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【完結済み】愛し子のトリセツ  作者: 西九条沙羅
第二章

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㉑ ミュンスター王 side


病弱だった妻は、娘を生んだ後、ベッドの上でほとんどを過ごしていた。

娘が6歳の時に死んだ。

政略結婚だったが、心穏やかな妻を愛していた。彼女が死んだ時は、心にポッカリと穴が開いた。

自分に似て頭の回転の速い息子。母親に似て心穏やかな娘。

妻を愛し、そして子供達を愛した。

しかし愛の無い両親の間で育った私は、それを表現する方法を知らなかった。


心に開いた穴を埋める様に、大陸の制覇に勤しんだ。



侯爵家の令嬢と恋をして結婚し、侯爵となった弟は、権力欲が強かった。弟の娘が異世界の記憶を持っており、この世に無い多くの物を作りだした。そして、”爆弾”の設計図を取り出し、それを使って他の部族を統合して帝国を築く事を兄に進言した。テューリンゲン大陸では、昔からちょっかいの掛け合いが激しく、衝突することが多かった。その為、私も大陸統一は良い事だと思った。

しかし国が大きくなると厄介ごとも増え、私は国内を落ち着かせる事に忙殺された。その間に実の弟が、王位簒奪を考えているとも知らずに。


それでも心の穴を埋める為、そして息子に安定した国を譲るため、皇帝となった私は、家庭を顧みることなく働き続けた。


母親を亡くした子供たちが、どんな気持ちだったかなんて、考えた事も無かった。




弟が何かを企んでいるだろうが、騎士団長も宰相も自分の幼馴染で、一枚岩の関係を築けていた為、弟には何も出来ないだろうと読んだのだ。



弟の娘が王宮に毎日来るようになって、娘に笑顔が戻った。


良い関係を築いているようだったので、娘の側に侍る事を許した。


娘に不躾な態度を取った侍女を、弟の娘が引っぱたいたと聞いた時には、この子は将来娘の腹心になるかも知れないと思った。弟と私とは違い、良い関係になれるかと。


娘が不遇な目に有っている事を知らなかった私に、大切な真実を教えてくれた。


だから私は弟の娘を可愛がった。



頭が良く、活発な姪が息子の嫁になれば、フリーダの義姉として、仲良くなれるだろう。



結局私は、何も見えて無かったんだ・・・。






息子が死んだ ————。


落馬事故だった。


そう。


事故。


疑わしいが、何も出てこなかった為に、事故として片づけられた。


私に残ったのは、吃音症を持つ心が弱い娘。




たった一人の家族・・・。







今回の爆破事件がリンゲンで起きた時、私は自分の弟を疑った。


まさかミュンスターが手に入らないと気づいて、リンゲンを狙ったのか?

ミュンスターよりも大国で、しかも隣には精霊が住む国、アンハルトがあるのに。

自分の弟の余りにも無知な行いに、鳥肌が立った。


リンゲンの学園で爆破が起こる前日に、宰相が、弟が大量の火薬を屋敷に保管している証拠を見つけてきた。

騎士団長と一緒に弟の屋敷を捜索したところ、確かに大量の火薬があったが、それよりも恐ろしい真実が分かった。


姪が弟を(そそのか)し、そして王位簒奪を狙っていたのだ。


私は弟を牢に入れると、その後の始末を宰相と騎士団長に任せて、急いでリンゲンに向かった。



娘が。


たった一人の娘が、凶悪な女と一緒にいる。


どうか。


どうか、神様。


あの子は私に残された、たった一人の家族なんです。





奪わないでくれ!!!







リンゲン王国に着いてすぐ、国王に謁見を求めた。


一早く娘の無事を確かめたくて、騎士に情報を集めさせた。


どうやら娘は無事のようだ。



リンゲン国王は、謁見の間ではなく応接室での会合を求めた。


彼の話では、今、王太子が婚約者の妖精姫と一緒に、アラリケと対峙しているとの事。しかもそこにフリーダもいると。



心弱いあの子を、あんな悪魔と対峙させるなんて!



文句を言う私に、王妃は呆れた顔をして、副騎士団長が守っているから大丈夫だと宣った。


ミュンスター帝国を認めていないリンゲン王家の者は、わたしを”皇帝”でなく、”国王”と言う。


腹立たしい王妃は、フリーダと私の関係性を知っているのか、やはり男親一人では女の子を育てあげられないんだと、ぶちぶち文句を言っていた。


国王と、これからの事や、補償など、話す事はたくさんあったが、私が散漫な状態だったため、国王はとりとめのない話で、場を繋げてくれた。


しかし、それに感謝をする余裕もなく、フリーダが無事な姿で自分の前に現れるのを、まだかまだかと待ち続けた。




永遠にも感じる時間のあと、現れたのは、


神秘的な色合いを持った、国王に似た王太子と、この世の者とは思えぬ美貌の少女。




そして ———・・・




「フリーダ・・・」




愛する妻の忘れ形見。



フリーダの姿を頭の先から足の先まで凝視する。


怪我もしていないようで安心する。


しかし変わらず、フリーダは私を視界に入れない。



いけ好かない王妃に背中を押されて、私は人生で初めて、娘を抱き締めた。


壊れ物に触れる様に。彼女を怖がらせない様に。そっと。 ・・・そっと。



妻が死んだ時。息子が死んだ時。隠れて流した涙を、今は拭いもせずに、愛する娘を抱き締める。





神様、娘を守ってくれて、ありがとうございます。














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