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第11話 作戦始動

挿絵(By みてみん)

AI政府の施設におばさん(京子の母)が…

 話は数日前に遡る。


 おばさん(京子の母)は、AI政府に連絡を取っていた。『ひさしぶりに、教え子たちの成長ぶりを見たい』という旧教官の言葉に、教え子のオプティマイザーたちは快く応えてくれたという。


 後日、オプティマイザーが集結する日があるので、AI政府の研修施設を訪れるようにと連絡があった。時を同じくして、京子にも人質交換への返答があったのである。



 当日の朝、おばさんは俺たちよりも一足先にAI政府の研修施設を訪れていた。


「みんな、久しぶりね。あなたたちの成長した姿を見れるのは嬉しいわ」


 一同に集まったオプティマイザーたちの前で、おばさんが挨拶をした。


「あれ、二人足りないわね。ミスターブラウンからは少し遅れると連絡があったけど、ホワイト君はどうしたの?」


 ホワイトとは、俺たちに倒されて反政府組織の地下牢に閉じ込められているオプティマイザーのことだ。


「ああ、奴とは連絡が取れないんだ。いつも勝手なことばかりやっていたから、またどこかの地下施設に潜り込んで遊んでいるのだろう」


 ミスターレッドが答えてくれた。(かえで)救出の際に、おばさんが現れた事は知られていない。誰もおばさんが反政府組織の人間だと疑っていないのだ。



 今回の作戦その1、それは特製のバトルスーツをオプティマイザーに着てもらうことだ。京子が作ったもので、なかなかイカしたデザインである。色分けがされており、それそれのカラーのオプティマイザー専用となっている。これは、俺たちがオプティマイザーを識別するためのマーカーの意味もある。相手の戦力を暴露させる、立派な兵法だ。


「これ、みんなにプレゼントよ。私の娘が作った特製スーツで、強力な回復機能があるの」


「玲子さん、ありがとうございます。大事にします!」


 オプティマイザーたちは、嬉しそうに手に取って見ている。もちろん、回復機能があるとは嘘で、痛みを感じないゾンビ化魔法が仕込んである。このスーツを着ている間は、どんなにダメージを受けても何も感じず、限界を超えるまで普通に動くことができる。そのため、強力な回復効果があると錯覚してしまうのだ。もちろん、限界を超えた時点で倒れて戦闘不能になる。


「せっかく持ってきたのだから、今すぐ着て頂戴♡」


 オプティマイザーは言われるがままに、特製ゾンビスーツを身に纏った。これで作戦の第一段階は完了である。


「今日はこれからお客さんが来るのです。興味深い事が起こると思うので、玲子さんもぜひ見学してください」


 ミスターレッドからそう言われて、一緒に来客を待つことになった。もちろん、そのお客さんとは俺たちの事である。オプティマイザー総出で俺たちを一網打尽にし、自分たちが活躍する姿をおばさんに見てもらいたいのだろう。これも、おばさんの予想通りの展開だ。


---


 俺たちがAI政府の施設を訪れた場面に戻る。


 おばさんの目には、遠くの入り口から警備アンドロイドに連れられてくる4人の若者が映っていた。オプティマイザーぐらいの達人になると、相手の強さを一目で把握することができる。敵の能力を知るというのは、戦いおいて最も重要なスキルだ。


 彼らの目には、俺と京子とリカの3人は、平均的な魔法学校の生徒に見えている筈だ。(かえで)のみ、オプティマイザー並みの非常に強い能力を感じさせている。もちろん、これも敵を欺くおばさんのハッタリ魔法によるものだ。能力を見誤らせるというのは、戦闘において非常に有効である。これが俺たちの作戦その2だ。


 オプティマイザーたちが少しざわついている。(かえで)の能力に驚いているのだ。一方で他の3人は普通の学生のため、嫌でも注意の目が(かえで)に集中する。俺たち3人はすでに眼中にない。


 俺たちが入口ロビーの中央あたりまで来ると、オプティマイザーたちがこちらに近寄ってきた。京子の作ったバトルスーツのお陰で、彼らの序列(強さ)が一目瞭然だ。


 ここにリカのお母さんの姿はなかった。少し後ろのほうに、おばさんと下位のオプティマイザーが数名立っている。


「リカのお母さんを引き渡してください。代わりに俺がここに残ります」


 俺は大きな声で彼らに語りかけた。すると、何やらセンサーのようなもので俺をスキャンされた。


「たしかに、お前の体は生まれてから300年近く経っている様だ。とても不思議な現象なので、ぜひ我々の調査に強力してほしい」


「わかった」


「あの研究者の女性は、自分の意志でここへ来たのだ。帰りたければいつでも返す。別に、拘束しているわけではない」


 ミスターレッドがそういうと、リカが反論した


「嘘よ。無理やり連れて行ったくせに。早くお母さんを連れてきて」


 すると、奥のほうから2人のオプティマイザーに連れられて、リカの母親が現れた。ただ、口が利けない魔法をかけられているようで、押し黙ったままだ。


 リカの母を連れて来たのはパープルだ。序列では7番目となるため、ここに居るオプティマイザーの中では下位のほうになる。俺の目の前に立っているのは、レッドとオレンジ。つまり、ナンバー2とナンバー3だ。こいつらはかなりの強敵だから気を付けなくてはならない。


「リカのお母さんと俺が入れ替わる約束だ。引き渡してくれないのから、俺は帰る!」


 俺がそう叫ぶと、グレーが加速魔法で瞬時に俺に近づき、拘束魔法を俺にかけた。俺の強さを見誤っているせいで、大した威力ではない。この程度の拘束魔法なら直ぐに破れる。俺は、反撃のタイミングを伺って捕まったフリをしていた。


「悪いが従ってもらう」


 ミスターレッドがニヤリと笑みを浮かべて言い放ったその時、アラートが建物全体に響き渡った。



「警告! 警告! 侵入者あり。武装兵士20名。中央施設に向かっている模様。今すぐ対処されたし!」



「なんだと! どうやってここの警備網を突破したのだ? 反政府組織の奴らか? イエロー、グリーン、ブルー、対処してこい!」


了解(ラジャ)!」


 ミスターレッドの命令で、3人のオプティマイザーが外に出て行った。


 この襲撃は、作戦その3によるものだ。武装兵士はもとより、アラートの放送もPSVR-HD(物理仮想空間装置)によるもので、幻影である。そして、おばさんの幻影魔法と相まって、ここにいるオプティマイザー全員が騙されている。


 オプティマイザー3人が居なくなったことで、敵の戦力を分断できた。彼らは暫くの間は幻影と気づかずに戦い続けるだろう。PSVR-HD(物理仮想空間装置)によって作り出される幻影は物理攻撃しかできないが、ダメージを体感できないゾンビ魔法をかけられた彼らの体力を、確実に削り取っていく。


 そして、そのドタバタに乗じておばさんが不可視の攻撃魔法をリカの母親を連れているパープルに放った。


「ドン!」


 と大きな音がしたが、何が起こったのか誰にも判らない。次の瞬間、パープルが床に倒れていた。おばさんは、すかさずリカの母にハッタリ魔法をかけて強く見せる。こうすることで、誰の目から見ても、リカの母親がオプティマイザーを倒したように見えた。


 さすがのミスターレッドも狼狽えている。今が反撃のチャンスだ。俺が拘束魔法を破壊すると同時に、リカが重力魔法の範囲攻撃を展開し、オプティマイザーによる加速魔法を封じる。


 高重力下で加速魔法を使うと体への負担が倍増して自滅してしまうため、重力系の魔法は加速系魔法を封じ込める手段として有効なのだ。ところが、俺は特訓の成果で、高重力下でも加速魔法が使えるようになった。瞬間的にグレーの背後に回り込み、ありったけの力で必殺技のプラズマブラスターを至近距離からお見舞いした。


 ゾンビ魔法スーツのせいで、グレーは致命的なダメージを負っているにもかかわらず、平然としている。俺は元の位置に戻り、グレーにパンチを一発お見舞いした。すると奴はバタンと床に倒れた。ダメージが限界を超えて倒れたのだ。それはまるで俺がワンパンチでグレーを倒したように見えただろう。ミスターレッドは目の前で起こったことが信じらず、愕然としている。


「オプティマイザーをパンチ一発で倒すとは、いったいどうなっているのだ!?」


 狼狽えるミスターレッドだが、少し離れたところから見ていたミスオレンジは冷静だった。


「その男、弱そうに見えるけど、かなりの手練れよ! ダテに300年も生きてないわ。気を付けて!」


 どうやら高重力下での加速魔法を見られていたようだ。逆ハッタリもこれまでか。


 次の瞬間、目の前からミスターレッドが消えた。


--- 第11話 END ---

挿絵(By みてみん)

次回、上位オプティマイザーと対峙するが…

(次話は6月14日の早朝に掲載予定です)

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