ナイチチ・ジョオー
「みんな、行くわよ!」
優美のかけ声に、元貧乳戦士たちが走りだす。
「貧乳合体!」
優美が赤いジェット機に姿を変えた。
ユレンが青い自転車に姿を変えた。
マリアがグリーンのペガサスに姿を変えた。
瑛華がピンク色の土偶に姿を変えた。
平野ぺたがそのまま走る。
空中で、5人の貧乳戦士たちが合体した。どんなふうにかは公序良俗を慮って詳しくは描けないが、男性視聴者の劣情をそこはかとなくそそる感じの合体のしかたで、ひとつになった。
冬の白っぽい青空の下に、赤、青、緑、ピンク、黄色をメカニカルに纏った巨大ロボが出現した。
「貧乳巨大ロボ、ナイチチ・ジョオー見参!」
ずずーん!
「凄い!」
17階の窓の中からそれを見守っていた元巨乳戦士たちが、声をあげる。
「かっこいい!」
「やっぱりスーパー戦隊といえば巨大ロボだもんね!」
「なんでオレたち、巨大ロボないんだろう……」
巨大ロボは胸こそ小さかったが、大きさはビルゲ将軍に匹敵していた。
かっこいいポーズを決めながら対峙する巨大ロボ、ナイチチ・ジョオーを目の前にしてビルゲ将軍は、しかし表情を変えなかった。
「そんな不完全なものでこの俺が倒せると思うのか?」
暗い目を見瞠きもせず、ビルゲ将軍は吐き捨てるように言った。
「まぁ……いい。ようやく戦闘だな。かかってこい」
「ナイチチ・ビーム!」
巨大ロボ、ナイチチ・ジョオーの目から、涙のような光線が迸った。
それはまるで、ないものねだりをする乙女の悲しき地団駄のように、敵を破壊すべく放たれた。
「ふん」
ビルゲ将軍はそれを、片手で払い落とした。
まるで飛んできたハエでも落とすように、簡単に。
動揺する元貧乳戦士たちがコックピットの中で動揺する。(進次郎構文)
「な……、なんで?」
「いきなり必殺技だったのに……」
「簡単にはたき落とされたよ!?」
「そんな……。どうして?」
「……」
17階の窓の中では、元巨乳戦士たちが失望していた。
「弱……っ」
「だめだ、ありゃ」
「見掛け倒しやわ……」
「でもまだ負けたわけじゃないぞ! 頑張れ、ナイチチ・ジョオー!」
「諦めるな、みんな!」
優美がみんなを鼓舞する。
「最大出力で行くわよ! ……なんかパワー落ちてる気はするけど」
「あっ!」
マリアが、気づいた。
「ぺったんのせいだ!」
言われて平野ぺたが顔を背けた。
漉王老師にGカップにしてもらったその胸を、隠すように両腕で抱きながら。
説明しよう! 巨大ロボ『ナイチチ・ジョオー』は貧乳のコンプレックスを出力に変えて戦う!
ゆえにメンバーの中に思い上がった巨乳が一人でもいると、そのパワーを大きく下げてしまうのだ!
「「「「おまえのせいかーいっ!」」」」
「ご……、ごめん」
平野ぺたは、まるで悪いことをしたように謝った。
「Gカップに育っちゃって……ごめんね」




