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【完結済み】愛し子のトリセツ  作者: 西九条沙羅
第二章

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43/50

⑱ フリーダ side


私には兄がいた。




とても頭が良くて、狡猾で、腹黒かった。




父は出来た兄が自慢で、気が弱く吃音症の私の事は気に入らなかった。




母は私を産んでからは、ほとんどの時間をベッドの上で過ごしていた。




優しくて大好きだったけど、長くは一緒にいられなくて。




私はずっと寂しかった。




6歳の頃に母が死んで、私は独りぼっちになった。






でもその後すぐに友達が出来た。




父の弟で、侯爵家の娘。




私の従姉だ。




彼女はとても頭が良く、はきはきとしていて、父は彼女を可愛がっていた。実の娘の私よりも。




だけど、私も彼女が大好きだった。




だって、たった一人の友達だったから。




メイドが私の吃音を馬鹿にした時、彼女はそのメイドの頬を打ち付け、そして父に告げ口をして辞めさせた。




彼女の行動は恐ろしかったけど、私の為に立ち上がってくれたのが嬉しかった。




そんな事をしてくれるのは、母しかいなかったから。




彼女は、私の吃音が治る様に、一緒に練習してくれた。




王女として強く見える様に、演技の指導もしてくれた。




怖がりの弱虫だと、人に舐められるから。




私は彼女に言われた通りにした。




だって、たった一人の友達だったから。








彼女が何をしたかったのかは分からない。




彼女を気に入った父は、彼女を兄の婚約者にした。




だから、彼女が兄を殺した時、彼女と彼女の父親が何をしたいのか、分からなくなった。




だって、そのまま結婚すれば、王家の一員になれるのに・・・。






彼女の言った通りに、留学もした。




彼女が望むとおりに動いた。




だって、たった一人の友達だったから。










彼女の意図が読めたのは、学園が爆破される少し前。




殿下との会合の為に渡された”台本”を呼んだ時。




私は決められた言葉を話す時は、吃音症が出ない事が分かってから、彼女はよく私に”台本”という物をくれた。




その通りに話せばいいのだ。相手がどんな言葉を返してきても。




その”台本”にある台詞は、ほとんどがアラリケの発言そのままだった。




だから、彼女が欲しいのがリンゲンなんだと知った。








だけど多分、妖精姫様の力を知って、きっと彼女が手に入れる物を変えたのだ。




その時初めて、彼女の見ている道の先に、自分がいないんじゃないかと思った。








怖くなった。








侍女が捕まった時に、自分が犯人にされるってはっきりと分かった。




だって、捕まったのは彼女の腹心なのに、その侍女はこの国では、私の腹心だと認識されていたから。




彼女が欲しいのは、ミュンスター女王の地位。




彼女は、あの国が欲しかったのだ。




言ってくれたら良かったのに。




兄が死んでから、私に圧し掛かる責任に、心が潰されそうだった。




私には無理だから、父に頼めば、きっと彼女を可愛がっている父なら、私を外して彼女を女王にした筈なのに。




だけど彼女は、人を踏みにじって、自分の力でその地位を捥ぎ取りたかったんだろう・・・。










独りぼっち。










侍女との接見の後、綺麗に整えられた離宮の前庭で、ただ一人立ち尽くした。




孤独に(さいな)まれていた。




だけど涙は出なかった。




何だか誰かに慰められている気がした。




温かい何かを近くに感じた気がした。




この国には妖精姫様が居て、誰にも見えないが妖精がいっぱいいるらしい。




きっと、妖精が慰めてくれたんだ。




だって、私は独りぼっちだから。








「ありがとう」








小さく声に出したら、温かい何かが光った気がした。




涙が込み上げそうになった時、門の向こうに馬車が止まったことに気づいた。




その馬車が、移動する気配がなかったから、涙を何とか誤魔化して馬車の方を見た。




窓からこっちを見ているのは、妖精姫様。




誰からも愛される、心の美しいお姫様。




あの人を頼ったら、助けてくれるかな?




心が折れそうで、恐怖でそんな事を考えたけど。




私は今日も、彼女に指導された通りの”わたし”を演じる。










だって、彼女はたった一人の友達だったから。










私がこのお姫様に話したら、彼女が大変な目に遭う事が、分かったから。








私は独りぼっち。


















私は前にも後ろにも進めず、ただ暗闇の中、ひざを抱えて座っていた。
















誰か、助けて ————













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