第六十六話 本心
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王城に入り、そこから謁見の間に行く道を右に曲がったところに受付がある。
ここで謁見や国にかかわる話をするときにここで予約をするのだ。
すでに昼になりかけている時間なため、受付にはずらりと人が並んでいた。
陛下への謁見の予約をとるためなので、豪華な装飾の服を着ている人が並んでいるイメージがあるが、こんなことは部下が行うため貴族などはめったに並ばない。
大体は執事服を着た年配の男性となっている。
俺も自分で並ばずに部下を並ばせなくてわな。
次からは師匠にでも並ばせようと思う。
「次の方どうぞ」
10分ぐらい並んでいるとようやく俺の番になる。
暇を持て余したじじいが話しかけてきてめんどくさかったから長く感じた。
俺を呼んだのは20代後半くらいの驚くほど美人の女性だ。
さすがは王城。見た目も能力もエリートしか働けない場所だから、どこもかしこも美人だらけとなっている。
「陛下への謁見を頼む。恩恵について大事な話があると伝えてくれればいい。出来るだけ早くな」
「あの、もしよかったら今すぐにでも聞いてきましょうか?もしかしたら陛下の予定が空いているかもしれませんので」
「いいのか?ならお願いする」
俺がそう言うと、後ろで書類整理をしている女の子を呼んで、どこかへ行かせた。多分陛下の予定管理をしている者の所に行ったのだろう。
「それにしてもこんなことしてもいいのか?前の人も謁見の予約していたけど...」
「あまり盗み聞きをしてはいけませんよ。今回はお貴族様が並んでいた為、早急の事態だと思ったので、あと恩恵ってあれですよね?ダンジョンの」
「ああ、よく知っているね」
「私これでも大学出ているんで」
「エリートだね...」
恩恵のことなんてダンジョン好きの師匠を持つか、相当の物好きではないと知らないのに、彼女は知っていた。
一体何を勉強すれば恩恵のことを知ることができるのだろうか、戦闘狂のキシリカでも知らなかったのに。
そうこうしているとさっきの女の子が戻って来た。
「これから謁見ができるようです。このまま真っ直ぐ謁見の間に向かってください」
「わかった。ありがとう」
「はい。また何かありましたら頼ってください」
俺は言われるままに謁見の間に向かった。
正直、このまま謁見することになるとは思わなかった。
あまり多くの人に俺の恩恵のことを話したくはないが、父上と師匠には相談したかったからだ。
くそ、後回しにしたのが仇と出たか。
考える暇もなく謁見の間に着いてしまった。
嫌な汗がダラダラと出る。
「おい!大丈夫か!」
「え?はい、大丈夫です」
謁見の間を守っている衛兵にも心配されるほど今の俺はやばいのか?
もう帰りたい。
「ちょっと、待ってください!」
ここで後ろからドタバタと走って来る音と同時に、聞いたことのある声が聞こえてきた。
ロメオだ。
「まだ時間ありますか?少し時間ください」
「...数分だけだがある。心を落ち着かせよ」
衛兵が気遣って俺に話しかけてくれた。
「どうしたんだよエルくん。冷やかしに来てみたら顔色が物凄く悪いからビックリしたよ」
「何でお前がここに来たんだよ。謁見はさっき決まったばっかだぞ」
「いつもは陛下の護衛をしているからこのくらい僕の耳にはすぐに入って来るんだ。それよりも恩恵はそんなにやばいの?」
「かなりやばいぞ」
「そんな...国が滅びるくらいにやばい?」
「それはわからないが、うちの家庭が滅びそうだ」
「...どういうこと?」
「お前は謁見に来れるのか?」
「いや、謁見中は先生が護衛をするから僕はここまでだね」
「なんだよ、使えねえな」
「そう言いながらも来てほしかったんだ!それに僕と話していると顔色も戻って来たじゃんか!」
「きもいぞ。じゃあ行ってくる」
「ひど!」
「では、お進みください」
衛兵に言われるままに陛下の前に進んだ。
はたして俺は言いたいことを伝えることはできるのだろうか。
「よく来た、シルトクレーテ男爵。今回は先日攻略をしたダンジョンで得た恩恵について話があるということだな。では、説明をして貰おうか」
「はい、私が得た恩恵はですね......」
俺は細部まで恩恵である“魔出生”のことを話した。
細部までと言っても、そう難しいことはないため、数分で説明が終わった。
「う~ん」
真顔になった陛下は説明が終わった後も、一言悩んでいるようなセリフを吐いてから黙り込んだ。
陛下だけでなく、俺とロメオの先生も、その他の役職ある貴族も考え込んでいる。
予想通り、このことは簡単には片づけることのできない案件になってしまった。
「これはまた恐ろしい恩恵が出たのう。それもお主にか」
「それはどういうことでしょうか?」
「こんな内容の恩恵の解決策など簡単だ。お主が妻をたくさん娶り、魔法が使える子を産ませればいい。たくさんの子を育てられない場合は王家が引き取ればいい。その代わり王家が育てた子は王家の管理下に入るがな」
陛下の回答に俺は何も驚かない。俺が予想していた回答だったからだ。
しかし、陛下の話には続きがあった。
「そこにいる皆も一見黙っておるが、そわそわしておる。お主に余った娘を嫁がせて、将来魔法使いを得ようとしておる。なぜ動かないかわかるか?」
「陛下がいるからでしょうか?」
「間違ってはおらんが、こ奴らにも発言権がある。ここで多少アピールをしても何の問題もない」
「それなら...」
「まぁ、分からんか。キシリカだ。キシリカがお主の正妻だから誰も発言できないんだぞ」
「え?でもすでにキシリカは我が家の人間で、王家とは関係ありませんよ」
「確かにキシリカは王家ではない。しかし、我が娘だと言うことには今まで通り変わりない。そして、あまり有名ではないが我が一番可愛がっていたのはキシリカだった。そのキシリカが、我に助けを求めたらどうすると思うか?」
「あ~、大変なことになります」
何がとは言えないが、ここにいる者は全員同じ予想をしている。
いかに王家と仲がいい貴族でも陛下の一言だけで消されてしまうので、少しでも機嫌を損ねるのを恐れている。
「だが、これは我の個人的な意見で我が国のことを考えるとお主にはもっと妻を持って欲しい。そもそも男爵で妻が2人は少なすぎる。それに1人は商人の娘でもない平民だ。平民が悪いということはないが、何かあっても手を貸してくれないぞ」
「確かにそうですけど」
貴族の娘を娶ることで、その貴族と繋がりができる。
繋がりができることで、お互い助け合い、家の発展に繋がる。
しかし、平民だとそれがないのではないかと陛下は伝えてきた。
そもそも茉莉奈は異世界人なので親がこの世界にはおらず、そのことを陛下は知っているので心配してくれているのかもしれない。
「そこでお主はどうしたい。2人の嫁のことは気にせず自分の考えを言ってみろ」
「私はこのままがいいと思っています。私たちの仕事は平民がいる孤児院の経営です。ここで貴族の令嬢が働こうとも反発があるでしょう。それにより傷つく子供が出てくるかもしれません。どうか、どうか、これからの国の発展のためによろしくお願いします」
申し訳ないが国と子供を盾にした。
必死に考えて、今の俺にはこれしか思いつかなかったのだ。
「それは国についての考えだろう。我はお主の話を聞いておるのだ」
「え?」
「だからお主の本当の考えを我に伝えろと言っておる。子供は夫婦仲が良くないとできない。我も男だからわかるが、年を取るとそう毎日とできなくなる。そうなると無理やりその娘とさせるよりもキシリカとさせたほうが良い」
陛下の指摘に俺は背中がゾクりとした。
意外にも俺の話をよく聞いている。
それに加えて、陛下が一言付け加える。
この陛下の話が正しいのかは俺にはわからないが、そんなことよりも俺に気を使っているということがわかる。
「私は、私はこのまま2人で暮らしたいです。この日常を壊す者がいたら相手が神でも戦う所存です」
「フッ。あい、わかった。それではこれから会議を開く。シルトクレーテ男爵以外は付いてこい、シルトクレーテ男爵は帰っていい」
「はい、わかりました」
ようやく長い謁見が終わった。
このあと、すぐに家に帰り、ベッドにダイブしたのだが、それまでの記憶が全くなかった。
これからどうするのかは神が決めるのだろう。
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