番外編② ~レオナルドの受難(後編)
「頑張れ、レオナルド君! パート2」
「レティは、イチゴ味とチョコレート味とどちらが好き」
「ケーキならショートケーキだわ。
だけどこのマカロンなら、どっちも選べないわ! レオは?」
「俺はね・・・」
「レティシアちゃん! 今流行りの舞台のソワレのチケットが急に手に入った(午前のお茶会で捥ぎ取ってきた)の!
急だけど一緒に行きましょう!
お忍びだから今から準備をしなきゃ、遅れちゃうわ!!!」
さわやかな秋の午後、風が心地よくそよぐ庭園の東屋で語り合うカップル、
・・・の会話をぶった切る大きな声。
「王妃殿下にご挨拶を」
立ち上がって臣下の礼をするレティシア。
「もう! お義母様って呼んでって言ったでしょ!
もう! もう!!!♡
でも、・・・義娘になるまでは名前で呼ばれるのもいいわね!」
「それもよろしいかと!」
王妃に付いて来た侍女長も興奮した様子で目をかっぴらいて相槌を打つ。
「その件は置いておいて、さっそく準備をしましょう。 レティシアちゃんいらっしゃい」
「ごめん、レオ・・・」
王妃には逆らえないレティシアは、レオナルドとの茶会を切り上げて侍女長と一緒に行ってしまった。
レオナルドは微笑みを浮かべた顔を、そのまま俯かせた。
「レティはどんな小説が好き? 恋愛もの? ミステリー?」
「恋愛ものも好きだけど、冒険ものも大好きよ。 強いヒロインが好きなの! レオは?」
「お」
「レティ! お父様が迎えに来たよ!!! さぁおうちに帰ろう!!!」
さわやかな秋の午後、風が心地よくそよぐ庭園の東屋の、更に奥にある湖の畔で語り合うカップル、
・・・の会話をぶった切る大きな声。
「お父様、もうお仕事は終わったの?」
「レティの王太子妃教育が終わったら、お父様のお仕事も終わりだよ。さぁ、帰ろう」
「宰相、今は」
「王太子殿下にご挨拶を。
殿下、先ほど殿下の執務室に急ぎの案件を渡しておきましたので、今日中に処理をお願い致します。
今すぐ始めないと、今日中には終わりませんよ?
さ、レティ、殿下の邪魔をしてはいけないから、帰りましょうね~。
お茶がしたいなら、お父様と帰りに城下町のカフェに行きましょう」
レオナルドはそっとテーブルに突っ伏して、そのまま中々起き上がる事が出来なかった。
アントンとセラは、レオナルドからそっと目を逸らした。
さわやかな秋の午後、風が心地よくそよぐ庭園の東屋の、更にその奥の湖の、そのまた更に奥の離宮の庭園で、キョロキョロと辺りを睨みつけるこの国の王子。
「大丈夫よ、レオ。今日は誰も邪魔しに来ないわ」
「え!?」
その婚約者であり、白銀色の髪に虹色の瞳を持つ乙女。
「最近、二人でいると誰かが邪魔しに来るでしょ?
全然二人っきりになれなくて、私も寂しかったの・・・。
だから今日は妖精に頼んで、ここには誰も近づけないようにしてもらったの」
頬をピンク色に染め上げて、レティシアは上目遣いにレオナルドを見た。
(俺の嫁(違う)、最強~~~~~~~~!!!!!!!!)
その日レオナルドとレティシアは久しぶりに「きゃっきゃっうふふふ」をした。
二人切りの時間 ———————。
しかし本当は二人きりではない。
王子と愛し子が共も連れずに王宮内とはいえ出歩けるわけがない。
彼らの周りにはアントンやセラを含め、侍女やメイド、騎士がいる。
彼らが大量の砂糖にあてられて吐きそうになり始めた頃、一人の救世主が現れた。
「おや? 何か王宮に変な歪みがあるなと思ったら、レティシアだったのかい?」
「お兄様!!! お兄様はお気付きになるのね?」
「うん。 僕も妖精が見えるし、精霊王様とお話したことがあるからね。 敏感になったようだ」
「さすがお兄様ですわ♡ ご一緒にお茶しませんか?」
「え? いいのかい? 二人の逢瀬だろ?」
「最近、お兄様ともお茶できておりませんもの・・・。わたくし、寂しかったですわ・・・。
ね、レオ。 いいでしょ?」
レティシアは上目遣いにレオナルドを見た。
そこには涙目のレオナルドがいた。
アントンとセラは、レオナルドからそっと目を逸らした。
結局お兄様が最強説!!!




