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【完結済み】愛し子のトリセツ  作者: 西九条沙羅
第一章

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24/50

番外編③ エリアスと精霊王

第7話で、表情を無くして花壇を見つめていたエリアスが、両親に抱きしめられて正気を戻したお話のところで、エリアスと妖精王が初めて会った時のお話です。



ママもパパも、もう僕のことは要らないのかな・・・。





エリアスは、王宮の温室の花壇の前で、大きなエメラルド色の瞳から一粒涙をこぼした。




アンハルトに来てから、母親と父親はずっと深刻な顔で話し合っていて、母親の泣き叫ぶ姿を見て、エリアスはただただ恐ろしかった。


愛し子であるレイラが泣く度に、城が緊張に包まれる。


侍女やメイドはエリアスを守るために、彼を親から隔離した。


それがどんどんとエリアスに恐怖を植え付ける。


花壇の前で、寂しさに耐えらえずエリアスの心が壊れかけた頃、レイラとアダルウォルフがエリアスを抱き締めた。


かけがえのない愛息子は、ビー玉の様な瞳に何も映さずただ静かに涙を流す。


レイラは、自分の希望が多くの人に恐怖を、悲しみを与えていることに気づいたが、愛息子をここまで追い詰めているとは気づかなかった。

胸に後悔の悲しみが満ち、レイラはお腹の子をあきらめた、





その瞬間 ———————— ・・・・










エリアスは真っ白な空間に居た。





目の前には、尊大な姿で片足を立てて座る、人外の美貌の存在・・・。




エリアスは自分がいきなり知らない所に連れてこられてびっくりした。



「ほぅ・・・。 そなた稀有な・・・。

それほど美しい魂を持っていて、(われ)が気づかなんだとは・・・」




圧倒的な美貌を持つ精霊王は、エリアスを凝視した。



エリアスは、妖精を見ることが出来た。

エリアスにとって妖精たちは、自分たちが住んでいる世界にも存在する身近な存在であった。

しかし目の前のものは、恐れ慄くほどの圧倒的存在感を見せつけてくるこの美貌のものは、住んでいる世界が違うことだけは、幼いエリアスにも理解できた。



通常の人間なら畏怖を感じて、無意識に膝を折っていただろう。

しかしエリアスは、自分がいつの間にか知らない場所に来ていた事による恐怖はあっても、目の前の存在が自分を傷つけるようには思えず、ただただ彼の美貌に見惚れていた。





「我は精霊の王だ。

この世界にいる精霊たちを統べる王。 わかるか?」

「エリアス、分かるよ。ママが妖精さんの「愛し子」だもん」


精霊王は笑みを深め、エリアスに向けて手を差し伸べた。


「おいで」


彼が一言呟くと、エリアスは糸で引っ張られるように宙を緩やかに舞い、そのまま半円を描いて彼の手に収まった。



「わぁ~! すごい!」



彼の腕に抱かれた瞬間、エリアスは母親の腕の中にいるかの様な、得も言われぬ安心感に(いだ)かれた。







「見よ」



精霊王がそう言いながら目の前の空間に手をかざせば、大きなビジョンが二人の前に現れ、見たことのないような景色が早送りの様に動き、エリアスに膨大な情報を忙しなく与えてくる。


それをただ受動し、目を見開いたまま固唾を飲むエリアス。


その様子を満足そうに眺めて、精霊王はエリアスの頭を撫でながら話を進めた。



「万物に宿る精霊達の中で、妖精はとても好奇心が旺盛で人間が大好きだ。

だから我はアンハルトという場所を作った。妖精と人間たちが共存できる所。

そこに我がこの世でもっとも愛した女性の魂を輪廻させた。

我の愛し子だ。

最初は数十人で始まった集まりも、多くの人間が集まり、国となった。

そして、我の愛し子が初代女王となった」


多くの人間が動き始めた世界は、人々の行動により因果律が発生する。

そうすると精霊王ですら、その世界に手出しをすることが出来なくなる。

人間は駒ではない、感情を持って行動をする生き物だからだ。

精霊王は自分が在る領域で、ただ人間たちの営みを眺めていた。

時々思い出したかの様に、妖精の好む魂を輪廻に組み込んだりしていた。

ちょっとばかり、いたずらをしていた事を知っている者は・・・。



「しかしある時、異物が現れた。

違う世界から流れてきた魂だ。

その魂は、この世界で何かをすることも無く、ただただ揺蕩っておった。

だから放っておいた。


まさかそれが、この世界とあちらの世界を繋ぐ”道”となるなどとは。


因果が笑っておるように感じるのは、我だけか?」


(ふーっ)


やれやれ、とでも言うように、精霊王はため息をついた。


「元の世界に戻った魂を注視しておこうかと思ったが、あちらの世界を作った神が嫌がるからな。

仕方がない。

そう思った矢先に、繋がれた道を通って向こうの魂がこちらの世界にやってきた。

その魂は邪悪で、汚れ切っておった。


その瞬間に因果律が発生したのを感じた。


”破滅の原因がこの世界に降り立った” ——————— と・・・。



我の愛し子を我の作った世界に送る理由はただ一つ。

これから起こるその破滅を止めるためだ。」




エリアスは未だにビジョンを見続けていた。



その目には、確かに知識が生まれていた。





「レイラがお腹の子を堕ろすと決めた時、我はお前の中に入ってそれを阻止しようとした。


しかし、お前の魂は、愛し子でもないのに驚くほど美しかった。


レイラの魂と変わらぬほど。


だから我は、お前の魂をここに連れてくることにしたのだ。


ここ、我の居る絶対領域にな・・・。



お前なら、レティシアを正しく導き、守ることが出来ると信じてな」



精霊王が、エリアスの頭を撫でるのを止めた。

エリアスが精霊王を仰ぎ見る。



「やってくれるな?」



「はい。 精霊王様。


まずは戻って、母上を説得致します」


ビジョン、精霊王が見たものを共有したせいで、エリアスには人間の大人以上の知識が送り込まれた。

その知性の宿る瞳をみて、初めて精霊王はエリアスに憐憫の眼差しを向けた。


自分がこの子から、子供時代を奪ってしまったのだと・・・。




「神の忠実な(しもべ)、その名を持つエリアスよ。


お前の命が果てるまで、我とビジョンを共有する。


お前が使命を全うした暁には、昇華された魂は、次代より愛し子の魂として輪廻を繰り返すであろう。


この世に喜びを与える、その名を持つ我の愛し子、レティシアを守り導くのだ」




精霊王は、エリアスのおでこに人差し指で優しく触れ、祝福を送った。







精霊王とエリアスの邂逅は、人間の世界では一瞬の出来事であった。







そしてこの邂逅を知る者も・・・いない。





これにて番外編完結致します。

第2部再開まで、暫くお待ちください^^

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