エピローグ
南の国ハイビスカス国。
こんがり日焼けしたアリシアとアレンはヒューゼン公爵家の別荘で寛いでいる。
ここで彼女はアリアと名乗っていた。
デッキに長椅子を並べて、心地よい海風に吹かれ、夕日を見ながらシャンパンで乾杯する二人は幸福に包まれている。
アレンはアリシアを抱き寄せて何度も口づけを交わした。
何年も前から、アレンは彼女に夢中になってしまった。
「外務大臣になるんじゃないの?」
「あー 面倒だから断った」
「いいのかしら? 王弟なのに。お国の評判が落ちてるわよ」
「セルリアン王太子にコールマン侯爵令嬢を側妃に迎えて、立て直すだろう」
「アレンは私のような悪女のどこがいいの?」
「俺も悪人だから。似た者同士で良いじゃないか」
「貴方は好きで放蕩王子をやってた訳じゃ無いでしょう。私は好きで悪女をやってたのよ」
「王太子妃になれたかも知れないぞ?」
「アレンがいるからセルリアン様に未練はないわ。王妃は失脚させたから満足よ」
海を茜色に染めながら夕日が沈んでいく。あんな風にセルリアンの海に熱くアリシアも沈んだのだろうか───
アリシアの希望通りセルリアンの心にアリシアは深く刻まれた。
それが復讐と言えるのかは分からんが、アリシアが満足したなら良いだろう。
──恋人としては複雑だとアレンは思う。
「もうこの国で暮らそうかな」
「ずっとここで暮らせば良いわ」
この国の永住権をとって、アリシアにプロポーズしよう。
海辺のホテルを買い取って、二人でのんびり暮らすのも悪くないし、もしもアリシアが事業を始めたいと望むなら、俺は協力を惜しまない。
アリシアの心には俺だけを刻み込んで欲しい。
「俺のアリシア、愛してるよ」
──あの日アリシアを拒絶し、ナターシャを選んだセルリアンにアレンは心から感謝した。
最後まで読んでいただいて有難うございました。
後日談もヒマ潰しに読んで頂けると嬉しいです。




