③
自称ヒロインのターン、ラストです!
レオナルド王子の卒業式。
最終試験では結局Cクラスの上位の成績すら修められなかった。
でも、この前まで庶民だったんだから、来年度からCクラスになれるなら上出来じゃない?
あと2年あるからそれまでに「愛し子」になればいいのよ。
乙女ゲームでは1年間に絞られていたけど、現実だから卒業までに頑張ればいいよね?
実はこの乙女ゲーム、バッドエンドではレティシアが「愛し子」になってしまう。
しかし今回の後期試験、レティシアもAクラスの後ろの方の成績だったため、彼女が「愛し子」になることはないだろう。
友達もいなくて、いつも一人だけ取り巻きを引き連れている。
レオ様との仲も完全に悪そうで、最近では公衆の面前で睨み合う事もあった。
しかし・・・。
私の方も、思うほど手ごたえが無いのよね・・・。
フランツとオスカーはレティシアが私をいじめていると信じている。
しかしリンゲンの筆頭公爵家の令嬢で、隣国の王妹であり「愛し子」の娘であるレティシアには表立って何も言えない。
レオ様もレティシアの所業を訴えても困った顔をして「ごめんね」と言うだけ。
でも時々お菓子とか小さなプレゼントをしてくれるし、二人だけの(アントンが傍に控えているけど)お茶会に呼んでくれたりもする。
・・・大丈夫よね?
この乙女ゲームで、レオナルド王子とのハッピーエンドへのルートは2つある。
好感度を9割以上でキープし続けると、卒業式の前にレオナルドから「婚約破棄をして君を迎えに来る」と言ってもらえる。
しかし9割以上をキープできなかったとしても、大どんでん返しのルートがある。
それは、前もってレオナルドから意思表示されないが、卒業パーティでリンカが勇気を出してみんなの前で告白すると、レオナルドがリンカを選んでくれる、というルートだ。
今回、残念ながら前以て選んでもらえなかった。
しかしヒロインの自分が選ばれないなどありえない。
だって、相手はあのぽっちゃりレティシア。
気位だけ高く、だけど特別成績が優秀でもない。
人を見下し、友達もいない。
どう考えたって、ヒロインの私が負けるはず、ないでしょ!?
決戦の時がきた。
ぞくぞくと在校生が会場に集まってくる。
在校生の来場の最後の方で、レティシアがとびきり美しい男性にエスコートされて入ってきた。
誰?!!!
あんな人ゲームで見た事ない!
すんごい美人!!!
レオ様よりかっこよくない?
レオ様の方が好みだけど、美醜でみたらレオ様よりも断然男前!!!
興奮している間に卒業生が全員会場入りしており、レオナルドは一人で最後に入場してきた。
実は私一途なタイプだから、レオ様がタイプすぎて他のルートやってないのよね~。
あの人、他のルートで出てくるのかなぁ???
やば~い!
人外に美しすぎる!!!
思考がふわふわしている間に学園長が挨拶をして、卒業パーティが始まった。
ヤバ! ファーストダンスが始まる前に告白しなくちゃ!!!
私はオスカーとフランツを引き連れて壇上に上がって、大声を出した。
「皆さん、聞いてください!!!
私は、ずっとオルティース公爵令嬢にいじめられていました!
レオナルド殿下と仲良くなった私に嫉妬し、ノートを破ったり倉庫に閉じ込めたりしてきました!
その度にここにいるオスカーとフランツが私を守ってくれました!
そんな人、リンゲンの王妃には相応しくないと私は思います!!!
レオナルド様! 私はずっとあなたが好きだった!
あなたが苦しむ姿をこれ以上見たくない!
私が「愛し子」になってあなたを救ってあげる!!!
だから、私の手を取って!!!」
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・・・あ、あれ?
何か、ゲームの時と雰囲気が違う。
な、何か空気が冷たくない???
特に
レティシア側からと、・・・レオ様・・・から???
微笑みの貴公子と陰で呼ばれているレオナルドから殺気を浴びたリンカは、自分が何かをやらかした事に気づいた。
ただ、それが何なのかは解らない。
1つ言えるのは、前世で他のルートをしなかったことが、リンカの敗因であることは間違いない。
次回からはヒーロー目線です。