ビルゲ将軍、その力
「「「「「うわーーっ!」」」」」
住宅街に、巨大ロボが倒れた。
地響きがあたりを揺るがし、土煙が派手にあがり、民家やアパートが何棟もぶっ潰れた。(これは巨大なもの同士の戦闘によるものであり、けっして地震によるものではありません)
住民たちは巨大怪人が出現した時から危機を感じて既に避難していたので死傷者はなかった。ちなみに作者のアパートもぶっ潰れたが、作者はナッくんを連れて避難していた。財産はすべて失われた。
「弱いな……」
陰気な目をしてビルゲ将軍が吐き捨てる。
「やはり貧乳戦隊などこんなものか」
17階の窓に顔を並べて、元巨乳戦士たちがうろたえていた。
「だめだわ……」
「ウチらにはどうしてあげることもでけへん」
「あたしたちには巨大ロボもないし……」
「くそっ! せめて5人揃っていれば……!」
その頃、元巨乳グリーンこと牛野陽奈は走っていた。
事務所のあるビルのすぐ近くで戦いが起こっていることは知っていた。メッセージアプリで『早く帰ってきて』との玲子のメッセージに、サムアップしたかわいいキャラのスタンプを返していた。
「すぐに行くわ、みんな! ……姉さん! あなたのことは許さないわよ! お仕置きしてあげる!」
ハイヒールで駆けるその足は、遅かった。
その頃、作者は避難先で焼肉を食べていた。
飲み物はキリンの一番搾りだった。
「うまーい!」
ナッくんを隣の部屋に閉じ込めて、ひとりで箸を進める。
「お肉はアメリカ牛の安いやつだけど、じゅうぶんうまーい! 肉汁がどぴゅどぴゅ出る!」
アパートは潰れていた。
それでもよかった。
作者は焼肉を食べながら、誰に言うともなく、こう語った。
「あたしね……。大丈夫なの! ビルゲ将軍に全財産を灰にされたって平気だわ。だって、あたし、結婚するのよ。この焼き肉が終わったら、あたし、結婚するの」
死亡フラグが立った。
「秘技……! ダンジョンおくりびと!」
ビルゲ将軍がそう叫びながら必殺技を放った。
死人を運ぶ老人と若い娘が出現し、巨大ロボ『ナイチチ・ジョオー』を冥界へと運ぼうとする。
「運ばれてたまるか!」
優美が吠えた。
「根性・ザ・立て直し!」
それは必殺技でもなんでもなく、苦し紛れに叫んだ技名であったが、5人の元貧乳戦士たちは技名のもとに心をひとつにし、立ち上がった。
迎えにきていた老人と若い娘の手を振り払うと、「すまみません、私、まだ生きてますから」と巨大ロボが断った。
老人と若い娘は「生きてる者を連れて行くことはできないねぇ」とこぼすと、素直に帰っていった。
「ところで……おまえらはどうした?」
窓から観戦している巨乳戦士たちを、ビルゲ将軍が見遣る。
「そこでボーッと眺めているだけか? 陽奈がいないからか? 5人揃わないと何もできないのか、おまえらは?」
「クッ……!」
玲子が悔しさに唇を噛む。
「お嬢様……」
キハ仮面が後ろから進み出た。
「私でよければ……また5人目の代役を努めましょう」
「大丈夫よ……。木葉」
玲子はキッと前を向いた。
「それにしても田良子坂さん……。まるでわたくしたちを試しているようだわ。……何か魂胆があるのかしら……?」
「キエーッ!」
巨大ロボ『ナイチチ・ジョオー』が後ろから襲いかかる。
「貴様らのような不完全なものに負けるわけがないと言っただろう!」
ビルゲ将軍は振り返ると、巨大ロボの胸に拳をめり込ませた。
「たらこぱーんち」
巨大ロボがまたしても吹っ飛んだ。




