第六十七話 相談
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はぁ~、疲れた。特に長い時間いたわけではないのだが、お偉いさんと話すのは精神がやられてしまう。
俺は家に着くと着替えないままベッドにダイブした。
本当はこんなことしている暇はないのだが、体が動かない。
今日は授業がある日なのに。
だが、最近新しく教師を雇ったとキシリカが言っていたので、サボっても大丈夫だろう。
俺もそろそろ教師を引退してもいいかもしれないな。
あまり好評もよくなかったし。
このまま枕に埋もれて寝てしまいたくなる。
昨日キシリカと寝たので枕からは微かにキシリカの匂いがしてたまらない。
コンコン
もう少しで眠りにつきそうだったところに、ノックが聞こえてきた。
「は~い」
この家には俺の身内しかいないので、ベッドに寝転んだまま返事をした。
「入るわよ、って何しているのよ。着替えずに寝転んだら服にしわが付くわ」
入ってきたのは師匠だった。
授業がある時間にこの家にいるのは珍しい。
「なんだ師匠か。師匠にしわがどうとか言われたくないね」
「私はしわが付かない服を着ているからいいのよ。あなたと違って安い服にしているから」
「本当だ。安くない給料上げているんだからもっと良い服買えばいいのに」
「さも当たり前のようにスカートの裾を触らないでよ。パンツが見えるじゃないのこれでも乙女なんだから」
「ふ~ん」
「『ふ~ん』じゃないのよ!私のことなんだと思っているの?悩みがあるなら言ってみなさいよ」
そう言って師匠はベッドに腰を下ろした。
懐かしい、この世界の母親に怒られたて、泣いて部屋にこもっていた時、様子を見に来たのは父親や兄ではなく師匠だった。
いつの間にか俺の部屋に入り、隣に座っている。
俺はそれを気持ち悪いとは全く思わずに、頭を撫でて貰っていた。
しかし、もう俺は大人になった。いつまでも子供のように頼ってはいられない。
「別に何もないよ。...本当はあるけどさすがの師匠でも言えない。だから今はそっとしておいてくれ」
「...そうなのね。実はあなたが何に悩んでいるのか知っているの。恩恵のことでしょう?」
「は?何で知っているんだよ」
「師匠は弟子のことなら何でもお見通しなのよ。そして、この師匠である私があなたの悩みを解決できる策を授けて進ぜよう」
「お見通しって、結局は盗み聞きでもしていたんだろう。弟子も弟子で師匠のことはお見通しなんだよ。」
師匠が一瞬ギクッと反応した。
「そんなことよりもその解決策って何?」
「そ、そうよ。今は解決策の話よね。ここだという時には私の名前を出しなさい!そしたら何とかなるから!」
「はぁ~、寝よう。わざわざ様子を見に来てくれてありがとう」
「あ!信じていないわね。本当に何とかなるから!」
師匠は子供のように俺の体を揺らす。
「わかったから!揺らさないでくれ!」
「わかったらさっさと動く。寝ている暇なんてあなたにはないわよ」
「どういうことだ?」
「シルトクレーテ男爵はおらぬか!至急王城へ向かうべし!」
「ほらね」
「...行ってくる」
「はい、いってらっしゃい」
いつにも増して勘が鋭い師匠に翻弄されながらも、声が聞こえる方へと向かった。
向かった先では、王家の使いが向かいに来ており、豪華な場所が止まっている。
孤児院から多くの子供が窓から覗いており、こっちを除いていた。
そんな子供たちの手を振り、馬車に乗り込んだ。
「よく来た。さっき会議が終わってのう。ようやく結論が出えた」
「はい」
馬車で王城に着き、そのまま謁見の間に連れていかれた。
謁見の間では前の時とは違い、ここにいるのは陛下と護衛の先生、ロメオ、後なぜか父上がいた。
「他の者達は色々忙しい身の者達でな、今日はいつもより時間を取らせたためここにはいないことを許せ。お主の父親は急遽呼び出した。こう見えて子供のことについてはうるさいからな」
陛下は少し笑いながら冗談を言った。
しかし、父上は全く反応せず、目をつぶって立っている。
「まぁ、そこまで緊張せずともよい。お主がこの件について悩んでいるのは我もわかっておる。なので早速結論から言っておこうか」
「お願いします」
心臓がバクバクする。
もう一度キシリカ達と話し合いをしておけばよかった。
師匠の言ったとおりに寝ている暇なんてなかったな。
「結論を言うといった後で悪いが、実は会議では意見が2つに割れてな。そこで最後はお主に任せようと思う。それでどうだ?」
「わかりました」
「1つ目は予想していると思うが、妻を沢山娶ることだ。この場合すでに候補は上がっておる。少なくても20人になるだろうな」
「そうですか...もしかしてほとんどが上級貴族のご令嬢ですか?」
「そうだ。それも会議に出ていた貴族の孫娘になるな。しかし、メイドでも妾でも扱いはどうでもいいと言っていたぞ」
扱い方はどうでもいいと言っても、それは陛下の前だけだ。
普通自分の孫がそういう扱いされていたら一言俺に追及してくるだろう。
しかし、そんなこと陛下には言えない。
「わかりました。それで2つ目は...」
「2つ目はあと1人お主に娶って貰う。まずは1人だ。キシリカは我が娘だから妊娠はしにくいから一旦置いといて、茉莉奈嬢は妊娠しているからお主の手は空いておるのだろう?その間に1人相手をしなさい」
「それでいいんですか?1つ目に比べて幾分かましだと思うのですが」
「もちろんこれだけではない。2つ目の策にはダンジョン攻略も付いてくる。お主やキシリカ達が攻略したダンジョンには続きがあるのだろう?ならそのダンジョン攻略にも付き合って貰う」
そう来たか...
予想もしていなかった提案が出てきた。
あんなダンジョンもう2度と行きたくないと思ったのに。
それに加えて更に奥に進むなど考えられない。
「攻略メンバーはどうなるのですか?キシリカも徴集されるのでしょうか?」
「キシリカは留守番だな。そして、メンバーはまだ決まっておらん」
キシリカが参加しないということは本気で挑む気なのだろう。
ロメオは確定として、もしかすると他の魔導士も参加するのかもしれない。
それならここで2つ目の策を選んだ方がいい。
しかし、俺が死んだ方が茉莉奈は悲しむかもな。
う~~~~~ん....................決めた!
「2つ目の策でお願いします。ダンジョンの件お任せください」
「わかった。いつでも参戦できるように準備をしておきなさい」
「わかりました」
ついに決まってしまった。
もう後戻りはできないので、やるしかないのだ。
はぁ~、軽い気持ちでダンジョン攻略なんて引き受けなければよかった。
もしかしたら次も何かあるのかもしれないな。
「それで嫁の候補はあるのか?こちらとしては貴族の娘なら誰でもいいぞ。いないならこちらで決めるが?」
「え?」
そうか結局1人娶らなければいけない。
いやなダンジョンの所為で頭になかった。
そして、貴族の令嬢か...俺に知り合いなんていないぞ。どうしよう、どうしよう。早く答えないと勝手に決められてしまう。
孤児院の先生に貴族はいたかな?いや、いるはずないよな。貴族に募集掛けてないもん。
さっきの受付の人はどうだ?困ったら頼れって言っていたし。しかし、あれだけ綺麗なら彼氏くらいいるだろうな。
くそ!もう誰もいないぞ。早く言わないと、もう時間がない。
こうなったら後先考えずに一旦答えてしまえ!
俺は一番最初に頭に浮かんだ人物の名前を陛下に伝えた。
「モモでお願いします」
「モモ?」
俺は何を言っているんだ?陛下も困っているじゃないか!
そもそも平民だし、陛下が求める相手としてはふさわしくないだろう!
もう顔上げられないよ~。
これから陛下にはおバカちゃんを見る目を向けられる。
しかし、陛下が返した言葉は俺の予想の正反対だった。
「モモって、シュナイダー家の長女か。そんな者と知り合いとはお主も隅に置けないな。我は反対する余地はないから励め」
「え?......わかりました.......」
意外な反応に俺は反応できないで、俺は心にない返事をしてしまった。
あれ?師匠って貴族なのか?
何か俺の知らないことがまだまだあるらしい。
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