第三十一話 父親
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今日は今月分の異世界人が来た。
しかし、キシリカと茉莉奈は最近新婚旅行の準備で忙しい。
どうやら旅行先は東の湖に決めたようで、その野営の準備も行っている。
東の湖とはペルコ湖と言って、観光地として有名で野営といっても前世のグランピングの様になっている。
なんでも最近、運営している商会が変わったようで、カップルや新婚夫婦の中で人気があるらしい。
その湖に行く道中にも多くの街があり、新婚旅行の定番である。
今月の異世界人を送り返したら出発としているのだ。
不足の事態のためにパムに連絡するように頼んでいるので、旅行先に長居しても大丈夫。
それに、教師の件は分身を一体置いて行くことにしている。
そんな話は置いといて今は異世界人だ。
もうすぐにでも出発したいので、口には出さないが2人からすぐに送り返せと伝わってくる。
今回来た異世界人は、30歳ぐらいの男性だった。
名前は川島圭吾と言うらしいが、今回だけは個人情報に興味がないので詳しくは聞かない。
それでも仕事なので異世界転移のことについて教えてあげる。
その時にやんわりと早く帰って欲しい感を出す。別に意地悪をしたいわけじゃないからね。
『あはは、もしかして新婚ですか?』
『ええ、そうなんです。わかります?』
『はい、幸せそうな雰囲気が伝わって来ますよ。私も1年前に結婚して、もうすぐ子供が産まれるので早く帰りたいですね。ここに居座るのも迷惑だろうし』
話のわかる人で良かった。それに、もうすぐ子供が生まれるらしいので、川島さんも顔には出さないがぶっちゃけ早く帰りたいのだろう。
『気遣ってくれてありがとうございます。それではすぐに送りますね』
『はい、その前にエルシアンさんも結婚したということは子供が産まれるんじゃないんですか?』
『え?』
いきなり話が変わったのでびっくりした。
まぁ、結婚したと教えたから気になるのだろう。
それに最近は避妊をしていないので、時間の問題だと思う。
『そうですね、まだ先かもしれませんがいつかはできると思いますね』
『そうですか、ではこれを異世界に送ってくださるお礼にプレゼントします』
そう言って、川島さんは一冊の本を取り出した。その本には「パパ完全攻略本」と書いてあり、そこには父親に必要なことが書いてあった。
妻が妊娠した時の対応の仕方から、幼稚園の入学の手続きの仕方まで細く書いてある。
確かに子供ができたら必要だがな。
『いいんですか?川島さんにも必要なものでしょう』
『そうですけど、もうほとんど読みましたし。あっちではいつでも買えますから大丈夫ですよ』
『そうですか...ではありがたくいただきますね』
『はい』
『それでは俺からはこれを』
俺はジュエリーを2つ出した。
『お礼と言ってはなんですが、売ったら結構いい値段しますよ』
『いいんですか?』
『はい』
『それでは、いただきます』
川島さんも渋々受け取ってくれた。
それにしても、橘さんの時もそうだったが、こういう時ダイヤモンドとか高価な物を渡しているが、受け取りづらいよな。
後で何か考えておかないと。
『準備はいいですか?』
『はい、お元気で』
『川島さんもお元気で』
こうして、元の世界に戻っていった。
これまでで1番滞在時間が短く、わずか1時間しかいなかった。
まぁ、しょうがないよね。
「帰ったの?」
「ああ、それじゃあ明日の朝に旅行に出発するぞ!」
「ええ、もう準備は完了しているわ」
「早いね。でももう1回確認しておきなさい」
なぜか俺は父親みたいなことを言ってしまった。
もしかして、さっきまで子供の話をしていたので、自覚が出て来たのかもしれない。
「大丈夫よ、忘れたら旅行先で買えば済むから」
「それでも確認しておけよ」
「は〜い。それにしてもあなたは準備終わったの?」
「いや。まだやってすらない」
俺は悪気もなく言う。
「あなたこそ早くしなさい!!!」
「でもね、そもそも空間魔法で物を運ぶし、冒険者やっていたから必要なものはそこに入っているんだもん」
「そうなのね、早く言いなさいよ」
キシリカと一悶着していると、大きな荷物をもった茉莉奈がやって来た。
どうやら茉莉奈は、たまにいる荷物が謎に多いタイプの人間だったようだ。
「それ持っていくのか?多くない?」
「これでも、少なくしたんです。さっき言っていた旦那様の魔法に入れてください」
「いいけどさ」
「ありがおうございます。残りも持って来ますね」
「マジか」
「いつの間にこんなに買い込んだのかな?」
「知らね」
まだまだ茉莉奈の知らないことがあったらしい。
それにしても、茉莉奈はさっき空間魔法を知ったのだが、それまではどうやって運ぼうと思っていたのか。
馬車一台で行くと教えたから、この荷物を運べないことは知っていると思うけど。
舞い上がって忘れていたのかもしれない。
そう思ったので、俺は茉莉奈の部屋に行き、物を減らすようにぐちぐち言ってしまい、少しめんどくさがれてしまった。
でも、なんか本当に父親になった気分がして悪くなかった。
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