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【完結済み】愛し子のトリセツ  作者: 西九条沙羅
第一章

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レティシアは湖に足を浸らせて、近くにいる妖精たちに声を掛けた。



「今日は天気が良くて、気持ちいいわね。

だからご機嫌なの?」



朝から妖精たちがご機嫌で、レティシアの周りをくるくる謡いながら踊っていた。



『それもあるけど、もっといいこともあるの~』

『今日はとってもいい日!』

『レティシアにとっていい日なのね~』

『ね~』




何だかよくわからないけど、今日はいい日なのね。

レティシアは気分よく昼食の準備を始めた。








レティシアがお腹にいる時、母親の魔力が暴走しそうになった。



多くの妖精がリンゲンにきて、レティシアの母親で「愛し子」であるレイラにアンハルトに戻るよう告げた。



『レイラ、アンハルトに戻るの!』

『ここで愛し子を産むのは危険なの~』

『そうなの』




レイラはびっくりした。


「愛し子」は数百年に一人しか生まれないのに、「愛し子」の自分がまた「愛し子」を産むなんて・・・。



不安に思ったレイラは夫のアダルウォルフに相談して、息子のエリアスだけを連れてアンハルトに戻った。

兄王はすぐに賢者を王宮に呼び出した。



「レイラ様のお腹には、確かに次代の「愛し子」様がおります。

しかもこの姫様は、過去稀にみる力を持っておられます。

姫様が望む世界へと、妖精たちがどんな望みも叶えてしまうでしょう」




賢者はそして、お産が難しくなることも予言した。

莫大な魔力を持って生まれる子供は、出産時に魔力暴走によって母体を危険に晒すのだ。


兄王は子供を堕ろすよう賢者に依頼したが、レイラは泣きながらお腹の子を守った。




「お産が難しいことだけが問題なのではない。


その子は諸刃の剣だ。

仮令その子が心美しく育ったとしても、暴君を愛してしまったらこの世は終わる。


仮令選んだ男が暴君でなかったとしても、この子の力を知ってしまったら・・・。

この世界を手に入れられると知ったら・・・。



わかるだろう?」



レイラはただただ泣きながら首を横に振るだけで。




兄王は溺愛する妹の涙をそれ以上見ていられなくて、リンゲンに早馬を送った。




次の日早馬でやってきたアダルウォルフとレイラは、何日も話し合った。



エリアスはその間、情緒不安定なレイラと離され、所在なさげに王宮に滞在していた。


母親の泣き叫ぶ姿、父親の声を押し殺した叫び。



エリアスは徐々に、ご飯を食べることも、眠ることもできなくなっていった。






レイラは妖精たちからそんなエリアスの様子を聞き、大慌てでエリアスを探した。



王宮の温室の中、花を見るでもなく、何も映していないガラスの様な瞳で花壇を見つめ続けるエリアス。


膝をかかえて座るエリアスはまだ4歳だ。




レイラとアダルウォルフは泣きながらエリアスを抱きしめた。



声もなく泣く息子を抱きしめながら、レイラはお腹の子を諦める決心をした。







しかしふと、腕の中のエリアスは瞳に力を宿すと、レイラに先ほど自分に起こったことを話した。




「精霊王様が僕に言ったの。


お腹の子を守ってって。


レティシア、僕の妹の名前。


お母さまを死なせてはだめだよ。


大人しくしててね。」




そう言ってエリアスはまだ膨れていないレイラの、母のお腹を優しく撫でた。




アダルウォルフは息子を抱きしめた。


「レティシアか、いい名前だね。


この子は大きな運命を背負って生まれてくる。

お父様と一緒に、この子を守ってくれるか?」



「もちろんだよ!


本当はちょっぴり寂しかったけど、精霊王様がいっぱいお話してくれたの。

この子が、僕を、父様や母様、世界を幸せにしてくれるって!」








そうやって、レティシアは生まれた。






多くの人に見守られ、愛されるために生まれてきた、精霊王様の愛し子。






しかし、その力は莫大すぎた。








ただぐずっただけで、側にいた乳母を妖精が攻撃したのだ。



近くにいたエリアスが乳母を守った為に事無きを得たが。

赤子は泣くのが仕事。

その度に誰かが傷つけられる。



それに気づいたレイラとアダルウォルフは、レティシアとエリアスを連れて、アンハルトの王宮の裏にある森の離宮に、家族だけで住む事にした。






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