第十七話 超読解
評価や感想・レビューよかったらお願いします。
師匠が教師として来てから1週間が経った。
変わっている人だが子供好きなこともあり相手をするのが上手だ。
すぐに子供達と仲良くなって今も孤児院の庭で一緒に遊んでいる。
頭では何を考えているかわからないが...
「ちょっと、エルはまだ私を疑っているの?」
「どうですかね」
「仕事なら私も自粛するわ」
ちょっと目が血走っていたから連れてきたのを少し後悔したが、教師としての仕事の準備もしっかり行なっているから信頼してやろう。
この間学校で何をすれば良いのか真面目な顔で聞いてきたし。
「あれ、お客さんが来たわよ」
「誰だろう」
師匠と話していると王家の使いと60歳ぐらいのおばあさんがやって来た。
ここは孤児院なので訪ねてくる人は少ない。人が来るのは珍しいのだ。
「シルトクレーテ男爵様、異世界人を連れて参りました」
「ああ、ご苦労」
白髪なので気づかなかったがこのおばあさんはどうやら今月の異世界人のようだ。
今は暇なので丁度いい時に来たな。
「それではよろしくお願いします」
「わかった」
そう端的に伝えると王家の使いは帰って行った。
◆◇◆◇
今回は俺と茉莉奈と師匠の3人で話を聞く。
別に師匠には関係ないのだが、無理矢理着いてきた。
ちなみに、キシリカは乳母が教師をやってくれるかもしれないと今日は勧誘をしに行っていた。意外に孤児院のことを考えてくれていた嬉しい。
「初めまして私はエルシアンと言います。お名前を聞いても?」
相手がものすごい年上なので自然と敬語になる。
こう言うところはまだ貴族になりきれない。
「私は山﨑徳美と言います。よろしくお願いします」
「結構落ち着いていますね、他の人たちは結構落ち込むんですよ」
「この歳になると何事にも驚かなくなります。しかし、ここは異世界なんだとか、もう一度あのお店のどら焼きを食べたかったですね」
「それがですね・・・・」
今回もいつも通り元の世界に帰ることができると伝える。
「そうなんですか、あなたは凄い人だったのですね」
「そうかな、少しはすごいかもしれないですね」
山﨑さんは褒め上手なのか、話しているととても楽しい。
しかし、俺は何か違和感を感じていた。でもそれが何かわからない。
「こんにちは山﨑さん、私はこの子の師匠のモモっていうの。私も話に混ぜてもらえるかしら?」
ここで師匠が話に入ってきた。
しかし、山﨑さんは異世界人なので話せないだろう。説明するのを忘れていた。
「そうなんですね、と言うことはあなたも魔法が使えるのですね」
「ええ、そうよ」
ん?
「あれ?なんで言葉が通じるんだ」
「え?言語が同じだからじゃないの?」
「私もそうだと思っていました」
「違うんだよ。言葉が異世界で違うから超読解の才能を持つ俺が異世界人担当...」
ここで俺はハッと気づいた。もしかしたら山﨑さんの才能は...
師匠も同じことを考えたのか古代時代の本を持ってきた。
この本は昔に俺が翻訳してあげたのだが普通の物語が書いてある。師匠の宝物だ。
「この本読める?」
「え?読めると思います。昔々あるところにおばあさんと・・・」
山﨑さんは本を読み始めた。内容もあっていたので間違いなく読めている。
「師匠、山﨑さんの才能は俺と同じ超読解だよ」
「ええ、間違いなさそうね」
新しく来た異世界人は俺と同じ超読解の才能を持つおばあさんだった。
◆◇◆◇
俺たちは4人でいつの間にか3時間以上も話してしまっていた。
すると、キシリカが落ち込んだ様子で帰ってきた。どうやら勧誘はできなかったらしい。
「おかえりキシリカ、上手くいかなかったのか?」
「うん、今メイド長をしているから王城から離れることはできないんだって」
「そうだったか」
どうやらキシリカの乳母は今、メイド長をしているらしい。それで忙しくて教師の件は断られたのだと言う。
こんなわがままな子を育てたらメイド長にも昇進するか。
「この方は?」
ここで山﨑さんは突然部屋に入ってきたキシリカが誰なのか聞いてきた。
「この子はキシリカと言って俺の婚約者です」
「え〜!こんなに綺麗な方は初めて見ました」
「誰よこの人、見る目あるじゃない」
キシリカは山﨑さんのことを知らないが褒められて機嫌が良くなった。
こう言うところが可愛いんだよな。
「この人は新しく来た異世界人だよ、なんと俺と同じ超読解の才能を持っているんだ」
「へ〜、さすが異世界人ね、珍しい才能を持っているわ」
どうやらキシリカは異世界人が珍しい才能を持ってこの世界に来ることを知っていたようだ。俺は陛下に教えてもらったのでキシリカも同じなんだろう。
それでもキシリカの頭には教師を用意できなかったので申し訳ない気持ちが強いのだろう。
「ごめんね、力になれると思ったんだけど...」
「しょうがないよ、教師という職業は責任がついてくる。簡単に引き受ける人の方が心配になる」
「そうかもしれないわね」
「教師を探しているんですね、私のいた世界でも色々あって教師は少なくなっているんですよ」
「詳しいですね」
「私はこう見えて1年前まで教師をしていたんです」
なんと!山﨑さんは教師をしていたらしい。
「そうなのね!ならあなた教師になってよ」
「おい、無茶なことを言うなよ」
そう言いながらも俺は少し期待していた。
なぜなら、山﨑さんと一緒にいると落ち着くから孤児院の子供達に必要な温もりを知っていそうだ。
茉莉奈みたいにこの世界に残ってくれるかもしれない。
「学校を作っているのですか、それは素晴らしいことなのですが簡単には答えられませんね」
「そうですよね、元の世界に家族がいるのですから」
「いえ、家族はいないのです。子供にも恵まれませんでしたし、夫も去年他界しましたので元の世界に未練はあまりありません。しかし、私ができることはあるのでしょうか?」
「ええ、それはもちろんありますよ。学校では文字と計算だけを教えようと思います。山﨑さんなら教えることは可能でしょう。無理強いはするつもりはありませんが、元の世界に帰るまであと7日あるので考えてみてください」
「わかりました...」
何か山﨑さんには後ろめたい気持ちがある感じがする。
それから教師を探す事と、山﨑さんの悩みを解決するため俺はまた忙しく働くのであった。
Twitter始めました。よかったらフォローしてください!
@doragon_narou8で検索したら出ると思います。名前はドラゴン之介です。




