表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボロボロに傷ついた令嬢は初恋の彼の心に刻まれた  作者: ミカン♬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/11

アレン

 アレンが初めてアリシアに会ったのは彼女がまだ11歳になったばかりのとき。体の傷がまだ完全には癒えず、彼女はベッドの上でうつぶせに寝転がっていた。


「アリシア嬢、具合はどうかな? お誕生日おめでとう! これは王家からのお祝いだ」


 アレンは花束とたくさんのプレゼントを部屋に運ばせた。

 アリシアはキョトンとした顔を彼に向けた。


「なぜセルリアン様が来てくれないのかしら。あなた誰なの?」

「俺は王弟のアレン、初めましてアリシア嬢」

「ああ、放蕩王子ね。わざわざありがとうございます。陛下にもお礼をお伝えしておいて」


 彼はこんな高飛車なご令嬢は初めて見た。

 8歳も年下のくせに大人びた態度。

(俺は王弟なんだぞ!)と、デコピンしてやりたかった。


 セルリアンが拒絶しているので、アレンにこの生意気姫を押し付けようと陛下は考えている。

 美少女だ。将来は大した美女に成長するだろうと、彼は思った。


「セルリアン様はどうしてるの?」

「ナターシャが登城禁止になって嘆いている」

 アリシアが悲しそうな顔をした。

 なので、セルリアンを本当に慕っているのだと、アレンはアリシアを気の毒に思った。


「ねぇ、アレン様は何回王妃様に狙われたの? 私はこれが初めてよ」

 賢い彼女は分かっていた。セルリアンは狙われてなどいなかった。


 ────アリシアが王妃に狙われていた。


 その上あわよくば、アレンに罪を着せようとした。

 セルリアンの王太子の座を危ぶんで、彼を排除しようとしていた。


 捨て身の刺客は実に上手くやった。

 セルリアンとアリシアが接触した時点で襲って、彼女が王子を庇った風に仕上げた。

 理由はアリシアを傷物にして王家が責任をとって、ナターシャに惚れ抜いているセルリアンに無理やり嫁がせるため。


 だがセルリアンは拒否した。


「絶対私の方が国母に相応しいのにね」

「ナターシャでは荷が重すぎるな。もっと強かでなければ潰れるだろうな」


 アレンはアリシアに興味を持った。


「ところで何故自分が狙われたと気づいた?」

「だってセルリアン様を庇って倒れた私を、更に切り付けたんですもの」


「なるほど、最初から気づいてたのか。公爵は?」

「父も当然気づいたわ。謀反を起こすと言って怒ったのを、お兄様たちと必死で止めたのよ」


 よくも王家は潰されなかったものだと、アレンは苦笑いした。


「陛下は何を考えていらっしゃるの?」

「君を俺の妃にしたいようだ。セルリアンは諦めるんだな」

「初恋だったのよ。悔しいわ、全然好きになって貰えなかった」


「アリシアはどうしたいのかな?」

「後悔させたいわ。私を妃にしておけば良かったって。セルリアン様の心に一生私を刻み付けたい」


(子どもと思っても女だな。嫉妬でとんでもないことを言ってる)


 ──アレンを見上げて、彼女の話はまだ続いた。


「私が切られたのに、真っ先にナターシャを心配したのよ。横でコケただけなのに」

「それは甥が失礼をした」


「傷がまだ痛む私に『好きじゃない』なんて告白しなくても良いと思わない?後で手紙でも書けばいいのよ」

「デリカシーに欠けるね。申し訳ない」


 会話しているうちに、アリシアもアレンに興味を持ったようだ。


「私、アレン様と婚姻を結んでも良いわ。でも協力して欲しいの」

「なんでも協力しよう。お望みは?」

「私、不幸でボロッボロな令嬢になりたいの。可哀そうな傷物令嬢になるのが望みよ」


 セルリアンに復讐しようと、アリシアは瞳を輝かせて悪い顔をしている。


「アレン様も今まで通り放蕩王子を演じてね。王妃様に殺されないでね」

「ではアリシア嬢が成長するまで俺は自由にさせて頂こう」

「いいわ。でも他所で子どもを作れば、その時点で決裂よ」


 ────アレンとアリシアは契約を結んだ。


 兄である陛下には「アリシアには、気に入って貰えなかったみたいだ」とアレンは言っておいた。

 陛下はさほど気にしておらず「公爵には一応誠意だけは見せないとな」そう言って笑った。


 アリシアは4年間で5回自害しようとした。

 本気なのか演技なのか、アレンは心配したが、ぜんぶ演技だった。

 バルコニーからジッと下を覗き込んだり、ナイフを見つめるだけで侍女達は大騒ぎした。

 浅い池に飛び込んだこともある。


 最後に腕に傷をつけようとしたら、加減を間違えて深く切ってしまったそうだ。

 傷はほとんど残ってないけど手袋で隠し続けた。


 アリシアは執念深く7年もかけて不幸な令嬢を演じ多くの同情を集めた。

 7年間、遊んでいた訳じゃない。その仮面の下で将来に向けて己のスキルを磨いていた。


 アレンが将来外務大臣になると聞いて外国語の習得に力を入れていたなどと、他人は誰も気づかなかった。


 執着されたセルリアンは気の毒なほど冷酷と囁かれ、ナターシャは肩身の狭い立場に立った。──二人は、決して敵にしてはいけない令嬢を敵にしてしまったのだ。


 アレンとの婚約を果たして尚、不幸な令嬢を演じてきたアリシア。

 そろそろ茶番を終わらせても良いだろうと、アレンは思ったが。


「は? 死ぬだって?」

「ええ、やはり死亡した方が殿下達の心に残ると思うの」

「もう十分だと思うけどな。死んでどうするんだ?」

「他国で暮らすわ」


(おいおい、俺の婚約者の自覚はないのか?)

 ちょっと悲しくなるアレン。


「別人になって生まれ変わるの、お父様も賛成してくれたわ。もう殿下達はいいわ。でも王妃は絶対に許さない! そろそろ退場して頂かないとね。あの顔を思い出すと肩の傷が疼くのよ」


 王家はヒューゼン公爵家に見限られたようだ。


 アレンとヒューゼン公爵で、揃えた王妃の悪事を兄である王に突きつけると、早々に王妃は軟禁された。


『必ずや後悔するでしょう! この国はもう終わりよ!』

 そう呪いの言葉を残して王妃は表舞台から去った。


 陛下はアリシア襲撃の件は知っていたようだ。

 他にもいろいろと黙認していた節がある。


 だが、追及はしない。

 アレンはヒューゼン公爵をこれ以上怒らせたくなかった。


 アリシアは自害したと伝えられ家族だけの葬式が行われた。

 もちろんアレンは参加せず、最後までクズな男で通した。


 ────アレンはもうこの国に未練など全く無いのであった。


読んで頂いて有難うございました。

王妃の悪事=裏の闇ギルドとの繋がり等です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ですよねー!!と思う展開ではあります。 だつて許せるか王子のこと?アリシアの言う通り、怪我で苦しんでる所にわざわざ言いに行くかか?そんなことされたら私なら赦さないですもん。一生後悔させてやり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ