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【完結済み】愛し子のトリセツ  作者: 西九条沙羅
第二章

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33/50

レティシアは、公爵家の図書館で「愛し子」について書かれている書物を調べ出した。




この世界の建国神話は、全ての大陸で共通している。




精霊王が、自分の愛しい(つがい)の魂の為にアンハルトを作った。それが始まりとされている。




しかしそれは、事実のラストを述べただけ。




オルティース家の図書館の一番奥に、禁書の部屋がある。オルティース家はリンゲンの初代国王の弟が起こした家の為、王家で隠されている禁書のコピーが、オルティース家の図書館にも保管されている。


そこには、アンハルトの本当の建国秘話が書かれた古書が存在した。






精霊王の番である精霊の女王。




彼女は人間を愛し、彼らの営みを見る為によく、色々な神が作った世界を覗いていた。




彼女は一つの魂にのめり込み、その魂の輪廻を飽くことなく見守り続けていた。




その世界を作った神がいつしか呆れ果て、妖精の女王にその魂を差し出したのだ。




彼女は嬉しくて嬉しくて、その魂の為の世界を作った。




しかし初めて世界を作った彼女は、上手く世界を動かせず、あっという間もなく因果の法則で、その世界に手足を出せなくなってしまった。




しかも精霊の女王が、愛しい魂の為にその世界を甘やかした為、女王が手を出せなくなった途端、その世界は上手く回らなくなった。その事に人々は不平不満を言い出し、その魂の持ち主を激しく非難しだしたのだ。




女王がなすすべなく立ち尽くしている間に、人間がその愛しい魂の持ち主を焼き殺してしまった。




残酷に焼き殺されてしまったその人間は、魂のほとんどが壊れてしまい、どこかに流れて行ってしまった。




女王は毎日泣いて泣いて、最後には、自分の愛しい魂を殺した人間を、作った世界毎焼き滅ぼしてしまった。






それからどれほどの年月が過ぎたのか。




悲しみに泣き伏せっていた女王は、ある時、愛しい魂が輪廻転生の輪に入っている事に気づいた。




しかし魂のほとんどが壊れてしまったその魂を持った人間は、何度も転生したが、どの人生でも不幸を纏い、短い生涯を苦しみながら生き、そして死んでいった。




自分のせいで壊れた魂を見て、女王は輪廻の輪からその魂を抜き出し、そしてその魂を抱き締めて泣き続けた。




不老不死である精霊の女王は、自分の持っている全てを捧げて、その魂を元の形へと戻した。




自分の全てを使って。




精霊王が気づいた時には、愛する女王はその魂と一つになっていた。




精霊の女王は、もうその存在を顕在する事が出来ず、ただ一つの魂が、精霊王の絶対領域で揺蕩(たゆた)っていた。




精霊王は嘆き悲しみ、その魂を手元に置いていたが、その魂が輪廻の輪に入りたがっていることに気づいた彼は、その魂の為の世界を作った。




アンハルトという国に、その魂の持ち主を初代女王とし、彼女を守る守り人として、妖精を多く住まわせた。




精霊王に愛された魂を持つ女王がいるアンハルトを中心に、多くの国が出来上がり、今の形となった。




アンハルトの女王は、その生を全うした。




精霊王は愛する女王の魂を輪廻の輪には入れずに、その後ずっと手元で愛し続けた。








アンハルトはその後、妖精に愛される魂を持つ者が百年周期で生まれたが、初代女王の魂が、輪廻の輪に戻り、アンハルトの愛し子として生まれてくることはなかった。




賢人によって記されたこの建国神話は、初代女王の魂は精霊王の愛し子で、その魂がまたこの世界に産み落とされるのは、この世界が未曾有の事件に巻き込まれた時であると、締めくくられている。










レティシアは禁書とされたその建国神話の本を、元の書架に戻す。




レティシアは、以前アンハルトの森に住んでいた時に、自分に「愛し子」について教えてくれた賢人を思い出していた。












————— ・・・あやつは頭でっかち ・・・ —————










誰かの声が頭の中で響く。










何百年も生きている賢人。










アンハルトの王宮に住んでいるその賢人は・・・。










そう、あの人を呼ぶのに力は必要ないのだ。()()()()()()()、王宮に住んでいるから・・・。






(力が必要ない? どういう意味だっけ? )






レティシアは、何かが思い出せそうな気がした。




思い出す。 




そう、思い出せないのは、記憶が封印されている?






レティシアは、自分が何かを忘れているような、そんな錯覚に陥ったのだ。






(そうだ。 


私は何かの記憶を封じられたんだ。その賢人の力によって・・・。


なんで?




私が力を使わない様に・・・。




なんで?




・・・なんでだっけ?)






後一歩の所で雲を掴む感覚に陥り、レティシアは図書館の一角で、重いため息を吐いた。








そんな図書館の扉を大きな音を立てて開いたのは、






「レティ姉様!!!」




「アビゲイル! どうしたのそんなに急いで・・・」




レティシアは嫌な予感がして、アビゲイルに向ける表情が強張った。


アビゲイルが肩で息をしながら、眉間にしわを寄せてレティシアを見た。




「学園が・・・、学園が燃えている」








レティシアは持っていた本を落とした。




その音だけが、公爵邸の広大な図書館に響き渡った。







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