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第3話 組織(挿絵あり)

ペットのSNSグループの履歴を精査する俺とリカ、そこで見つけたことは...

 犬や猫などペットの寿命は、亀など一部例外を除くと人間よりも短い。それを、人間と同じぐらいの壽命に伸ばしたいという研究者たちのグループだった。


 グループのメンバーに、見覚えのある名前があった。クラスメイトの(かえで)だ。彼女とは、殆ど話をしたことがない。でも、噂は聞いている。とても気が強くて、いわゆる女王様タイプの性格らしい。ちょっと苦手なタイプなので、どちらかと言えば避けていたのだが、思い切って話しかけてみた。


(かえで)さん、ちょっとお話ししても良いですか?」


すると、(かえで)は『気安く私に話しかけないで』と言わんばかりの怖い表情で、俺の事を睨みながら言う。


「なに?」


 (かえで)の冷たい視線に凍り付きそうになるが、ここは引き下がれない。俺も強気で話を続ける。


「ペットの寿命についてのSNSグループに入ってますよね? 京子も同じグループにいた事は知っていますか?」


「ええ、知っているわ。あの子、ペットも飼っていない癖に入会してきて、ちょっとムカついたの」


「…」


俺は黙って(かえで)の話を聞くことにした。


「京子は口が達者でしょ? 自分の知識をひけらかすから、すっかりグループの幹部に気に入れれたのよ」


「こないだもオフ会に行くとか言って、出かけて行ったわ。でも、幹部の人はすっぽかされたと言ってたわ。まったく、京子は気分屋でいい加減なんだから。今日だって、学校サボって何をしているのやら...」


「知っている事はすべて話したわ。私、あなたみたいに女子の前で鼻の下を伸ばしている男はキライなの。わかったら、もう私に話し掛けないでもらえる?」


 そういうと、俺から視線を逸らしてツンとしている。


「そうなんだ。いろいろ教えてくれてありがとう」


(俺、鼻の下なんか伸ばしてないけどな。何を見てたのだろう)


 とりあえず情報は入手できた。鼻の下? 身に覚えがないのだが、まぁ気にしない事にする。※少し前までリカに変な期待をして鼻の下を延ばしていたのは事実である


---


 京子の足取りについて、多少なりとも収穫があったので、京子のお母さんに報告することにした。リカは、街のペットショップに行くと言って、学校を後にした。


 家に着くと、早速隣の京子の家へ行く。おばさんは、俺が訪ねて来るのを待ちわびていた様だった。


「おばさん、京子の足取りについて、少し手掛かりを見つけました」


「ありがとう。本当に頼りになるわ。それで、どんな事なの?」


「京子さんは、ペットの寿命を伸ばす研究をしているグループに入っていたようです。そこの、ある幹部と会う約束をしていたらしいのですが、会いに向かう途中で消息を絶ってしまったという事でした」


「ペットの寿命ね... 確かに、人の寿命の研究だと組織にすぐ目をつけられてしまうから、ちょうど良い隠れ蓑だったのかも知れないわ。私たちの知らないところで、似たような研究をしている人たちがいても不思議では無いわね」


「そこで、俺はその幹部に会ってみようと思います。幸いなことに、そのグループに入っている人がうちのクラスにも居たので、京子さんの友達だと紹介してもらえば会ってもらえるかと思って」


「そうね。まずはその幹部という人が、どんな人なのかを知りたいわね。ちょっとまって」


そういうと、おばさんは呪文(プロンプト)を唱えた。なにか、強力な力が働いているように感じた。


「いま、ECM魔法をかけたわ。強力なやつだから、突破される心配はないとおもうの」


「貴方に、私たちを狙っている組織について詳しく教えるわ。その幹部という人が、組織の人間かもしれないから、判断材料になるとおもうの」


 そういうと、京子の母親は組織について俺に詳しく語り始めた。


「私たちが俗に組織と呼んでいるのは、現在世界を支配しているテュル神直属の組織で、正式な名称は、『オプティマル』というの。そして、その構成員は『オプティマイザー』と呼ばれている特級プロンプターなのよ」


「特級? プロンプターって1級が最高だと教わりましたが?」


「そう、表向きは1級が最高という事になっているけど、その上があるのよ」


「1級プロンプターは世界に100人も居ない特別な能力を持っているプロンプター(魔法使い)の頂点に立つ人だと聞いてますが、その上とはいったい?」


「まぁ、簡単に言うと1級プロンプターが束になっても特級プロンプター1人には勝てないということかしら。とにかく強くて特殊な能力を持っている人たちなの。狙われたらひとたまりもないわ」


「…」


「いくら京子が天才的な能力を持っていても、彼らには全く歯が立たないでしょう。なので、オプティマイザーの対策はひとつだけ、『彼らとは戦わない事』なのよ」


「逃げろという事ですね」


「そうね、逃げられればいいのだけど、彼らが本気で追ってきたら、まず逃げられないわ。つまり、戦うシチュエーションになったら負けということね」


「そんな人たちと、200年以上の間、戦ってきたのですか?」


「そうよ。でも、私たちの仲間でオプティマイザと対峙できる人は殆どいないから、見つからないように隠れてきたの。彼らが歴史を改竄してきたように、私たちも彼らに情報攻勢をかけて、姿をくらましてきたのよ」


「それでも、同等の能力を持った味方も少しは居るのですね。どんな人なのですか?」


「そのうち... 紹介するわ。会う機会があったらね」


 おばさんが、少し歯切れの悪い言い方をしたのが気になったのだが、おそらく容易に会える人ではないのだろう。


 京子にも今の話はしたという事なので、考えられる可能性は二つ。グループの幹部に会う前に、オプティマイザーに捕まったのか、幹部がオプティマイザーだと気づいて姿を隠したのか。いずれにしても、幹部とのコンタクトには細心の注意が必要だということだ。


「おばさん、ありがとうございました。明日、幹部とのコンタクトを考えてみます」


「くれぐれも気を付けてね。もしオプティマイザーだと思ったら、会う前に逃げるのよ。私とあなたの家族は大丈夫。私が全力で守るから気にしないでね」


 そう言うおばさんは、とても頼もしく思えた。京子の母親だけあって、かなりのパワーを感じる。


「では、また明日。状況を連絡しに来ます」


 おばさんと別れて、俺は自宅に戻った。


--- 第3話 END ---


次回、リカから楓に関する有力な情報が...


挿絵(By みてみん)

クラスメイトのかえで

次回、リカから楓に関する有力な情報が...

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