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【完結済み】愛し子のトリセツ  作者: 西九条沙羅
第一章

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6/50

「あと1時間ほどで、アンハルトの王宮の森に着くそうです」

「そうか。 意外に近いんだな」



リンゲンの王宮の裏にある森を馬車で走る事2時間。

あと1時間もしたらアンハルトの王宮の裏にある森に着くらしい。

普通なら国家間の訪問は表玄関同士で行き来するため、首都が国境越しに隣りあってると言っても、王宮から王宮は馬車で半日はかかる。


しかし今回訪れるレティシアがいるところは王宮・・・ではなく、その裏にある森の中。

なので最短距離で両国間の森の中を突っ走ることにした。




「しかし何で森の中に住んでいるのかね~。物好きだな、「愛し子」様の娘は」



レオナルドはレティシアに会いに行くことを決め、国王からレティシアの調査書を受け取った。



今「愛し子」様は王宮に住んでいて、レティシアは一人で森に住んでいるらしい。

しかし森には多くの妖精がいるため、調査をすると言っても大したことは調べられなかったようだ。




“娘の髪の色は銀色でストレート。 馬に乗って森を駆け回っている。 現在一人暮らし。”





「え? これだけ???」





レオナルドはリンゲンの諜報部員への失望を隠せなかった。

しかし諜報部員からすると、「あの森、怖い。 あの森、怖い。 文句があるならお前が行け」という心情なのであった。







「すみません、ここから先は馬車で入れません」




御者が声を掛けてきたため、レオナルドとアントンは馬車を降りた。

周りを囲む騎士が乗ってきた馬も、前に進むことを拒否し、その場で足踏みをしていた。


「なんだ? どうした? もう少し先だろう」

「殿下、馬だけでなく、我々も、ここから先に行くことが出来そうにありません」


副騎士団長が少し汗をかきながら、レオナルドの前で膝を折った。


「殿下、私も何だか、・・・先に進むなと、何というか体の細胞レベルで訴えかけているような・・・」


アントンも少し汗をかいていた。


「わかった。では私一人で行く」

「「「ご武運を」」」










(いや、「ご武運を」じゃねーよ。

一国の王子を一人にするなよ!

俺に何かあったら、お前ら父上に首撥ねられるんだからな!)



でも仕方がない。

何も感じなかったのはレオナルドだけだったのだから。




(何も起こらないよな?

妖精姫様の愛する森だもんな???)



ちょっとビビってるレオナルド、森に不慣れな王宮育ちである。



アンハルトでは「愛し子」と言われるが、リンゲンでは妖精姫として語り継がれている。

レオナルドも童話で妖精姫様の物語を読んでいた。

3歳のレオナルド、童話の妖精姫様が初恋の相手である。

そしてある日何気なく王妃に尋ねた。


「いまもよーせーひめしゃまは、アンハルトのもりにいらっしゃるの?」

「いいえ、今はオルティース公爵夫人になられて、一児の母よ」






レオナルド失恋の瞬間であった。






切ない失恋の痛みを思い出し、哀愁の表情を浮かべたかと思えば、そのライバルが宰相であったことを思い出し、はらわたが煮えくり返って情緒不安定になった頃、森が開けた。






スカートを捲り、湖に足を浸らせているのは、銀色の髪の、女神もかくやの美しい———————







息をすることも忘れ、レオナルドは少女を見つめた。




細胞が伝える。


彼女は自分の運命だと。





「っはぁ」




体が空気を求めて、レオナルドに呼吸をさせた。



急に入ってきた酸素で我に返る。




そして、一歩踏み出して、




「誰!?」





自分が踏んだ足音を聞いて、少女が振り返った。




自分を見つめているのは、この世のものとは思えぬほど美しい、虹色の瞳。






見つめられている。




ただそれだけで、うれしい。



ただそれだけが、うれしい。






レオナルドは声を掛けるのも忘れ、一歩一歩と彼女に近づく。



少女は茫然とレオナルドを見つめる。



彼が何者なのかを見極めるように。









そこに親愛の色はない、だけど ———————・・・










ただ彼女の視界に入っているだけで、レオナルドの魂は歓喜した。










やっと本当のヒロインが出てきました!!!

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