第三十五話 旅館
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マクリス街から馬車に揺られて2時間で次の街が見えてきた。
時間をどう潰そうか考えていたが、2人にとってはちょうど良い昼寝時間となったようだ。
もう4時だけど。
「2人とも起きて」
「はい」
「着いたのね!」
「ああ、これは珍しい建物だらけだよ」
茉莉奈が選んだ街は、遠くから見てもわかるぐらい珍しい建物が並んでいた。
そして見覚えがある建物だ。
見覚えがあると言っても今世ではなく、前世で見たことがある。
どの建物も瓦葺きの屋根に漆喰が塗られた壁だ。
どこからどう見ても、テレビで見た昔の日本の建物のようだ。
「なんて街なの?」
「ここはヒゼン街と言って、私がいた所によく似ているんです。似ているって言っても昔の話なんですけど」
「へー、そうなのね。初めて見る建物ばかりだわ」
「あの赤い建物が今日泊まる宿だよ」
「あれお城ではないのですか?」
「お城風の宿なんじゃないの?」
「なるほど、元お城なのかもしれませんね」
「そうかもね」
俺たちはチェックインすると昨日のように従業員が部屋に案内してくれた。
従業員は着物を着ており女将といったほうが似合っている。
「すごいわね、でも靴を履き替えなけらばいけないから面倒だわ」
「しょうがないよ、この部屋なんて靴で歩いたらすぐに傷みそうだもん」
「これは畳ですよ。私のおばあちゃんの家にもありました」
両親はいないと言っていたがおばあちゃんはいたのか。
家に畳の部屋があるなんて良い家に住んでいるんだな。
「この部屋ベッドがないわよ」
「後でさっきの人が布団を敷きに来ますよ。私も久しぶりに布団で寝ます」
「詳しいのね。よくこういう宿に来ていたの?」
「いいえ、でも知識として知っていました」
俺も前世でここのような旅館に来たことはない。
ぶっちゃけ興味なかったし。
「飯食いに行こうぜ」
「どうやら持って来るらしいですよ」
「そうなの?聞いてなかった」
「私が受付で選んだので、舟盛りらしいです」
「へー、楽しみだな」
30分ほど待っていると案内した女将が入ってきた。
後ろには数人の気配がするので流石に1人で3人分の料理を持って来たわけではないのだろう。
「ではご準備いたしますね。お品書きはこちらになります。」
そこには10品ほど書かれており、どう見ても和食だ。
「ではごゆっくりどうぞ」
そう言って女将は部屋から出て行った。
無駄に話しかけてこないので、俺にとっては良い距離感だ。
「すごいね、思っていたより船がデカい」
「これ本当に3人前ですか?すごい量ですね」
「でも生よ、昨日みたいにこの鍋で自分で火を通すのかしら」
キシリカは魚を生で食べたことはないようだ。
王都は海から遠いので魚は手に入りにくいし、川魚は流石に生で食べない。
川魚は寄生虫が多いから生で食べられないんだっけ?
「これは刺身と言ってこの醤油で食べるんですよ。近くに海があるようなので新鮮だと思います」
「そうなのね。ちょっとあなたから食べてみて」
「いいよ、…美味しいね!」
ちゃっかりと俺に毒見をさせるが、俺には生食に忌避感はないので食べる。
でも声には出さないが久しぶりに炙りサーモンが食べたい。
「キシリカも食べてみなよ」
「...うん」
キシリカは恐る恐る刺身を食べる。
しかし、一瞬で笑顔になったので美味しかったのだろう。
「美味しいか?」
「そうね、意外にさっぱりしているわ」
「それは良かったです。この鍋もそろそろ良いと思いますよ」
「火傷するなよ」
「分かったわ」
それから刺身や鍋の他にも炊き込みご飯や天ぷらを食べた。
茉莉奈も自分で作った料理以外はイマイチな顔をするが、今回は美味しそうに食べていたので俺も嬉しかった。
「この宿って家族風呂があるんだよ。一緒に入ろうよ」
「良いですけど予約可って書いてありましたよ」
「何言っているんだ、ちゃんと予約してあるに決まってあるだろ」
「エッチですね」
「本当よ、昨日も一緒に入ったのに」
「文句言いながらも2人は一緒に入ってくれるんだろ」
今更恥ずかしがることはないだろう。
「まぁ、そうですけど」
「夫婦だから当たり前よ」
「じゃあ行こうか」
「分かったわ」
お腹がいっぱいになったキシリカが了承する。
「これが浴衣みたいですよ」
「そうだった。これ着ないと」
「これは寝巻きなのかしら?」
「そうですよ」
俺たちは浴衣を持って家族風呂に行った。
◆◇◆◇
「大きいわね、まるで池みたいだわ」
全く裸を隠さないキシリカのテンションが上がっている。
それにしても露天風呂だったとは知らなかった。
「すごいね、星も綺麗だ」
「絶景ですね。月明かりだけで大丈夫みたいですよ」
そう言って茉莉奈が灯りを消すが、2人の裸が見えづらくなって少し悲しい。
「まずは体を洗わないと、キシリカおいで」
「分かったわ」
いつものように俺がキシリカの体を洗い、茉莉奈が俺の体を洗う。
この時にちょっとでもイタズラすると怒るので、無心で行わなければならない。
それから茉莉奈が体を洗うのを待って、3人で露天風呂に入る。
「気持ちいいね」
「ええ、そうね。足が伸ばせるから良いわ」
「私露天風呂初めてです。今までは興味がなかったのですが、意外に良いものですね」
俺も前世では露天風呂に入りたいとは思わなかったのでこんなものだろう。
「そうだな、2人とも俺にうっかかっていいよ」
「ふ〜、暖かいわ」
「気持ちいです」
体が温まったので風呂から上がる。
それから、女性の火照った体に浴衣がものすごく良いことに改めて知ることになった。
ゆっくり部屋に戻ると夕食が片付けられ、寝室に布団が敷いてあった。
「これが布団ね。ふかふかだわ」
「多分高級品だと思いますよ。こんなにふかふかな布団は初めてみましたので」
布団はピッタリとくっ付けてあったので、女将はわかっているな。
「もう良い時間だけど、もう寝る?」
「そうですね、早く寝ましょう。さっきから旦那様の鎖骨が見えてもう我慢できません」
「私もよ。浴衣ってこんなに良いのね。明日買って帰らないと」
「...かかって来い!」
浴衣の魔性の魅力は女性にも聞くことがわかった。
茉莉奈はともかくキシリカも興奮していたので、今日は一段と回数が多かったが、夕飯のスッポンのおかげでなんとか俺は勝つことができた。
俺にとってスッポンの凄さに驚く夜となった。
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