ラスボスの正体
外から聞こえた大地を揺るがすほどの低い声に、美乳戦士たちは皆、窓辺に駆け寄った。
「ああっ……!?」
「あれは……」
戦士たちは、見た。
ビルの17階の窓より少しだけ低いところから、その巨人がこちらを見上げるのを。
「あれは……」
「……何?」
「誰?」
誰もが知らなかった。
見覚えがなかった、こんな、薄桃色をした甲冑に身を包んだ、哀しげな目をした巨人のことなど。
「これが社会悪秘密組織ギゼンの真の支配者なの?」
「ガチで怖いんですけど」
「迫力あるぅ〜」
「あなた、お名前は?」
呑気な声で元貧乳グリーンこと千々梨マリアが聞いた。
「俺をバカにしてんのか」
巨人は恨めしそうな声で、反抗的に言った。
「俺をバカにするな。噛むぞ」
どうやらメンタルが繊細なようだ。
見た目は巨大で、戦士たちを怖がらせるほどに本格的な迫力がありながら、その中身は豆腐のように脆いらしく、マリアの言葉に傷つき、既に涙を少しこぼしていた。
「この俺はラスボスである! ラスボスを見たらしっかり怖がるべきなのだ! 幼稚園児にお名前を聞くようなことをするな! それが創作における礼儀というものだ!」
その怒声にビルが揺れた。
窓から落ちそうになっていたドクター・チヴこと牛野千房の手が、窓枠から外れた。
落下しながら、ドクター・チヴが叫ぶ。
助けを求めて、ラスボスの名前を叫んだ。
「ビルゲ将軍さま!」
ラスボスのてのひらが弥勒菩薩のように差し伸べられ、ドクター・チヴはその手にぽすっと柔らかく受け止められた。
「ありがとうございます、ビルゲ将軍さま」
てのひらのベッドの上で、メガネのずれた彼女が、うっとりとラスボスを見上げる。
乱れた白衣がセクシーだった。
「ビルゲ……?」
「ビルゲ将軍……?」
「どっかで聞いたことある……」
ざわざわとする美乳戦士たちの後ろで、美乳レッド1号こと貘羽生玲子が声をあげた。
「ビルゲ将軍ですって!? では……、あなた……、まさか……!」
「なになに?」
みんなが玲子を振り返った。
「まさかってなに?」
「誰なの、あいつ?」
玲子は唇をキリッと引き締めると、その正体を口にした。
「田良子坂プロデューサーよ」
「ええっ!?」
元巨乳イエローこと堀スタインが驚いた声を出す。
「オレたちの元ボスじゃないか! なぜ、わかるんだ? 玲子ちゃん!?」
「知らないの? 堀ちゃん」
玲子は窓の外の巨人からは目を逸らさずに、言った。
「田良子坂プロデューサーのフルネームは、田良子坂ビルゲ……。そしてあの哀しそうな目! 何よりあの低いイケボはまさしく田良子坂さんじゃない!」
「よくぞ見抜いた、玲子」
窓の外の巨人が大地を響かせ、言った。
「さすがは俺がレッドに抜擢しただけのことはある」
「プ……プロデューサーなの? 本当に……」
元巨乳戦士たちが揃って呟く。
「そんな……。なんでや? ウチらのこと……騙しとったんかいな?」
「正義のスーパー戦隊のプロデューサーのフリして……、正体は社会悪のラスボスだったのか!?」
「聞け──、小娘ども」
ビルゲ将軍はドクター・チヴを地面に下ろすと、また大地を震わす声で言った。
「俺はマスコミ業界に務める偉いプロデューサー様だぞ」
そして、その声をさらに大きくした。
「大衆の思想を操り、サブリミナルに洗脳することすら可能な、こんなポストに就いているこの俺が、社会的巨悪でないわけがなかろう!」
ビルケ将軍様からは許可をいただいております(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ
ありがとう、ビルケ将軍様!(๑•̀ㅂ•́)و✧




