番外編 楓とテニス(挿絵多数あり)
教室で、いつものように京子やリカとくだらない日常話をしていた時、遠くから刺さるような視線を感じた。
振り向くと、楓が冷めた目で俺のほうを睨んでいる。
(あれ? 昔に戻ってしまったようだ。なんで楓は俺の事を睨むんだろう?)
目が合うと視線を逸らす楓。せっかく仲良くなったのだから、俺たちの会話に加わればいいのに...
しばらくして、京子たちが立ち去った後に、楓が俺の席までやってきた。
(また鼻の下を... とか言われるのかな?)
「あのぅ、今度、わたしとテニスしませんか? たぶん、京子さんよりは打てると思うの」
楓は恥ずかしさを堪えながら、勇気を振り絞って話しているように見える。以前、体育の時間にテニスのトーナメントを行ったとき、俺は準決勝で楓と対戦した。もちろん、瞬殺したのだが確かに上手だった。
「ああ、構わないよ。じゃぁ、今日の放課後にテニスコートで待ってるね」
「ありがとう」
そそくさと席に戻る楓の後ろ姿を、俺はボーっと眺めていた。
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放課後のテニスコートに行くと、楓が準備を終えて俺のことを待っていた。
引き締まった長身の体、長いストレートヘアを靡かせ、真っ白なテニスウエアに身を包んだ美少女は、直視すると呼吸をするのを忘れるほどの輝きを放っていた。男子テニス部員の目も釘付けである。
リカとはまた違った魅力あふれる美少女だ。
(楓って、こんなに可愛かったのか。。。)
思わず唾を飲む。
テニスコートで待っていた楓
ゲームを始めると、確かに上手だ。足も良く動くし、ボールも速い。何より抜群のスタイルと締まった顔が、なんとも美しい。
そんな楓を眺めながら、ゲームが終わった。
「残念、もう少しだったのに勝てなかったわ。さすがね」
「いやいや、楓も相当な腕前だよ」
「あなた左利きだったのね。テニスはレフティーのほうが有利だよね」
「いや、俺は右利きだよ。右ばかりだと体が偏ってしまうから、時々左で打っているんだ。左右均等に体を使いたいからね」
「… あら、そうだったの」
少しショックを受けている様子だが、実際俺は右でも左でもあまり変わらない。なぜか運動神経だけは抜群で、こればかりは生んでくれた親に感謝する他はない。
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楓が俺の近くまでやってきて、短い沈黙の後に話し始めた。
「あの、ちょっと聞き辛いんだけど、いい?」
「ああ、なんでもいいよ」
「あなた、京子と、その… 付き合っているの? とても仲が良いし幼馴染なんでしょ?」
「京子は確かに仲は良いけど、ただの幼馴染だよ。付き合っているとかじゃない」
「じゃぁ、リカさんと付き合ってるの?」
「いやいや、リカともなんともないよ。ただの友達だよ。なんでそんなこと聞くの?」
楓は少し落着きを取り戻したようで、笑顔が戻ってきた。
「じゃぁ、今は特に恋人とかいないの?」
「ああ。そうだよ」
「えーと、そう言うことなら、私も候補に入れて欲しいな」
「なんの候補?」
「あなたの恋人の候補」
(!!!)
俺は思わず持っていたボールとラケットを地面に落としてしまった。いきなり笑顔でこんな事を言い出すなんて、予想だにしていなかった。
「京子、リカの次でいいから」
何を言い出すのかと思えば、今のは告白なのか? 候補だなんて、そんな大層なことは考えたことない。しかも3番目でいいとか、意味がよくわからん。俺は戸惑いを隠せなかった。
「じゃあね、またテニスの相手してくれると嬉しいな。」
そう言って、楓は笑顔のままにテニスコートを後にした。
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京子とは幼馴染で何でも話せる仲だけど、告白されたことはない。以前リカには告白されてデートもしたのだが、京子のお陰で散々だった。ここに来て楓までとは。俺のモテ期到来か?
リカも楓もすごい美人だし、恋人として申し分ない。それなのに、俺の頭の中にはただの幼馴染の京子がずっと居座っている。
(恋人候補かぁ。1番目は誰なのかな? 普通に考えれば、リカか楓が一番だよな。京子は良い子だけど、粗っぽいところもあるし、いつも身勝手に行動して周りを巻き込むし… 恋人候補としては二人と比べるまでもない。でも、俺の頭の中のど真ん中に居坐っているのは、あいつなんだよな…)
明日からどんな顔をして楓と接すれば良いだろう? そんな俺の戸惑いを他所に、翌日も彼女は普段と全く変わらなかった。違いといえば、俺を睨みつけることは無くなり、目が合うと微笑んでくれるようになった事ぐらいか。
そして、俺の席では京子とリカとの下らない日常会話が続いている。ただ、時々楓も会話に参加するようになっていた。
今回は、試しに挿絵を多く使ってみました。読みづらいかもしれませんが、お許しください。
ツイッターで、本作品の画像を多く投稿しています。ご興味のある方はぜひお越しください。
なお、画像はすべてAI生成です。
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ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
私から、読者の方々にお願いがあります。
この話がイマイチだと思った方は、★をひとつ、
面白いと思ってくださった方は★を2つ以上付けて頂けると大変嬉しいです。
星の数は、今後のストーリー制作に参考にさせていただきます。
どうか、よろしくお願いします。
作者より
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