表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5



 今夜はどうかな?


 ユカリさんはタマキちゃんの寝顔を覗き込んでみました。とても気持ちよさそうに眠っており、鼻を指でツンツンしても置きません。


 ウン、オムライスは明日にして、このまま寝かせた方が良さそう。


 そう思ったユカリさんは奥の和室にお布団を敷き、キッチンへ戻って、タマキちゃんの体を運ぼうとしましたが……


 急にテレビから大き目の警報音が鳴り出します。その内、いつも見ているバラエティがニュースの緊急特番に切り替わりました。

 

 そして画面一杯に映し出されたのは、数えきれないくらい沢山の頭があるドラゴンです。周りを飛び回っているヘリコプターは虫くらいの大きさに見えるから、その何十倍もの長さがあるのでしょう。


 特番のアナウンサーは真っ青な顔で目を血走らせ、「突如、海の真ん中に大きな裂け目ができ、竜が現れて、全人類へ交渉を呼びかけている」と掠れた声で叫んでいます。


 近くを航行中のアメリカ空母から戦闘機がスクランブル出撃し、核ミサイル以外の強烈な攻撃を全て試したのに、竜はへのカッパ。


 反撃する素振りさえ見せず、代わりに口からフッと吐き出した息が、戦闘機を残らず蹴散らしてしまったそうです。


 まさに前代未聞の危機なのですが……


「あ~、バカバカしっ! いつものドッキリでしょ?」


 全然、ニュースを信じていないユカリさんはテレビを付けっぱなしにしたまま、タマキちゃんを和室へ運んでいきました。


 つい先程まで流れていたバラエティは、タレントに幽霊の格好をさせたり、嘘のニュースを流したりする悪ふざけが多い番組。

 

 だから、ユカリさんが笑い飛ばすのも無理はないけれど、この時だけはもう少しちゃんと見ておくべきでした。


 更に二つの異変が生じたのです。


 まず地球の周りをまわっている人工衛星が、大気圏外へワープしてくる大型宇宙船の群れをとらえました。


 一隻や二隻ではありません。全部で一千隻を超え、女王を名乗るハチにそっくりのエイリアンが、「人類と交渉したい」とテレパシーで語り掛けてきます。


 そして、最後に現れたのは人間そっくりのロボット軍団。


 世界中の大都会に光り輝く大きなタイムマシンが現れたかと思えば、人間の武器なんて全然きかないバリヤーを張り、ロボットのリーダーが降りて来ました。こちらも「全人類へ告ぐ」と電子音の声を張り上げます。


 驚いた事に、彼らの要求は全く同じ内容でした。


「我々の故郷を救った救世主・タマキの力を必要としている。今すぐ、身柄を引き渡して欲しい」


 慌てた全世界の偉い人達は、竜、エイリアン、ロボットの代表をその夜の内に国連へ招き、話し合う事を決めます。


 救世主とは何なのか?


 タマキとは何者なのか?


 「引き渡さないなら、攻撃する」なんて言われ、大国のえらい人は諜報網を総動員したし、テレビやネットでも情報提供を呼び掛けたのですが、残念ながら誰も、何もわかりません。


 そりゃそうです。小さな女の子が見た「夢」のお話が現実になった、なんて誰にも想像つきませんよね。


 何より、当の本人がこのニュースを見ていなかった。


 ユカリさんは、最初のニュース速報から先、大きくなっていく騒動を知らぬまま、タマキちゃんを寝床へ運び、傍らで優しく髪を撫でている内に自分も深い眠りへ落ちてしまったのですから。


読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] と、飛んでもない事になってる!!(゜Д゜;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ