人だが…

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