第五十話 名剣
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おじいちゃんを鍛冶場に案内してから5日目。あれからどうなっているのか俺にはわかっていない。
準備して欲しいものはないかと聞くとさっき渡したミスリルのインゴットの他に酒だけあれば十分だと言う。
酒好きで身長の低い鍛治師のおじいちゃんなんて、この人はもしかしたらドワーフなのかもしれない。
そんな何も知らない俺の横にはワクワクした顔で待っているキシリカがいる。
キシリカ用の本物のミスリルの剣ができると聞いてからずっとこんな感じである。
初日なんて俺が頑張ってキシリカを疲れさせないと寝てくれない状態だったので相当楽しみにしているようだ。
どうやって疲れさせたかは秘密だが。
「あの人が言うにはもうすぐ完成するのよね?」
「ああ。完成しなかったとしてももうすぐ時間切れだから強制的に転移させないと」
「そうね。流石に私のために元の世界に変えられなくなったら可哀想だものね」
「キシリカは優しいな」
俺はキシリカの頭を撫でてあげる。
本当に可愛いから撫でているのと、7日経っても帰れることを黙っていることの罪悪感を誤魔化すために撫でる
ここで孤児院のドアがすごい音で開けられる。
俺はすぐに戦闘態勢に入るが、その後に聞いたことのある声が聞こえてきたので誰が来たのかすぐにわかった。
『小僧、剣が出来たぞ!』
『わかった!すぐそっちに行くよ』
「キシリカ、剣が出来たって」
「本当!やったわね!」
俺はキシリカを連れて玄関の方に行く。そこにはたくさんの男たちを引き連れて、肩に布を巻いてある1mくらいの剣を持ったおじいちゃんが仁王立ちで待っていた。
一応孤児院なのでこんなにたくさんの男どもを連れてこないでほしい。
子供達がびっくりしてしまうから。
あと、おじいちゃんは言葉がわからないくせにどうやって仲良くなったのだろうか。
酒を用意させたのはもしかしてこのためだったのか?
でも今はなんと言ってもミスリルの剣だ。
『それで、その持っているのがミスリルの剣だよな。早く見せてよ!』
『こらこら、待ちなさい。ほら見てみろ』
俺はキシリカと一緒に剣に巻いてある布を取る。
布を取ると太陽の日を浴びてキラキラと輝いているミスリルの剣が出てきた。
「「「「「おー!!!」」」」」
布を取るとおじいちゃんについて来た男たちが歓声を上げる。
どうやらまだ見ていなかったようで、ミスリルの剣を見るためにここまでついて来たようだ。
キシリカはというと逆に興奮しすぎて声が出ていない。
それでも食いいるように剣を見ているので興奮していることが見てわかる。
『すごいな。今まで見てきたミスリルの剣とは全く違うな。どうやって作ったの?』
『どうって、普通に打っただけじゃ。しかし、不思議とどこを打てば良いのかわかったのぅ』
それが才能の力だろう。やはりおじいちゃんの才能はミスリル鍛治師だった。
そして、完成した剣はキシリカが今まで使っていたミスリルの剣と比べて見た目から違った。
まず新しい剣は片刃だった。これはおじいちゃんが刀を作っていると言っていたので自然とこの形になったのだろう。
キシリカは今までレイピアを使っていたので大丈夫なのだろうか?
次に今までのミスリルの剣は波紋のような模様があったのだが、完成した剣の方には全くない。
俺は剣など打ったことがないのだが、この波紋がミスリルの特徴だと聞いたことがあるので、本物のミスリルの剣はもっと波紋が出来ると思ったのだが、実際はなくなってしまうようだ。
「おお!」
それに本物のミスリルの剣に魔力を流してみてわかったのだが、この波紋のせいで魔力が分散して本来の力を出せていなかったらしい。
これがわかれば量産できそうだが、そうでもないから今まで才能なしで作ることができなかったのだろう。
「キシリカも持ってみなよ」
「うん!」
「「「「「おー!!!」」」」」
キシリカが剣を構えるとまた男たちが歓声を上げる。
俺も歓声を上げた理由はわかる。
だってものすごく似合っていたからだ。もう何年も持っていたかのように感じてしまう。
「どうだ?俺からみたらすごく似合っているけど」
「ええ、私でもわかるわ。ものすごく握りやすい」
「よかったな。これでダンジョンでも最後まで戦えるぞ!」
「任せなさい。これであなたの横に立っていられるわ!」
「そうだな」
もうキシリカをダンジョンに連れて行かないという選択肢は無くなった。こんなに俺のために頑張っているのに、危ないからと言う理由で連れて行かないのは逆に可哀想に思う。
それにキシリカがミスリルの剣を構えた姿を見たらそんな考え方が吹っ飛んでしまった。
「それじゃあ、練習しにいきましょう」
「ああ、魔蓄機を良いしておいて正解だったな。すぐにでも使えるぞ」
俺たちは中庭に向かおうとすると、おじいちゃんが会話に入ってくる。
『おい、待て。早くしないとわしは元の世界に帰れなくなるのではないのか?時間はあるのか?』
『あ!忘れていた!早く帰らないと』
『何!忘れていただと。さっさと帰るぞ!』
危ない!あとちょっとで7日経つところだった。
急げーーー!!!
そして俺たちは結局中庭に行く。
さっきまでいた男たちはいつの間にかいなくなっていた。
ああいう人たちって結構ドライだよな。
『おじいちゃん、ありがとう。あっちでも頑張ってね』
『言われんでも頑張るわ。小僧もあの娘と一緒に戦に行くのだろう。そっちこそ頑張れよ』
『わかったよ。最後に名前聞いてなかったね。俺はエルシアンだよ。おじいちゃんは?』
『今更だな。わしの名前は加賀だ。加賀政宗、覚えておけ』
『わかった。それじゃ送るね。さよなら!』
『ああ、達者でな』
おじいちゃんは最後に不器用な笑顔で帰っていった。なんだか見た目に合わず良い人だったな。
それにおじいちゃんの名前は政宗だって、有名な刀と同じ名前だ。
そういえばここに来たときおじいちゃんは剣の銘を気にしていたな。
じゃぁ、おじいちゃんの打ったミスリルの剣の銘は名剣“政宗”にしよう。
後でキシリカにもこの名前を教えないと。
反対されないよね?
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