第五十三話 実力
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「エルくん、着いたよ」
「知ってる。誰かさんのせいで寝ることができなかったからな」
俺たちはほぼ半日馬車に乗ってやっとダンジョンに着いた。これから何日もかけてダンジョンを攻略しないといけないのに馬車でも元気な2人に俺はうんざりしてしまった。
「それで、もうすぐに潜るの?」
「ああ、別に準備は万端だろう?それにここで1日おいても何も変わらないだろうし」
「エルくんの言う通りだね。今日頑張って進んだとしても強力な魔物は出ないだろうし、ここで野営をしてもダンジョンで野営をしても変わらないと思うよ」
もちろんダンジョンの外だからと言って魔物が出ないわけではない。なので、ここにいてもダンジョンの中にいてもどちらにしろ危険なので、すぐにダンジョンに入ろうとロメオは言う。
俺も同じ考えなので、すぐにダンジョンに入った。
「作戦はどうするの?」
「俺とキシリカがそこら辺の魔物を倒す。ロメオはボスを倒してくれ。まぁ今日はいいけどできるだけ魔力は節約すること。でもキシリカは気にせずに使ってくれ」
普通は前衛と後衛を決めて戦うのだが、今回は魔力と集中力を考えこう言う役割分担にした。
流石に最後までこれではいけないのだが、ほとんどの階層は大丈夫だろう。
「僕もそれで大丈夫だと思う。頑張ってね」
「待って、最初の階層は私に任せてちょうだい。政宗の試し切りをしないといけないわ」
「そうだね」
今のキシリカは30Lくらいのリュックのような魔蓄機を背負っており、その魔蓄機からコードで政宗につながっている。これを使えば魔力を必要とする政宗の本来の力をキシリカでも使うことが出来るのだ。
「キシリカ、コードは2mくらいしかないから政宗を投げないでくれよ。魔力の方は十分に補充しているから勿体ぶらずに使ってくれ」
「わかったわ。ちゃんと練習しておいたから大丈夫よ」
作戦を考えているとダンジョンの中に着いた。
このダンジョンは前に見た遺跡のようなダンジョンで、どこから供給されたかわからない魔力で点いた灯りがある。
「一列になれ。俺、キシリカ、ロメオの順番で行くぞ。できるだけ俺の指示に従ってくれ」
「わかったわ」
「後ろは任せて」
今回は俺がリーダーとして動く。本当はロメオがしないといけないのだろうが、ロメオの性格上キシリカに強く言えないので、俺が任せて貰う。
それにロメオは何故か攻撃魔法しか使えないので、探知魔法が使える俺が先頭を歩く。
そこからしばらく歩くと軽自動車くらいの大きさがある四足歩行のドラゴンが現れた。
どうやらこのダンジョンは強い魔物が出る代わりに数は少ないようだ。他のダンジョンならもう何匹かと出会っているのにやっと出てきた。
「キシリカ背中から斬れ」
俺は単的にそう伝えて、ドラゴンに突っ込み頭に矛を叩き込む。多分新婚旅行に行った無人島で戦った小竜と同じくらいの強さだと思う。
俺が叩き込んだことで怯んだドラゴンは後ろに下がろうとするも、回り込んでいたキシリカに背中を切られる。
「どりゃああああ!!!」
キシリカは渾身の一撃を入れ、ドラゴンを真っ二つにした。さすが本物のミスリルの剣なので、魔力を通したことでの重みもそうだが、切れ味も相当なものだ。
「バフなしでこの威力か。中級魔導士にも匹敵するんじゃないか?」
「そうだね。さすが剣豪持ちだ」
「ありがとう。でも政宗がすごいのよ」
キシリカは謙遜するが今まで魔力を使ったことがなかったのに、ここまで政宗を使っているのは相当すごいと思う。
しかし、まだ1匹目なので褒め合うのはここまでにして次に進む。
それでも後でしっかり褒めてあげないと。
そこから同じ方法でドラゴンを次々に倒していく。探知魔法を使えば無駄な戦闘を避けることもできるし、次の階層にいく階段を簡単に探すことができるのですぐに10階層に着くことができた。
「もう10階層ね。やっと王宮筆頭魔導士の実力を見ることができるわ」
「そうだね。でも一旦ここで休憩を取るぞ」
「なんでよ。このドアの向こうにこの階層のボスがいるんでしょ?」
「ああ、でも逆にいうとボスしかいないから安全地帯でもあるんだ」
ボスがいる階層はボス以外は出てこない。それに加えてボスはドアを開けて入っていかないと戦闘にはならないので、ここはよく休憩地点として使われている。
ロメオが戦っていなくても不足の事態に備えて神経をすり減らしているので、休息は必要だ。
「ここのボスを倒したら20階層まで休憩はできないからキシリカも休んでくれ、お腹空いてないか?おにぎりあるぞ」
「ありがとう。もちろん食べるわ」
「ロメオも食べとけ。お前のことだからクソまずい携帯食料しか持ってきてないだろう」
「ありがとう。何これ美味しいね」
ロメオはもちろん空間魔法が使えないので大量に食料を持ってくることができない。なので、いつも俺が荷物持ちをしていた。
おにぎりは茉莉奈がつわりで作ることができないので俺が握ったものだ。茉莉奈が作ったおにぎりを食べたことがないロメオは、本当のおにぎりを知らないので俺が握ったおにぎりでも美味しそうに食べる。
キシリカは無言で食べていたが...
それから、今日中に20階層まで進みたいので、3時間ほどで出発した。
「よし、行こうか」
「そうね、って言っても私は戦わないけど」
「それでも念の為準備しておいてくれ」
「わかったわ」
それからロメオが扉を開きボスの部屋に入っていく。
そこには10m近く高さがあるドラゴンが寝ていた。しかし、俺たちが入って来たのを勘づいて起きてくる。
「じゃあ、ロメオ頑張ってくれ」
「わかったよ」
ロメオは一言そう言うとすぐに砂嵐を起こした。やはりロメオと言ったら砂嵐だ。
「え!砂嵐って土魔法の初級でしょ?それがドラゴンに効くの?」
「普通はこのレベルの魔物に効くわけはないんだけど、ロメオの砂嵐はものすごく効くんだよ」
しばらく見ているとドラゴンが砂嵐の中で悶え始める。
これがロメオの才能である貫通の実力だ。この才能のおかげでロメオは王宮筆頭魔導士になったと言っても過言ではない。
ロメオの才能である貫通はどんなものでも貫きとおることができる。これを魔法に付与することで、砂嵐のような初級魔法でも頑丈な防御を貫くことができるのだ。
地味だと思うが、体に砂が無数に入ってくるので激痛が身体中に走る。
俺も大会で初めて味わったがすぐに心が折れてしまうほどだ。
これを防ぐことは今のところ発見されておらず、対策としては使わない体の部分に魔法で麻痺させてから、他の部分には回復魔法で無理矢理痛みを消すしかない。
しかし、回復魔法を体全身に使うものではないので、ものすごく魔力を消費してしまう。
それなのにロメオは砂嵐など消費魔力が少ない魔法でも効果が出るので効率が良い。
ロメオの戦い方は激痛による硬直と思考停止、無駄な消費魔力。コストの高さなど物凄く考えられた戦略なのだ。
そうキシリカに説明している間にドラゴンは倒れてしまった。
そこにはもうドロップ品であるドラゴンの鱗しかない。
ドラゴンは激痛によって一歩も動かなかったので俺たちは全く出番がなかった。
「すごいわね。こんなに大きな相手なのに圧勝してしまったわ」
「久しぶりに見たけどさすがだね。魔力操作も上手になっているし」
「えへへ。まぁね、このくらい余裕だよ」
「あ!また調子なりそうだからキシリカ、これ以上褒めたらダメだ」
「ねぇ!調子乗らないからもっと褒めてよ」
「嫌だ」
「そんな〜!」
俺とキシリカはもっと褒めて欲しそうなロメオを無視して次に進む。
そして、次からボス以外の魔物も強くなるので気を引き締めないといけない。
これから先もドラゴンが出てくると思うので、戦い方も工夫していかないといけないので、これからもっと苦しくなっていくと思うが、この3人だと不思議と簡単に攻略してしまいそうだ。
俺はそう考えがら次に進む魔法陣に乗った。
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