秘密兵器
「だめかもしれない……」
珍しく獏羽生玲子が弱音を吐いた。
「あんな巨大なものに……。しかもわたくしたちを育ててくれた恩あるひとに……勝てはしないわ」
「テラ・爆乳波で吹き飛ばしてやればいいじゃないか!」
堀スタインが拳を握りしめて玲子を鼓舞する。
「恩あるプロデューサーだろうと、目の前にいるあいつは敵だ! やってやれ!」
「でも……田良子坂さんはあたしにいつも……よしよししてくれたよ?」
出階堂真心がうつむく。
「優しいPだったよ、田良子坂さんは……。あたし好きだった」
「憎しみや義憤がウチらの力を増幅させるものなら……」
青野ヶ原虚無子が天井を仰いだ。
「恩あるプロデューサーが相手だと、玲子はんの力をろくにブーストでけへんわ……」
巨乳戦士たちが絶望にうなだれる。
その横から、明るく勇ましい声をかける女子がいた。
「諦めたらそこで戦闘終了だよっ」
巨乳戦士たちが目を見瞠き、彼女のほうを振り返った。恥ずかしげもなく、有名な漫画作品の有名な台詞を少し変えてパクったその少女を。
元貧乳戦士随一のボケキャラ平野ぺたが言ったものだと誰もが思った。しかしそこに立っていたのは元貧乳レッド、燃える正義の女の子、ヒンニューレッドこと千々梨優美その人であった。
平野ぺたが言ったのなら誰もが期待せず、無視するところであった。
しかし新生美乳戦隊の双頭のリーダーのうち一人、ヒンニューレッドこと千々梨優美の言うことだったので、みんなが反応した。
「優美さんっ!」
「な……、何か秘策でもあるのか?」
「勝算があるの?」
「ま……、まさかそれって……」
「そう」
優美は得意げな笑顔で、うなずいた。
「うちら貧乳戦隊にはアレがあるの!」
「そうだったわね、優美ちゃん」
姉のマリアが微笑んだ。
「あったわね、巨乳戦士と違って合体技のないわたしたちにも、合体技に匹敵するアレが」
「今まで一度も使ったことなかったけど……」
元貧乳ピンク鬱布瑛華が興奮に飛び跳ねた。
「訓練はしたから大丈夫だよねっ! やろう!」
「遂に……あれを……」
元貧乳ブルーこと微風ユレンが自信なさげにうつむき、
「や……やりましょう!」
すぐに顔をあげると、彼女にしてはおおきな声を振り絞った。
元貧乳イエローこと平野ぺたは己が信用されないボケキャラとして見られていたことを初めて知り、床に膝をついていた。
「優美さん……っ!」
「アレとは……まさか……!」
「まさか……! まさか……っ!?」
「どうした、貴様ら」
窓の外から巨大なビルゲ将軍が声を響かせる。
「かかって来ないのなら、こっちから行くぞ?」
「まさか……! スーパー戦隊で『アレ』といえば……!?」
興奮で声を大にして聞く堀スタインに──
「そう」
優美はうなずき、答えた。
「……巨大ロボ」




