最低の戦い
17階の窓から飛び出した漉王老師は慌てていた。
「流石のわしでも……っ! 17階から飛び降りたら助からんぞっ! ひゃ……、ひゃああああ!」
「大丈夫だ」
篠宮マサシが頼もしく言った。
「僕を信じて」
上半身裸の逞しい胸に、漉王老師の頭を優しく抱くと、篠宮マサシはふわりと地上に降り立った。
「おまえさん……凄いのう」
「ハハハ。一応スーパーヒーローですし、レスキュー隊員もやってましたから」
「だが……、それとこれとは別じゃ!」
「はい! もちろんです糞ジジイ!」
「千々梨くんの胸を巨乳にし、彼女を千々有にするのがわしの務め!」
「だめです! せっかく僕がスーパーパワーを授けるのと引き換えにあれだけ小さくしたんだ。戻させない!」
「戻すどころかバインバインのボインボインにしてやるわ!」
「あの可憐な優美ちゃんにそんなものは似合わない! 小さい胸を気にして恥じらうあの姿が尊いんだっ!」
「キモっ! ……この、変態の、恥じらいマニアが!」
「大体、チッパイじゃなくなったら優美ちゃんは僕の授けたスーパーパワーも失ってしまうんですよ!?」
「そんなものはわしが新たに与えてやるわい!」
「どうやら彼女を救うにはあなたを倒すしかないようだ」
「行くぞいっ!」
「かかってこいやー!」
「千々梨くんは必ずやデカパイにして、わしの6人目の妻とするんじゃー!」
「ふざけたこと抜かすな糞ジジイ! あれは僕のものだ!」
「ちょっとお待ちを」
そんな声がしたので二人は動きを止めた。
何やら恐ろしげなオーラを感じる女性の声だった。
二人が振り返ると、そこに5人の美しき妻たちが立っていた。
「あなた……。今、何と仰いました?」
ナーナミ・イートが、口から牙と炎を漏らしながら、漉王老師を睨んだ。
「6人目の……妻、と、聞こえましたけど」
「ろくおー! 浮気かー!?(◍´ᯅ`◍)」
げん・ラーが泣いた。
「わしら5人もの妻があって、それでも満足せんのかー!?('◉⌓◉’)」
「これは斬首刑ものね」
ソラーハ・ラウミが残忍な表情で唇を舐めた。
「あなたの首がプールに浮かぶのを想像したら濡れちゃったわ。あはん!」
「あの世とこの世を紡いであげます」
サッキー・ソーラがお母さんのように言った。
「私は大切なひとは守る。でも、裏切ったひとには攻撃をします。……ご覚悟を」
「よくわからないんだけど」
妻になったばかりの、とりあ えずこ(・ω・)はんが呟いた。
「みんなでカレをズタズタに引き裂いて今日のお昼ごはんにしてもいいということですね? よし」
「ま……待て待て待て待て!」
漉王老師は必死に宥めたが、
「6人ともちゃんと大切にするから……!」
無駄だった。
「みんな、これが私たち『人妻戦隊ビジンジャー』、初めての戦いよ!」
ビジンレッドことナーナミ・イートの目がギラリと光った。
「不死鳥はふしだらな夫を救わない!」
「おまえもお米アレルギーになれ!ꉂꉂ(ˊᗜˋ*)」
「百年の恋も冷めたわ」
「大丈夫。あの世で神様が一緒にクイニー・アマンを食べてくださるから、安心して」
「色々とあの世での生活も勉強してください、つばめと一緒に(・ω・)」
「「「「「人妻地獄落とし!」」」」」
5人の人妻の合体必殺技が炸裂した。
「ぎゃあああああ!!!」
「なんで僕までーーー!!?」
漉王老師と篠宮マサシはかくして物語の外へと飛ばされたのであった。
「よし! いい絵が撮れたぞ!」
モニターを見つめながら、熱原局長と一布部長は手を取り合い、喜んだ。
「打倒! 美乳戦隊ビニュレンジャーだ! 頑張ろう、熱原くん!」




