第六十五話 茉莉奈の本音
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茉莉奈の優しく俺を起こす声が聞こえてきた。
どうやらいつの間にか寝ていたようだ。
俺は自分の腕の中からいなくなっているキシリカを確認しながら朝起きた。
それからいつものように顔を洗ってから着替え、準備が終わったら自分の席に着き、朝食を待つ。
茉莉奈は俺が席に着いてから盛り付けを始めるので、準備ができていないわけではない。
すべての料理が机に並び終えた後、何も準備を行った形跡がないキシリカがやってきた。
形跡がないというか起きた時のままだ。
そんなキシリカの姿を無視して、俺と茉莉奈は味噌汁を啜った。
いつもと同じ味。
同じと言っても毎日具材が変わっているので飽きることはない。
キシリカも眠たげな目をしているが、黙々と食べている。
ここで俺は3人がそろっていることと、他に誰もいない今しかないと思い、恩恵のことを話すことにした。
「2人とも聞いてくれ。キシリカは知っていると思うが、この間のダンジョンを攻略したことによって俺は恩恵を得た。その恩恵の詳細が分かったから2人に話しておくよ」
「そうなのね!私気になっていたのよ!」
「恩恵ですか...私には何なのかわからないのですが、そのまま話を続けてください」
「わかった」
今大切なのは恩恵が何なのかではなく、“魔出生”の内容なのでそのまま俺は話を続けた。
「俺の恩恵は“魔出生”と言って、どうやらこれから生まれてくる俺の子は全員魔法を使う才能を持って生まれてくるそうだ。これが本当なのかどうなのかはまだわからないが、99%合っていると言っても過言ではないと思う」
「え!それじゃあ私の子は魔法使いになれるってことよね!そんな嬉しいことはないじゃない。もっと喜びなさいよ」
「そうですよね。もしかしたらこの子も魔法使いに?」
茉莉奈はそう言って自分のお腹を優しく撫でた。
「いや、申し訳ないけどさすがに恩恵を貰う前に授かった子は違うと思う。でも、魔法使いになれる可能性はゼロじゃないよ。魔法使いは親とか関係なく生まれてくるから」
「そうよ。それに茉莉奈も1人産んで「はい、終わり」ってことはないでしょう?私は5人子供を産むつもりよ」
「いえ、私は特に魔法使いに拘っていないのでこの子が魔法使いになれなくても悲しいとかはないです。それに、旦那様が魔法使いじゃないからこの家から追い出すことも絶対になさそうですしね」
「そんなことするわけないだろう」
俺は少し怒り気味に言い返した。
それに対して茉莉奈はクスクス笑っている。
どうやらからかっているようだ。
「それよりも...「そんなことよりも恩恵を貰ったのがあなたでよかったわね。もし女の私が貰っていたら1年に1人しか産めないけど、男のあなたならそんなこと考えなくて済むもの」
さすが元王族のキシリカだ。考え方が男前すぎる。
俺がこれから話そうと思っていた妻が増えるかもしれないことについて、話す前に自分の意見を伝える。
キシリカにとっては魔法使いが増える方が嬉しいようだ。
「キシリカが言うように俺が男だからこその問題点もあるんだよ。もしかしたらこのまま3人で暮らすことはできないかもしれないんだ。子供は別として、俺は二人と暮らしていきたい」
俺は話を濁さずに言いたいことを2人に伝えた。
ここで俺がはっきり言わないと本当の気持ちを2人は伝えてくれないと思ったからだ。
俺はまずキシリカの方を見た。
「でもこの国と言うか他の国でも魔法使いは貴重よ。ここは家のためにも孤児院のためにも魔法使いを増やして、力を強めていかないと。あなたの正妻は何があっても私よ。私よりも身分が高い人なんていないんだから、私たちの生活を邪魔する奴は私が追い払うわ」
ここで更なるキシリカの王族発言。
自分のことよりもまずは家のこと。貴族の在り方としては正解の答えをキシリカが言い出した。
俺みたいな中途半端な考えの貴族とは考えが違うのだろう。
だが、その後に俺の悩みを解決してくれる案を出してくれた。言い方はちょっと冷たいが、俺のことを考えてくれているのは伝わってくる。
俺は次に茉莉奈を見た。
「私はこのままがいいです。このままこの子を産んで、3人で育てて、キシリカ様も子供を産んで、私も面倒を見て、大きくなってこの家から出ていくのを見届けるんです」
「茉莉奈...」
茉莉奈は泣きそうな声でお腹をさすりながら話を続けた。
「でもあなたの元に来るのは全員身分の高い貴族の方でしょ?そしたら私とこの子の居場所がなくなるじゃない!」
「そんなことないよ。俺が2人のこと確実に守ってあげる」
「...でも!」
いつもと違う口調になった茉莉奈に俺は少したじろぎながらも、それを紛らわすように茉莉奈の話を否定した。
しかし、茉莉奈はそれも否定する。
知っているのだ。陛下の命令は断ることができないと。
この話はダンジョンに行く前に沢山話した。
陛下の命令だから嫌でもダンジョンに行かなければいけないことを。
「茉莉奈きっと大丈夫よ。茉莉奈が嫌なら私も嫌だわ、だって私たち家族なんだから」
「...キシリカ様、お願いします。この子のために居場所を残してあげたいんです」
「わかったわ、任せなさい。私が直接父上に伝えておくから安心するのよ。ほら、もう部屋に戻りなさい。後のことは私たちがしておくから」
茉莉奈はキシリカに言われるままに自分の部屋に戻っていく。
俺はただその小さな背中を見届けるしかなかった。
茉莉奈を部屋に送ったキシリカが戻って来る。
「ほら、あなたもしなくてはいけないことがあるでしょう。授業が始める前に行っておきなさい」
「...ああ、そうだな。ありがとう。行ってきます」
俺は頼りになりすぎて愛おし過ぎるキシリカに軽くキスをして、王城に転移した。
恩恵の話を陛下にするために謁見のアポを取るためだ。
この話をどうするかで、俺たちのこれからの夫婦生活が変わってしまうだろう。
俺は気を引き締めて家を出た。
ここで3人の一通りの会話を聞いていた者が1人いた。
大事な話の所為で気づけなかったのか、それとも気配を隠すのが上手い者だったのかは、今はわからない。
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