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後日談 ハイビスカス国へ

 

 婚姻式を終えて愛するナターシャを妻に迎えセルリアンは幸福の絶頂にいた。


 王妃は病で臥せってナターシャとの婚約式以前から顔を見ていない。ナターシャを嫌う母親の事だから怒って離宮に籠ってしまったとセルリアンは思っていた。


 会っても煩わしいだけだが流石に1年以上も会わないのは不義理と思い、見舞いを申し出ても断られた。


『王妃はアリシア嬢に固執し絶対に王太子妃に迎えたかった。思い通りにいかず気を病んだのだ。お前たちは気にしなくて良い』

 父親である国王にはそう告げられた。


 ナターシャの母親であるエヴリアナ伯爵夫人は国王の従妹である。その従妹を国王は心から愛していた。

 だからその娘であるナターシャと息子セルリアンを婚姻させてやりたいと考えていたのだ。

 王妃が何を言ってもこれだけは覆せなかった。


 国王の後押しもあり、セルリアンは望みが叶った。

 王太子としてナターシャを支えながら国の為に尽くせば王妃も納得してくれる、セルリアンはそう考えていた。


 だが何もかもが上手くいかない。


 まず叔父のアレンが王族という地位を捨てて国を出た。


 次にヒューゼン公爵家の当主交代だ。


 アリシアの父親エイデルは長男に家督を譲って次男と共にハイビスカス国に向かい、私有財産を投資してホテル業を開始。政事から身を引きヒューゼン公爵家の影響力は薄れてしまった。


 ヒューゼン公爵一派の後ろ盾を失ったセルリアンの立場は苦しい。凡庸な国王を支えていた王妃の存在の大きさを改めて思い知らされる。

 その王妃も急病で亡くなりセルリアンは臨終に立ち会えなかった。



 ──5年後。



 王家の威信は落ちて、宰相のオーエン公爵一派が国の実権を握っていた。今や国王は宰相の傀儡と成り下がっている。財政難のナバール王家に対し宰相一派は私腹を肥やし繁栄を誇っていた。


 ナターシャに懐妊の兆しが無く、それを理由に宰相から側妃を迎えるようセルリアンは毎日迫られている。

 宰相一派のコートバル侯爵家の末娘を強く勧められ、今のままでは王命で側妃を迎えさせられそうだ。


(このままでは国を宰相に乗っ取られてしまう!)


 危惧したセルリアンはかつての宰相グレイソン老侯爵に相談を持ち掛けた。


「陛下には引退を願って早々に殿下が王位を継ぎなされ。側妃を迎えるのは賛成ですな。アリシア嬢を妃に迎えておればこの国がここまで混迷することは無かったでしょうな」


「それは……もう言ってくれるな。アリシア嬢は亡くなっている」


「ふむぅ、オーエン公爵の力を削ぎ落とすには大国の姫を迎えるのはいかがかな?もう側妃は嫌だなどと言ってる場合ではないでしょう」


「大国の姫など、我が国に来てくれるだろうか」


「殿下には美貌という武器があります。そうですな──ハイビスカス国のアレン様を頼ってみては?」


「叔父上を? なぜハイビスカス国にいるのだ?」


「はぁ、本当に殿下は世界情勢に疎いですな。そんなだから……まずはあの国を訪れてその目で確かめなされ」


 憐れむような目で見られてセルリアンはムッとしたが老侯爵のアドバイスを受けてハイビスカス国に向かうことにした。


 *



 5年間一向に懐妊しないナターシャにとって宮中は針のむしろであった。強いストレスで弱っているナターシャに側妃の話を切り出すのは忍びなく、セルリアンはさり気無くハイビスカス国への旅行を促した。


「ハイビスカス国にアレン様がいらっしゃるの?」

「そうなんだ、南国の特に何も無い海に囲まれた島国だ。生活水準も低い」


「そのような国で暮らしているなんてお気の毒ですね」


「ナターシャ、気分転換に一緒に行かないか?」

「行きたいです。リアンと旅行なんて久しぶりですね。準備しますわ」


 嬉しそうなナターシャを見て、やはりアレンに側妃の相談をしに行くとは言えなかった。



 宰相には「お忙しい中を旅行ですか?良いご身分で…… あ、王太子殿下でしたね。ははは」などと嫌味を言われ「不敬だぞ!」と言い返しても笑って宰相は去っていった。


 セルリアンは無力な自分が嫌になる。


『アリシア嬢を妃に迎えておれば……』

 グレイソン老候爵の言葉がセルリアンの頭にこびり付いて離れない。

「くそっ!」



 ハイビスカス国には訪問の旨の書簡を出し『歓迎する』と返事を貰ったセルリアンは、数日後ハイビスカス国に向かった。


読んで頂いて有難うございました。

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